自称「関税男」のトランプ大統領の動きが関係しているのか、値上げに踏み切る輸入車メーカーも少なくない。しかし、中国のBYDは2025年4月から大幅な値下げを敢行。いったいなぜ、このように思い切った値下げができるのだろうか!?
※本稿は2025年4月のものです
文:国沢光宏/写真:BYD
初出:『ベストカー』2025年5月26日号
BYDはなぜ値下げした?
BYDが4月から大幅値下げをした。ほかの輸入車は続々値上げをするなか、なぜ値下げできるのだろうか?
ひとつは2024年末から中国元に対する円の為替レートが高くなってきていることにある。ちなみに2024年12月の中国元は21.5円くらいだった。直近だと19.7円程度。
450万円という価格を付けていたATTO3の輸入原価を300万円だとすれば、為替だけで30万円の値下がり要因になる。これが一番大きいと考えていいだろう。したがって30万円程度の値下げは当然だと思う。
対する欧州車といえば、ドルに対して円が高くなり始めたものの、対ユーロだと160円以上のまんま。いまだ円安傾向なのだった。新型コロナ前まで120円くらいだったことを考えれば、値上がりして当然だと思う。
もう少し詳しく書くと、同じルノーブランドであってもアルカナは韓国工場製なので値上げ幅が少なくなっている。テスラ モデル3のスタンダードレンジも上海工場製。これまた値下げの余地が出ている。いずれにしろ円高が進むと輸入車は値下げ方向に動く。
今や輸入車といえ工場はさまざま。トランプ大統領が「日本でアメリカ車は売れていない!」と言うけれど、アメリカ工場で作ってるアメリカ車ってGMがカマロとコルベット、エスカレードだけ。そしてJeepのラングラーしかない。
Jeepの主力工場といえばインド。キャデラックのXTシリーズはすべて中国工場製だったりする。これらのモデル、本来なら値上げしなくてもいい? 日本には中国からインドから直接運ばれてきていますから。
ここがアメリカ勢の大きな問題点で、どうやら海外の工場で作った場合、書類上はアメリカ本社を経由し、そこでアメリカ車に仕立て、利益を落としたうえ、日本へはドルベースで請求しているようなのだった。だから中国工場やインド工場で作っているアメリカ車まで値上がりしてしまう。
いろんな意味で輸入車の価格は複雑怪奇。為替レートだけでない要因も絡んでくるのだった。欧州車も生産国の為替と関係ない値動きです。
BYDだった。為替のほかに「戦略的な価格設定」というものもある。
販売目標台数を年間1000台に設定するのと1万台に設定するのでは間接経費が変わってくる。多く売れば間接費用も低くなってくるワケ。そのほか、利益率を減らしたりするなど、価格変動要因って大きい。
簡単にいえば、BYDは日本で販売促進したいから利益率を減らし価格を下げているということです。 それでも売れなければ一段と安くするか撤退するか……。どうなるか興味深い。

















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