現在では当たり前の3気筒エンジンも10年前は違っていた!! 今こそ3気筒を見直すべし【ベストカーアーカイブス2014】

【閑話休題】ホンダがようやく本腰! 3気筒1Lターボ開発中

試験中の様子
試験中の様子
ホンダが開発を進める3気筒1LターボVTEC
ホンダが開発を進める3気筒1LターボVTEC

 ホンダの3気筒1LターボVTECは129ps、20.4kgmとフィエスタをも圧倒するスペック。実際、シビックに搭載され加速フィールは直4の2Lクラス。

 ホンダはコストのかかるハイブリッドが浸透しない新興国向けに開発を進めるというが、国内投入がまったくないとは言い切れない。

■世界的に3気筒エンジンが急激に増えた理由とは?

フォード フィエスタ
フォード フィエスタ

 3気筒エンジンが世界的に増えた理由はなんといっても、燃費が重視されるためだ。ユーザーの燃費指向にダウンサイジングで応えるというのが、世界的な潮流だ。

 メーカーによるシュミレーションによれば、1気筒あたりの容積は400~700ccが最も効率がいいとされる。1気筒あたりの容積が小さすぎると冷却損失が大きく、大きすぎるとノッキングしやすい特徴があるという。

 また部品点数が少ない3気筒のほうが、4気筒よりも約20%もフリクションが小さくなるとされている。

 では、3気筒よりも2気筒で1気筒あたり600ccくらいのエンジンが最も効率がいいかといえばNOだ。

 2気筒では振動が大きくバランサーシャフトがないと成立しない。バランサーシャフトを装着すると、エンジン重量が大きくなり、レスポンスも悪化してしまうので結果的には効率が落ちてしまう。

 従来3気筒は振動が大きくバランサーシャフトが必要とされたが、例えばエンジンマウントを工夫するなどして振動を逃がしているのだ。

フィエスタ自慢の3気筒1Lエコブーストエンジン
フィエスタ自慢の3気筒1Lエコブーストエンジン

 フィアット500のツインエアエンジンがあるが、あれは振動自体をキャラクターに変えて成立しているモデル。効率を優先にすれば、2気筒でも4気筒でもなく、3気筒エンジンにせざるを得ないという。

(TEXT/編集部)

■3気筒か? 4気筒か? 日本メーカーのエンジン選択事情

日産 マーチ。同じ1.2Lでもマーチは3気筒、スイフトは4気筒を採用する。エンジンフィールは4気筒がいいが、パワートレーンの小型化、軽量化を考えると3気筒が有利となる
日産 マーチ。同じ1.2Lでもマーチは3気筒、スイフトは4気筒を採用する。エンジンフィールは4気筒がいいが、パワートレーンの小型化、軽量化を考えると3気筒が有利となる
スズキ スイフト
スズキ スイフト

 以前は軽自動車にも4気筒エンジンがあった。これを廃止する理由としてメーカーは、「3気筒は1気筒当たりの排気量が大きく、実用回転域のトルクを高めやすい」と説明した。

 また日産は、マーチやノートに3気筒を搭載した理由について、「4気筒よりも部品点数が少なく、可動部分の抵抗も小さい。冷却損失も減って熱効率が高まり、燃費を向上させやすい」としている。

 すべて理屈に沿うが、実際は必ずしも3気筒が高トルクかつ低燃費ではない。3気筒の1.2Lエンジンを積んだアイドリングストップを備えないマーチの最高出力は79‌ps(6000回転)、最大トルクは10.8kgm(4400回転)。JC08モード燃費は21.4km/Lだ。

 いっぽう、4気筒で1.2LのスイフトXGは、同様にデュアルジェット&アイドリングストップではない仕様が最高出力91‌ps(6000回転)で最大トルクは12.0kgm(4800回転)でJC08モード燃費20.6km/Lになる。スイフトはボディが30㎏重く燃費では少し不利だが、最高出力、最大トルクの数値はマーチに勝る。

 つまり実際の性能はエンジンの設計によって左右されるが、燃費をはじめとした効率を高める上で、3気筒が有利なのは間違いない。

 特に生産コストに与える影響は大きい。メカニズムの単価は、サイズではなく部品の点数に左右されるからだ。1気筒当たりの排気量が300ccでも400ccでもさほど違いはないが、3気筒と4気筒ではコストの差が拡大する。

 しかもコンパクトカーは世界各国で大量に販売され、なおかつ価格競争が激しい。薄利多売の典型だから、3気筒と4気筒の違いが売れゆきと利益に大きく関係する。

 そして3気筒エンジンが増えた背景には、技術の進歩もある。以前は3気筒特有の振動を打ち消す目的でバランサーシャフトを装着したが、燃費を突き詰めれば、シャフトの重さ、駆動に伴う抵抗がマイナスに働く。コストも高めてしまう。

 だから現在は、エンジンマウントを工夫したり、アウターバランサーの採用などで不快な揺れを抑えている。もちろん3気筒と4気筒とのフィーリングの違いは今も残るが、かなり目立たなくなった。

 かつては「3気筒エンジンは振動や騒音が生じて当たり前。快適性を求めるなら4気筒にすればよい」という発想だったが今は違う。軽量化を含めたエコとコスト削減のために気筒数と排気量を抑えることが重要になり、3気筒エンジンの解析にも力を注いでいる。その結果、3気筒が進歩して普及も進んだ。

 今後は過給器付きも含め、1.2Lクラスの3気筒が増えるだろう。

(TEXT/渡辺陽一郎)

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