いまはもう必要がない…それでも語り継ぎたい「いにしえの運転術」たち

いまはもう必要がない…それでも語り継ぎたい「いにしえの運転術」たち

 オートマチックトランスミッションや電動パワーステアリング、ABSをはじめとした各種安全装備など、昨今のクルマは高度に進化しており、ドライバーに代わっていろんな操作や判断をこなしてくれる。しかしながら、クルマが現代のように賢くなかった1980年代ごろまでは、クルマを上手に乗りこなすには、それなりの「技術」が必要だったし、それを身につけることがドライバーとしての「たしなみ」でもあった。

 そんな「腕で乗る時代」に活躍したのが、いくつもの特殊な運転テクニックだ。いまではすっかり出番がなくなってしまったが、名前も操作もかっこよく、習得済みの読者諸氏のなかには、披露する場がなくなってしまったことを残念に感じている人は少なくないだろう。いまでは必要がなくなってしまった運転技術について振り返ろう。

文:立花義人、エムスリープロダクション/アイキャッチ画像:写真AC__atoput/写真:Adobe Stock、写真 AC

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スムーズなギアチェンジには必須だった「ダブルクラッチ」

 「ダブルクラッチ」とは、マニュアル車でギアを変えるとき、一度クラッチを切ってギアをニュートラルにし、エンジン回転数を合わせてからもう一度クラッチをつなぐという操作のこと。「通好み」な技に聞こえるが、当時はごく普通に使われていたテクニックだ。かつてのマニュアルトランスミッションは、ギアを変えるときにギア同士の回転速度を同調させる「シンクロメッシュ機構」がなかったり、その性能が不十分だったりしたため、回転数を自分で合わせてあげないと、ギアがスムーズにつながらなかったのだ。

 昨今のマニュアル車には、シンクロ機構が搭載されているため、ドライバーがダブルクラッチで回転数を合わせなくても、シフトチェンジの際にクラッチを切るだけで滑らかに変速することが可能だし、そもそもオートマチックトランスミッションが大半であるため、いまはクラッチ操作自体する機会が少ない。実際にやったことがある人は、もはや少数派なのだろう。

マニュアル車ではかつて当たり前のように使われていた、ダブルクラッチ。ただいまや、マニュアル車自体が絶滅危惧種…(PHOTO:Adobe Stock_hanjosan)
マニュアル車ではかつて当たり前のように使われていた、ダブルクラッチ。ただいまや、マニュアル車自体が絶滅危惧種…(PHOTO:Adobe Stock_hanjosan)

一瞬の「逆ハン」でコーナーを制す「フェイント」

 「フェイント」は、コーナーの進入直前にわざと逆方向にステアリングを切ることで、車体の荷重を移動させてクイックなターンを実現するテクニックだ。グリップが限界に近い状況や滑りやすい路面で威力を発揮するもので、ラリードライバーや峠道を攻める走り屋たちの間では定番の技術だった。

 ただ、無理やり姿勢を崩す操作なので、上手くできないとガードレールに突っ込んだり、対向車線へはみ出したりと、かなりの技量が必要なテクニック。しかしながら、いまのクルマでは、技量あるドライバーであっても、きれいにフェイントを決めることは不可能。昨今のクルマには、トラクションコントロールや車両安定制御装置(ESC等)などの優秀な安全装備が搭載されているため、こうした「意図的な滑り」に対してすぐに制御が入ってしまうからだ。

 もはやこの技は、特殊な競技やプロのドライバーが使う場面を除けば、日常ではほぼ出番なし。名前はカッコいいけど、いまでは「伝説の技」のひとつだ。

峠道を攻める走り屋たちの間では定番の技術だった「フェイント」。ただ、いまのクルマでは、やろうとしても制御が介入してしまうので不可能(PHOTO:Adobe Stock_jpimage)
峠道を攻める走り屋たちの間では定番の技術だった「フェイント」。ただ、いまのクルマでは、やろうとしても制御が介入してしまうので不可能(PHOTO:Adobe Stock_jpimage)

次ページは : コーナリングの「探り」に使われた繊細技「ソーイング」

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