8年以上前の話になるだろうか。かつてマツダの新車を買うと、大幅値引きで買ったのはいいが、いざ下取りに出す時になると、他社のディーラーでは買い叩かれるため、結局は高く買ってくれて大幅値引きをしてくれるマツダディーラーに戻り、再びマツダの新車を買うという「マツダ地獄」と呼ばれていたことがあった。
年度末には300万円のクルマで40万円以上の値引き……なんていうケースも多発していた。
しかし、最近ではそのマツダ地獄はなくなったと聞く。大幅な値引きはしていないというのだ。
最近のマツダ車は販売低迷しているというが、それでも本当に大幅値引きはしていないのだろうか? 流通ジャーナリストの遠藤徹氏が徹底レポート。
文/遠藤徹
写真/マツダ ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部
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マツダディーラーの営業マンに本音を聞いた
最近、首都圏にあるマツダ販売店を回り、マツダ車の購入交渉をして驚くのは以前に比べて値引き幅を極端に少なくして売っていることだ。その理由として首都圏のマツダディーラーの営業マンは、
「かつては大幅な値引き販売をしていました。そのことが中古車価格の下落につながり、さらに下取り車が安くなり、新車の大幅値引きを繰り返さざるを得ない慣習を作り出し、商品価値の下落と販売店の収益ダウンにつながっていました。
これはご存じの通り、マツダ地獄と呼ばれていました。6月、12月のボーナスセール、3月の決算セールはショールームの前にのぼりを立てて、新聞の折り込みチラシを大量に配っていました。
この悪循環から、なかなか抜け出せませんでした。よくお客様から、マツダ車を買って、数年後に他社のディーラーで下取りに出すと買い叩かれて信じられないような低い査定額なので、結局一番高く下取ってくれて値引き額の大きいおたくのクルマを買うことになったと……。
大幅値引きをしなくなったのは全面的にSKYACTIVを搭載したCX-5が登場した2012年頃だったと思います。この悪い慣習をやめようとしてメーカーの指示もあり、値引き販売の抑制をスタートさせたのです」と、その経緯を証言してくれた。
こうした値引きしない販売方法は、2014年から黒い外観が特徴の新世代店舗をスタートさせたが、新世代店舗になってからその傾向はさらに加速した。
ショールーム内で、かつては値引き額を前面に出していたセールストークも影を潜め、チラシもなくなり、営業マンも明らかに値引きを渋るようになった。
販売台数を確保するためにインセンティブを増やしすぎると、収益悪化の原因になる。また、値引きしないと売りにくくなり、ブランド価値が下がる。
一方、マツダが”正価販売”と呼ぶインセンティブを抑制する手法に転換すると、販売台数を増やすのが難しくなるのは当然である。
しかし、環境性能と走行性能を両立させたSKYACTIV技術や野生動物がモチーフの「魂動(こどう)」デザインで商品力が向上し、中古車の下取り価格も上がった。マツダの藤原副社長は「マツダ地獄はなくなった」と自信を示した。
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