3気筒なんてダメだよ! といっていた日本。ところが海外ブランドからは続々3気筒エンジンのモデルが登場している。3気筒がダメなんじゃなくて、日本メーカーが進化させてこなかっただけなんじゃないか!? 今こそ3気筒エンジンを見直すべし!!(本稿は「ベストカー」2014年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:鈴木直也、渡辺陽一郎、編集部
■シャレードターボ、カルタスターボ、そしてジャスティ 30年前には日本にも魅力的な3気筒があった

フォードフィエスタの3気筒1Lターボがやたら評判いい。また新型ミニは主力が3気筒1.5L、up!に続き新型ポロもメインは1L 3気筒らしい。
ヨーロッパ車を中心に、なんかにわかに3気筒ブームが起きている。でもちょっと待って。それをいうなら日本にだって昔から素敵な3気筒エンジンはいっぱいありましたよ。
1977年デビューの初代ダイハツシャレードなんか、ジウジアーロデザインのオシャレな2ボックスボディに1L 3気筒エンジンを搭載した先進的なFFコンパクトだったし、それを追いかけたスズキカルタスやスバルジャスティなんかもみんな1L 3気筒だった。
世界的に見ても、乗用車用3気筒エンジンがブームになったのはこの当時の日本が世界初で、それが世界中に広がっていったといってもいいくらいだ。
ついでに言っとくと、2代目シャレードでは1L 3気筒ターボはもちろん、ディーゼルもディーゼルターボ仕様も作られているし、3代目シャレードじゃリッター100ps超えのハイパワーターボだってあった。最近の3気筒の欧州車は30年ぶりにそれをリバイバルさせているだけじゃん……、そういいたくもなってくる。
あの3気筒モデルたちが進化していれば、と思ってしまう。

しかし、冷静に考えてみると当時と今じゃ社会環境も技術レベルもぜんぜん違うんだよなぁ。
昔の3気筒はとにかくコンパクトで安いクルマに最適なエンジンというコンセプトで開発された。燃費はもちろん重要だったけれど、それよりもコストやパッケージ面における3気筒のメリットを重視。いまの軽自動車と同じような理由からこの気筒配置が選ばれたと見るのが正しい。
だから、世の中が贅沢になってコストやパッケージ面の制約が薄れると、あっさりと3気筒は廃れちゃう。バブルの上昇期には多くのユーザーがよりスムーズでパワフルな4気筒のほうを好んだからだ。
しばらく忘れられていた3気筒エンジンが、わりと最近になって日欧で復活してくるわけだけど、日本車はまだこの「お安いエンジン」という流れを引きずっているのが悔しいところだ。

パッソやヴィッツに搭載されるトヨタ/ダイハツの1KR-FEは2006年デビューとやや古いからしようがないにしても、2010年デビューのマーチやノートに搭載される日産HR12DEや2012年デビューの三菱ミラージュの3A90でも、日本製の1Lクラス3気筒は安さ以外にほとんど特徴がない。
唯一の例外が2012年デビューのノート用のスーパーチャージャー付きHR12DDRで、ある程度のコストをかけて燃費効率向上のため直噴やクラッチ付きスーパーチャージャーなどの装備をおごっているんだけど、目立っているのは燃費性能だけ。走って特に面白いとか感銘を受けるといったタイプのパワーユニットとまではいえない。
なんといいましょうか、エンジン開発におけるコスト制約が厳しすぎて、世界を驚かせるような面白い3気筒エンジンが出てくる気配がないのがぼくは歯がゆいわけですよ。

それに比べると欧州勢のガッツはすごいよなぁ。冒頭のフィエスタ用“エコブースト”3気筒1Lターボなんか、最高出力100ps、最大トルク17.3kgmと1.6L級を置き換えるパフォーマンス。
もちろんそのためにはソレなりにコストも手間もかかっていて、直噴システムにしてもターボにしてもインタークーラーにしても、かなり立派なものを装備している。
さすがと申しましょうか、走りっぷりのほうも6速DCTとのコンビネーションが良好で、国産3気筒勢と比べると、そのドライバビリティは月とスッポンというくらいトルキーで楽しい。
パワーはぼちぼちの100psでも17.3kgmという最大トルクは走りに余裕をもたらしてくれ、打てば響くような気持ちいいレスポンスが楽しめる。燃費だけじゃなく、このへんがよくできたダウンサイズ過給の気持ちいいところなんだよね。
●国産勢で期待なのはホンダだけ?
当然、これに続いて上陸してくるBMWミニやVW勢も最新のダウンサイズターボ技術フル装備で、とてもじゃないが現状の国産3気筒では燃費はともかく走りではとても太刀打ちできそうな気がしない。
トヨタはハイブリッド以外はやる気なしだし、日産の答えはすでに出ているHR12DDR、マツダのSKYACTIVは基本NA、スバルの場合スモールカーのエンジンはトヨタ頼み、三菱に現在以上のエンジンを望むのは酷……。
そう考えていくと、現状で明らかになっている国産勢唯一の希望の星は、ホンダが開発中の1L 3気筒直噴ターボで、コイツは129ps/20.4kgmとフィエスタの欧州向けハイパワー仕様すら凌ぐポテンシャル。テストコースでプロトタイプに乗った印象でもパンチがあって「これなら世界と戦える!」という手応えがあった。
でも、国産3気筒で欧州勢を迎え撃てるのはホンダだけってのも寂しい話。ホンダ以外のエンジン技術者の皆さんは、このあたりにもっともっと危機感を持ってほしいと思うのですがいかがでしょう?
(TEXT/鈴木直也)
コメント
コメントの使い方