クルマ界のあらゆる不思議に迫ることで一部でカルト的な人気を誇ったかもしれないベストカー本誌企画「不思議でたまらない」。今回は本企画から、フィットハイブリッドの燃費にまつわる「フシギ」を深掘り!(本稿は「ベストカー」2013年10月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部
担当、親切にディーラーに付き添った友人に詰められるの巻
発売からたった10日が過ぎた8月15日時点でのフィットの受注台数は、月販目標台数1万5000台の約2.7倍にあたる4万台と、ホンダで過去最速のペースとのこと。幸先いいスタートでなによりです。
先週、友人から「フィットを買おうと思っているんだけど、相談に乗ってよ」と言われ、ディーラーに一緒に行ってきた。
友人はディーラーマンにHVのFパッケージを薦められていたのだが、「なんで標準のHVが36.4km/LなのにFになると33.6km/Lに燃費が落ちるんだよ」と矛先が営業マンではなく、担当に向いて来た~。
まあ、装備が豪華になって、車重も重くなるからなんじゃないと軽く答えたら、「納得するまで説明しろ」と逆ギレ。
ということで今回の不思議のお題は2つ。ハイブリッドモデルのグレード差による燃費の違いはどこから? 2つ目はガソリンモデルのFFと4WDの燃費差が最大5.4km/Lも違うその理由は?
なんと標準のHVはアルミボンネットも採用
まずHVのグレード違いによる燃費の差。JC08モード燃費は標準のHVが36.4km/L、HV・FパッケージとHV・Lパッケージが33.6km/L、HV・Sパッケージが31.4km/L。
HVの標準とHV・Sパッケージの差は5.0km/Lも違うのだった。
考えられるのは、装備差と車重。
詳しくは下の表のとおりだが、標準のHVとFパッケージの差は、アームレストコンソールボックスや運転席ハイトアジャスター、ウルトラシート、リアワイパーなどを装備したおかげで車重は50kg増えていたのだった。
Lパッケージも装備に多少の差があれど車重は1130kgで燃費はFパッケージと同じだ。
ほんとにこれだけ? とじっくり見ていくと、なんとタンク容量がベースのHVが32L、ほかのグレードは40Lと8Lも違う!
ちなみにSパッケージはRSに準じた16インチアルミホイールなどのスポーティな装備によるプラス60kgの重量増とリフトを抑制するエアロパーツの空力が影響して、標準のHVに比べて5.0km/Lの燃費悪化。そのぶん走りはダンゼンいい。
う~ん、ほんとにこれだけかと思い、ホンダ広報部に聞いてみたらなんと「HVの標準モデルだけ、ボンネットがアルミニウム製です」。むむむ……。
それじゃあ最大のライバル、アクアはどうか?
上のグレードからG、S、LとJC08モード燃費は35.4km/Lですべてのグレードが同じ燃費。タンク容量も36L。グレードによる装備の違いを見ていくと、大まかなものとしてはタイヤがGとSが175/65R14に対し、Lは165/70R14。
GとSはパンク修理キットだが、Lはスペアタイヤとなり、スピーカーがGとSが4スピーカー、Lが2スピーカー。
フロントシートアジャスターもGとSが運転席6ウェイ/助手席4ウェイ、Lが4ウェイ/4ウェイとなる。
そのほか、Lはリアワイパー、アームレスト付きコンソールボックス、フードサイレンサーが装備されない。
ただし、注意書きでLEDヘッドランプパッケージやツーリングパッケージ、オーディオパッケージ、サイドエアバッグ&カーテンシールドエアバッグなどのメーカーオプションを装備した場合、それぞれ10kg増、1080kg以上になると33.0km/L(ノーマルは35.4km/L)になりますと書いてあった。
要は車重が重くなりそうなものはパッケージオプション(メーカーオプション)にしたというわけ。ここで気づいたのがフィットHVとアクアの車重が同じ1080kgということ。
なにかあるなと思い調べていくと、フィットがコストの高いアルミボンネットまで採用して燃費スペシャルにした理由がわかった。
JC08モード燃費計測はシャシーダイナモを使用する。車重が増えていくと、等価慣性重量*(シャシーダイナモのフライホイールの重量)を増やしていくのだが、負荷をかける車重には間隔がある。
車重871~1080kg=等価慣性重量1130kg、車重1081~1185kg=等価慣性重量1250kg。フィットHVの標準グレードとアクアはこの1080kgに抑えることで低燃費を狙っていたのだった。
続いて、新型フィットもまた4WDの燃費が悪いのはどうしてか?
先代フィットも1.3Gで5km/Lも4WDのほうが燃費が悪かったが、新型フィットのFFと4WDの燃費差は1.3Lが最大5.4km/Lの差がある。いっぽう、1.5Lは2.8km/Lと差が縮まる。
最も燃費差のある13FのFFと4WDの装備を見ると、主なものでFFのスペアタイヤ、14インチタイヤに対し、4WDは応急パンク修理キット、15インチタイヤになる。
これに加えて4WDシステムを装着したことにより100kg増となる。ちなみにこれまでのデュアルポンプ式からビスカスカップリング式に代わっている(HVも同じ。12月発売)。
こうした装備、4WDによる抵抗増と重量増加、車高アップを含めた空力の悪化に加え、最も大きなポイントは4WDには燃費向上のためのキャパシタ*が装着されていないことだ。
最後に1.5LのFFと4WDの燃費の差が2.8km/Lと1.3Lに比べて少ない理由だがFFにもキャパシタが採用されていないからとのことだった。
いやはや低燃費技術は大変だなあと今回、つくづく思いましたです、ハイ。






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