いまはもう必要がない…それでも語り継ぎたい「いにしえの運転術」たち

コーナリングの「探り」に使われた繊細技「ソーイング」

 「ソーイング」は、カーブを曲がるときにステアリングを小刻みに左右に切る操作だ。これにより、荷重移動やグリップの変化を感じ取りながら、クルマの挙動を微調整していた。当時はタイヤやサスペンションの性能が今ほど高くなく、オーバースピードだとスピンをする可能性が高かったため、こうした操作で挙動変化を探りながら運転する必要があったのだ。

 現在は、タイヤもサスペンションも大きく進化しており、また横滑り防止機能や車線逸脱支援システムなど、危険な状態になる前に、クルマが安全方向に制御してくれるアイテムが搭載されているため、スピンをするような事態にはならなくなった。

 そのため、昔のようにソーイングをする意味はなくなったが、ステアリングを少しずつ切る、という動作はいまでも必要。コーナーでは、ちょっとずつハンドルを切り足すほうが滑らかに曲がることができるため、タイヤにもクルマにも優しい運転になるからだ。ソーイングに関しては、かつての若者たちの「腕」が、いまもこうしたところで活かされているはずだ。

コーナリング中にハンドルを小刻みに動かしてグリップを探る「ソーイング」も現代では使わない技術のひとつだ(PHOTO:Adobe Stock_Tomasz Zajda)
コーナリング中にハンドルを小刻みに動かしてグリップを探る「ソーイング」も現代では使わない技術のひとつだ(PHOTO:Adobe Stock_Tomasz Zajda)

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 クルマが進化したことで、必要ではなくなったこれらの運転技術。昔はドライバーの腕でカバーする必要があった部分を、いまはクルマが自動的にやってくれるようになった。

 しかしながら、これらを「もういらない」と切り捨ててしまうのはもったいないように思う。どれも「クルマと人が対話していた時代」の名残であり、当時のドライバーがクルマと真剣に向き合っていた証でもある。

 過去の技術を知ることは、今のクルマをより深く理解するヒントにもなるし、これからのドライビングを考えるうえでも大切な視点になる。忘れられつつある「いにしえの技」だが、たびたびこうして振り返ってみる必要があるのかもしれない。

過去の技術を知ることは、今のクルマをより深く理解するヒントにもなる。たびたびこうして振り返ってみる必要があるのかもしれない(PHOTO:Adobe Stock_metamorworks)
過去の技術を知ることは、今のクルマをより深く理解するヒントにもなる。たびたびこうして振り返ってみる必要があるのかもしれない(PHOTO:Adobe Stock_metamorworks)
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