4WDが曲がりにくくて運転しにくいというのは、もう昔の話。なかでも三菱が展開していたランサーエボリューションは、4WD車の常識を覆し様々な可能性を秘めていた1台だった。そんなランエボの開発に携わっていた4WD使いがビックリした4WDとは一体?
文:中谷明彦/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】鼓動高鳴る!! 公道を走るレーシングカーの全貌をご覧アレ!!(45枚)画像ギャラリー「4WDが曲がらない」は大きな間違い!!
三菱ランサー・エボリューション(ランエボ)のⅤ〜Ⅹにかけて、その開発に関わったのは同じ三菱のGTOで当時のN1耐久レースに参戦し、4WD車の可能性を高く評価していたからで、ランエボを最強の4WDセダンとして完成させたかったからだ。
いまだに、多くの人が「4WD車は曲がりにくい」という印象を持っている。確かにパートタイム方式のトランスファーギアで前後アクスルを直結して4WDとするモデルは、コーナリング時にブレーキング現象が発生して曲がりにくい。
それは1980年にアウディ・クワトロがセンターデフ方式のフルタイム4WDシステムを完成させて解消させたが、旧来の機械式トランスファーを装備するクロカンモデルなどは現在でもブレーキング現象が発生する。
ブレーキング現象は、例えば旋回時に前輪外輪の軌跡と後輪内輪の軌跡で大きな内輪差が生じるために起こる。その回転数差を作動差としてうまく調整してくれるのがセンターデフだ。
これで曲がる4WDが実現し、乗用車にも4WD仕様が増えた。これまでの進化過程を経て、現代はビスカスカップリングや電子制御カップリングを配置して、必要に応じて4輪を駆動させる方式が主流となっている。
【画像ギャラリー】鼓動高鳴る!! 公道を走るレーシングカーの全貌をご覧アレ!!(45枚)画像ギャラリーランエボが他の4WDより優れていたワケ
ランエボに可能性を感じたのはセンターデフ方式のフルタイム4WDであったこと。さらにACD(アクティブセンターデフ)を備えさせ、センターデフの拘束力を状況に応じて使い分けることができたことがある。
さらに進化してリアアクスルに内外輪のトルク移動を制御するAYC(アクティブヨーコントロール)を備え、フロントアクスルにはトルセンLSDを装備して旋回時トラクションを高めた。
ランネボXではブレーキ制御も加わり、加速旋回だけでなく制動時の旋回性能も向上させている。
だからと言ってXが完成系というわけではない。Xからさらに続く進化のプロセスが存在していたのだが、ランエボ自体が消滅したことで実現できない状況に陥ってしまったのは残念で仕方ないところだ。
4WDが最強なのは、そのトラクション性能に優れているからだ。雪道を走れば実感できる。FFやFRに比べ、単純に2倍のトラクション性能を発揮できる。これで曲がってくれれば言う事ない。
その高すぎる性能はモータースポーツでも実証されている。ランエボのWRC5連覇やスーパー耐久50勝もその一部だろう。もしレギュレーションが許されるならF1だった4WDシステムを導入するだろう。
ル・マン24時間など世界を転線して争う世界耐久選手権戦を走るプロトタイプカーのハイパーカークラスを戦うワークスマシンはハイブリッド化によって、4WDをより現実的なものとしている。
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コメント
コメントの使い方ランボルギーニがアウディとタッグ組んでノウハウを大きく消化させたのは胸熱でしたよね。
エボのスポーツ四駆系開発者を数多く採用したGRとそのレースチームに、エボのノウハウも生きてると思うと、これもまた胸熱