13代目スカイライン・6代目レガシィの不人気で考えた 日本人はなぜクルマの肥大化を嫌うのか?【ベストカーアーカイブス2014】

■クラウンより大きいと肌に合わない日本人気質

トヨタ クラウン。クラウンよりもボディが大きいと、大味で繊細さに欠けるクルマという印象がもたれてしまう気がする
トヨタ クラウン。クラウンよりもボディが大きいと、大味で繊細さに欠けるクルマという印象がもたれてしまう気がする

 アメリカでの人気でセダンが大型化していることはわかっていただけたと思うが、なぜ日本人はビッグセダンを嫌うのか?

 いくつか答が考えられるが、「クラウンよりも大きなクルマを認めたがらない」ということが潜在的にあると思う。

 クラウンが初めて3ナンバーになるのは1991年誕生の9代目からで、8代目は4ドアハードトップに3ナンバー車の設定があっただけで、主力は全長4690mmで全幅1695mmの5ナンバーモデルだった。

 しかも全長4800mm、全幅1750mmと本格3ナンバーボディになった9代目クラウンは売れなかった。8代目に比べると丸みを帯びシャープさに欠けたデザインが不評だったためと分析されたが、3ナンバー化への抵抗も少なからずあったと思う。

 ライバルのセドリック/グロリアに販売台数で負け、1993年にビッグマイナーチェンジしている。

 9代目クラウンと同タイミングで生まれたのが初代ウィンダム。北米ではレクサスES300として販売される高級車だったが、全長4780mmに対して全幅1780mmとクラウンよりも大きく、排気量もV6、3Lと直6、2.5Lが主力のクラウンよりも大きかった。

 室内は広く、高級感もあり、初代こそ珍しさもあって売れたが、2代目、3代目は鳴かず飛ばず。結局、2006年に消滅、カムリに統合されてしまう。

 3代いずれもがクラウンよりも大きいために、クラウンと比較されてしまったことで、逆に否定されてしまったような気がする。

 同様にカムリも5ナンバーの時はちょっと高級なセダンとして売れていたのに、1996年グラシアセダンがカムリと併売というかたちで追加されて以来、勢いをなくしてしまったように思う。

 カムリはウインダムとは違い218万8000円といった価格も手頃だったのに売れなかったのは、クラウンよりも大きいのに高級感が足りないといった、日本人的なものさしで判別されたためだという気がする。

 マークXがクラウンよりも大きくならず、売れゆきを維持しているのとは対照的だ。

 そして現在でも、ユーザーの心を縛り、クラウンよりも大きなクルマは、レクサスなど一部を除けば、たとえ安くても日本では扱いづらい大味なクルマという先入観を植えつけているような気がする。現行クラウンのサイズはアスリートで全長×全幅×全高が4895×1800×1450mmだ。

 シカゴショーで発表になったレガシィも2月末からようやく発売になるスカイラインも、クラウンよりも大きい。その意味では売れゆきがちょっと心配だ。

各車の全長×全編×全高サイズ。このほか現行クラウンアスリートは4895×1800×1450mm、現行マークXは4750×1795×1435mm
各車の全長×全編×全高サイズ。このほか現行クラウンアスリートは4895×1800×1450mm、現行マークXは4750×1795×1435mm

■日本人が大好きな3シリーズとCクラス

BMWの3シリーズ(4625×1800×1440mm)や新型メルセデスベンツCクラスと同様のプロポーションをもつ国産のセダンはレクサスのISだけだ。レクサスは値段が張るんで何とかトヨタ版をお安く出してもらえませんかね!
BMWの3シリーズ(4625×1800×1440mm)や新型メルセデスベンツCクラスと同様のプロポーションをもつ国産のセダンはレクサスのISだけだ。レクサスは値段が張るんで何とかトヨタ版をお安く出してもらえませんかね!

 クラウンよりも大きいか小さいかは国産モデルだけではなく、輸入車にもあてはまる気がする。日本人が大好きなスポーツセダンと言えばBMWの3シリーズと新型メルセデスベンツCクラスということになろう。

 クラウンハイブリッドのアスリートは410万円。BMWの320iは8速ATで459万円。新型Cクラスも400万~450万円のゾーンに投入されるはずだから、価格的にもライバルとなるはず。

 さてサイズを比べてみると、BMWの3シリーズは全長×全幅×全高が4625×1800×1440mm、新型Cクラスは同じく4686×1810×1442mmとクラウンと全幅は変わらないが、全長は100mm以上短い。いわばそれが国際的なプロポーションのいいプレミアムセダンの基準である。

スポーツセダンのサイズ比較
スポーツセダンのサイズ比較

 BMWの3シリーズや新型メルセデスベンツCクラスのように全幅は1800mm前後とワイドで、全長は4700mm以下と5ナンバー枠に収まるプレミアムセダンは日本車ではレクサスISくらいしか見あたらない。

 プレミアムセダンとは言えないが、全長が短く、全幅がワイドなセダンというならば、スバルの新型WRX STIやマツダのアクセラセダンがなんとか該当するだけだ。

 北米マーケットが主力のミッドサイズセダンが嫌で、プロポーションのいいスポーティなセダンが欲しいといってもほとんどないということ。

 願わくば、HS250hとSAIの関係の逆で、レクサスISのトヨタバージョンを100万円ほど安く販売してくれることを願うばかりだ。

 でもそれってクラウンのことじゃんって言われると、ぐうの音もでないんだけどね。ああやっぱりガラパゴスでいいから日本のスポーツセダンが欲しい。

レクサスIS(4665×1810×1430mm)
レクサスIS(4665×1810×1430mm)
メルセデスベンツ 新型(※4代目)Cクラス(4686×1810×1442mm)
メルセデスベンツ 新型(※4代目)Cクラス(4686×1810×1442mm)

次ページは : 【番外コラム】アメリカ生産モデルが輸入されていた時代もあった

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