新車購入時にフロアマットを注文するユーザーの割合は9割以上とも言われる。ほとんどのユーザーが購入・装着するフロアマットは、なぜいつまでもオプション(別売)なのだろうか。いっそ標準装備になればいいのにと思っていたが、そこにはオプションであり続ける、のっぴきならない理由があったのだ。
文:佐々木 亘/写真:トヨタ
【画像ギャラリー】フロアマットは必需品よね!! トヨタ「シエンタ」をギャラリーでチェック(14枚)画像ギャラリー■価格は上がったが新車製造は今もなおコストカットの鬼だった
一部の超高級車を除けば、基本的にクルマを作る時の合言葉は「1円でも安く作る」だ。そのコストカットは、工業製品の中でも随一といわれる。
できるだけ無駄な装備は省き、法規上で認められる最低限のラインで、完成車を作りたいのがメーカーの本音であり、これが今も愚直に続けられているのだ。ただ、最近では安全技術や装備に対する法整備が進み、これまでよりもクルマを製造するための最低コストが高くなっている。付けたくなくても付けなければならない装備が、増えたということだ。
そのため、削れるところは否応なく削る。製造現場目線では、フロアマットの標準装着への道は、かなり険しいことが分かってくるだろう。
■実質工賃ゼロは商談の大きな武器
車両本体値引きが厳しくなった昨今の新車販売現場。ならばとオプションからの値引きやプレゼントを狙うユーザーも、多いのではないだろうか。
実はフロアマットは、営業マンが値引きやプレゼントを行うのに最も(効率が)良いオプションである。それは、取り付けが容易で、ほぼ部品代だけで済むためだ。サービス工場の手間を取らせることもないし、工賃までサービスの内容に含めなくていい。
フロアマットがディーラーオプションになっている一つの理由は、ディーラーがクルマを販売するからだ。ディーラー側の利益や商売のやりやすさを確保するために、フロアマットのオプションが、変わらずあり続けている気もする。
ディーラーは、フロアマットが標準装備されてしまうと、商売道具を失うことになるだろう。販売店も営業マンも、フロアマットの標準装備を望んではいない。
■フロアマットまで取り上げられたら、ディーラーは怒るよ!
新車販売における利益構造は次のようになっている。車両本体価格とメーカーオプションには、自動車メーカーの利益が大きく含まれ、ディーラー(販売店)の利益は少ししかない。すなわちディーラーが車両販売で利益を大きく上げるには、ディーラーオプションの装着が欠かせないのだ。
特に装着率が高い、フロアマット・サイドバイザー・ナンバーフレーム・ボディコーティングは、販売店の収益性が高いオプションの代表例である。これらがメーカーオプション、ひいては標準装備となってしまうと、ディーラーの経営はさらに苦しさを増していく。
ここ10年で、ディーラーオプションから生み出される利益は、少なからず小さくなっている。それは、かつてディーラーオプションだったものが、数多くメーカー標準装備に変わっているからだ。
ETC車載器にコーナーセンサー、クルマのIOT化も進みエンジンスターター的な役割も、コネクティッドサービスからスマホ1つで出来るようになってきた。ディスプレイオーディオが標準装備となることで、ディーラーオプションナビの装着率も大幅に減少している。さらにバックモニターが標準取り付けとなるなど、法律による規制がディーラーの収益を奪うことも。
ここからフロアマットまで、何らかの規制で「標準装備するべし」となると、ディーラーの商売はあがったりだ。
ユーザーの好みに合わせて選択できるという理由もあるが、製造側と売り手の都合が、フロアマット標準化をさせないようにしている。自動車の流通大革命でも起きない限り、フロアマットは永遠にオプションであり続けるだろう。
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