■アイサイトの現在のポジション
アイサイトの性能は、価格まで考慮すれば世界トップクラスだった。それが明確になったのは2014年度に国が行うJNCAP(自動車アセスメント)に自動ブレーキに代表される予防安全装備のテストが加わってからだ。
アイサイトは当時から、停止車両に対して50km/hでの停止が確認されており、このころは停止車両に対し50km/hで停止できないクルマが多々あったのを考えると、アイサイトの総合力は圧倒的だった。
だが、2016年度からJNCAPの予防安全装備のテストに成人と子供のダミー人形を使った、単純な飛び出しと駐車車両を想定した遮蔽物からの飛び出しという対歩行者の項目が加わってから、アイサイトの優位性に陰りが見え始めたのも事実だった。
対歩行者のテストでは、世界トップと言われるモービルアイ社の単眼カメラを使うマツダと日産が台頭。アイサイトは「得られる情報量を増やすために、ステレオカメラの横方向の感覚を広げたいのだが、広げて情報量が増えると今度はCPUによる情報処理が間に合わなくなる」という課題が目立つようになってきた。
さらに、2018年になると現行「アルファード」のマイナーチェンジモデルで登場し、「クラウン」や「カローラファミリー」、「RAV4」にも採用されるミリ波レーダーと単眼カメラから構成されるトヨタセーフティセンスの最新版が夜間の歩行者にも対応するようになった。
といったことを総合し、現在実施済のJNCAPの予防安全装備のテスト結果(表参照)から日本車の自動ブレーキの性能を順位付けしてみると、
◆トップ 最新「トヨタセーフティセンス」&「レクサスセーフティシステム+」
◆2位グループ 最新「アイサイト」(夜間の街灯なしの歩行者に対するテスト結果が最新のトヨタのものに見劣りするため)、最新「日産エマージェンシーブレーキ」
◆3位グループ 最新「ホンダセンシング」、最新「マツダスマートブレーキサポート」
となる。
しかし、まだJNCAPの予防安全装備のテストは受けていない世界トップクラスの運転支援システムである、日産が「スカイラインハイブリッド」に搭載した「プロパイロット2.0」は周囲の情報収集にトライカムと呼ばれる三眼カメラと多数のレーダーを使っている。
それだけにコストが非常に高いのはいなめないにせよ、自動ブレーキの性能も最新のトヨタのものを凌駕するのは濃厚で、現在のアイサイトはスカイラインハイブリッドがJNCAPのテストを受けると、3番手グループとなる可能性は高い。
そのなかでのアイサイトのアドバンテージとしては、
・カラーカメラなので、赤信号や先行車のブレーキランプの点灯も把握している。前者は赤信号をクルマが把握した際にブレーキ操作がなかった場合の警告(ブレーキは掛からない)、後者はアダプティブクルーズコントロールを使った際の追従のスムースさに貢献している。
・スバルはマツダと同様にトヨタ、日産、ホンダのように車種が多くないため、最新の自動ブレーキの社内での展開が早く、メーカー別に見た際の平均点が高い。
ということが挙げられる。
■2020年、自動ブレーキはどうなる?
2020年も自動ブレーキの進化の度合いは大きいと予想される。現在わかっていることとしては、
・トヨタは、「ヤリス」のものが最新トヨタセーフティセンスとなるだけでなく、トヨタ初となる右折時の直進車と右左折後の横断歩行者への対応が加わる。
・ホンダは、次期「フィット」の単眼カメラが、日産とマツダも使うモービルアイ社のものに変更されるため、特に夜間も含めた対歩行者への性能向上が期待される。
といったことが挙げられる。
またスバルも、2019年の東京モーターショーでプロトタイプが出展された次期レヴォーグのアイサイトは、ステレオカメラの横方向の間隔を広げ情報収集能力を高める(CPUの情報処理能力の向上も含む)だけでなく、情報収集に前方のミリ波レーダーも加わり、見通しの悪いところなどでの出会い頭や右左折時の事故防止に対する性能も高まるという。性能向上はもちろん大歓迎だが、値上がりはちょっと心配なところだ。
いずれにしても、スバルのような大きくないメーカーのクルマには何らかの飛び抜けた性能が欲しいだけに、アイサイトも次期レヴォーグでかつてのような輝きを取り戻すことを期待したい。
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