2018年7月に登場した現行型スズキ ジムニー。登場からすでに6年以上が経過しているが、いまだに納車までかなりの時間を要する。なぜここまで人気となったのか? 現行型の魅力を、ジムニーを知り尽くした男・二階堂裕氏が語る。
※本稿は2025年2月のものです
文:二階堂 裕/写真:スズキ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年3月10日号
ジムニー界の「ミスター」登場!
2018年に発売が開始された新型ジムニーJB64・74は、2025年の今も、注文から納車までが1年という異常事態が続いている。他メーカーでも、人気車種やスーパーカーのカテゴリーでは、同じような状態である。それは、世界的な半導体不足等が要因のひとつであろう。
しかし、軽自動車というジャンルで、価格も安いジムニーが、発売から5年経過しても、なお1年待ちというのは、やはり異常というよりも、ジムニー人気の強さを証明している。
実は、前のモデルのJB23・43は、ジムニー史上最不人気車種となり、2017年の販売台数は、日本国内はJB23が1万3000台、JB43が1000台、海外は3万台と、ジムニー全体の合計はわずか4万4000台の売り上げとなった。
次のジムニーはもう作らないという意見もスズキ社内であったそうだ。自動車メーカーの営業はどうしてもたくさん売れるクルマを作りたい。
普通の自動車メーカーでは、年間10万台以下のクルマは、採算が取れなくなり販売中止になる。フェラーリやポルシェのような高価なクルマは、数千台から数万台でも採算が取れるが、ジムニーの価格では難しい。実はJB23・43の時代のジムニーは、本当に存亡の危機だったのだ。
ところが、ジムニーはスズキにとって大切なブランドカーだと気が付いた人々が、スズキ社内にも残っていた。ジムニーを再び日の当たるところへと思った人たちが出てきた。
JB23・43の失敗は、ジムニーの四駆の機能デザインを忘れたことにある。背の高い乗用車スタイリングにしてしまったことだ。それが現在のジムニーは、1981年のSJ30のスタイリングの原点に戻り、再度仕切り直し、それが成功した。
実は、JB23・43と現行のJB64・74は、中身はまるで同じである。
以前のジムニーにはないブレーキLSDなどのトラクションコントロールが付いたが、このシステムはすでにエスクードやハスラーでは採用されており、目新しいものではない。ボディデザインが一新されただけだ、と言ってもいい。
実際、現行のジムニーのスタイリングは、ベンツGクラスにも似ているし、ランドローバーにも似ている。
しかし、何といっても原点であるSJ30の基本形状に戻したことが、多くのユーザーがジムニーに戻ってきた要因だ。新しく加えられたデザインエレメントが、今までにないユーザーを獲得した。
現行のジムニーは、スズキのデザイナーの力が、本当によく発揮されたモデルである。脈々と受け継がれてきたジムニーの魅力はSJ30から変わらないのだが、洋服と同じでやはり時代にあった形があるのだろうと思う。
そして、ジムニーの5ドアが発売される。アウトドアとファミリカーが結びついたジムニーは最高であろう。軽自動車を超えて、本当の意味での普通車のジムニーの時代が予感される。
●二階堂 裕(ゆたか)
RV4ワイルドグースの代表取締役社長。ジムニー専門誌の発行人であり、日本ジムニークラブ会長も務める。
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