クラウン一新から早1年経過だけど大きくなったクラウンセダンは国内市場にどう受け入れられたのか

クラウン一新から早1年経過だけど大きくなったクラウンセダンは国内市場にどう受け入れられたのか

 2022年7月のワールドプレミアで、突如発表されたクラウン4兄弟。クロスオーバー・スポーツ・エステートという新しいクラウンと、従来通りのセダンが次々と市場へ投入されている。クラウンの王道とも言えるセダンが2023年11月に投入されて、1年以上が経過した。2024年1年間の販売動向振り返りながら、クラウンセダンが日本市場にどう受け入れられたのかを考えていこう。

文:佐々木 亘/画像:トヨタ

クラウンスポーツはものすごい勢いで売れ続けているが……
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予想外の売れ行き? クラウンの現在地

クラウンスポーツはものすごい勢いで売れ続けているが……
クラウンスポーツはものすごい勢いで売れ続けているが……

 まずは先行して販売がスタートしていたクロスオーバーとクラウンスポーツを含めた、2024年1月~12月までの累計販売台数を見てみよう。

 ・クラウンクロスオーバー:1万6980台

 ・クラウンスポーツ:3万5810台

 ・クラウンセダン:9,430台

 ほぼ同時期に登場したクラウンスポーツは、飛ぶ鳥を落とす勢いで売れ続けているが、クラウンセダンは元気がない。

 発売開始時に公表された月販基準台数は、クラウンスポーツが700台/月、クラウンセダンは600台/月とそれほど違いが無いのにもかかわらず、年間販売台数では4倍近い差が生まれた。

 しかしながら単純に月販基準台数を12倍すると7,200台だから、クラウンセダンが落第かというとそうでもない。クラウンスポーツが売れすぎているだけとも言えるだろう。

 大幅に先行して登場したクラウンクロスオーバーとの差は、じりじりと詰まってきており、セダンがクロスオーバーを抜き去る日は近そうだ。

 それでも、この後にはクラウンエステートの登場が控えることを考えると、2024年の販売台数から見るクラウンセダンの勢いは、少し足りなかったと言わざるをえない。

伸び悩む公用車需要

セダンの需要が下がりつつあるため、今後も厳しい時期が続くと思われる
セダンの需要が下がりつつあるため、今後も厳しい時期が続くと思われる

 現行のクラウンセダンは、クルマとしての完成度が非常に高い。クラウンらしいふわっとした乗り味は残しながら、不快なボディロールやピッチングを減らしているから、揺れの収束が非常に早いのだ。

 ボディ全長が5mを超えたことで、室内の広さ(特にレッグスペース)も十分になり、ドライバーズーカー・ショーファーカーのどちらでも楽しめるクルマとなった。

 ただ、最近の会社や官公庁のお偉いさんが使うクルマは、ミニバンへとシフトしていて、求められているのはアルファードだ。「これまでクラウンを使っていた会社でも、アルファードやレクサスSUVへ代替わりが進み、クラウンセダンに飛びつく様子は少なくなった」と、トヨタディーラーの営業マンは語る。

 「もう少し法人や官公庁ユースが増えていくと、あっという間にクラウンクロスオーバーは抜き去ると思う」と前述の営業マンは続けたが、こうした動きが目に見えて出てくるのかどうかは不透明。クラウンセダンには、少し厳しい時期が続きそうだ。

なぜ四駆が無いのか! 北国ではセダンを見向きもしないってマジ?

四駆がなくなってしまったことで、需要が下がってしまったことは否めない
四駆がなくなってしまったことで、需要が下がってしまったことは否めない

 15代目までのクラウンを振り返ると、一定数の四駆需要が発生していたことが分かってくる。特に降雪・積雪地では、「Four」のクラウンを指名買いするユーザーも多かった。FRベースの本格4WDは、FFベースのE-fourよりも作り込みがよく、実際に積雪路を走った時の不安感も少なかったのだ。

 しかし16代目クラウンセダンには、FRしかない。伝統のFourが消えてしまい、四駆のクラウンが欲しい場合には、クロスオーバーやスポーツを選ぶしかなくなっている。これにより上越・山陰地方や東北地方のクラウンセダン販売は苦戦を強いられることとなった。

 岩手・宮城・福島の太平洋側ならまだいいのだが、日本海側のトヨタディーラーでは、クラウンFourユーザーの代替わりが進まない。この地域では5mになった全長の長さもネックになり、歴代クラウンを乗り継いできた人も、クラウンセダンには手を出さないというのだ。

 提案できるクルマも無いまま、保有車両のアフターフォローを強化し、他社への流出を防ぐ状況。後ろ向きの営業活動に、「セダンの四駆があれば」と恨み節も聞こえてくる。

 これまでクラウンに興味が無かったユーザー層を取り込むことには成功した。一方で、既存のユーザーが大満足と言える革新ではなかったこともうかがえる。クラウントータルで見れば、大成功と言える戦略だが、国内市場でセダン単体に絞ってみれば、及第点といったところ。

 トヨタブランドを背負うクルマとしては、もう少し国内の方を向いてほしいと筆者は思う。懐に入るのが上手いクルマだと思っていたのだが、世界を見据えた戦略で性格も変わってしまったか。日本人がクラウンのセダンに乗るという意味を、トヨタには今一度考えてもらいたい。

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