意欲的なデザインや技術を採用したクルマは、高い人気を獲得することがあれば失敗に終わることもある。今回は、少々“尖りすぎた”ために商業的成功は収められなかったものの、独特の魅力を持った「隠れ名車」を紹介しよう。
文/長谷川 敦、写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱自動車、CarWp.com
【画像ギャラリー】過小評価された名車に今こそ喝采を!(17枚)画像ギャラリー炸裂する個性を最優先させたクルマたち
●マツダ ユーノスコスモ
1990年に登場したユーノスコスモは、当時マツダが進めていた販売店の多チャンネル戦略に乗ってユーノス店から販売された高級パーソナルクーペ。
マツダの伝統的車名のコスモを継承したこのクルマのエンジンは同社のお家芸だったロータリーで、しかも量産車としては世界初の3ローター型ロータリーエンジン搭載モデルも用意されていた。
この3ローター型ロータリーエンジンにシーケンシャルターボが組み合わされ、最高出力は実に280psと、高級車にふさわしい動力性能を誇った。
加えて市販車としては世界で初めてGPSナビゲーションシステムを搭載するなど、先端技術が惜しみなく盛り込まれていたのも特徴だった。
だが、パワフルなエンジンは必然的に燃料消費量も多くなってしまい、カタログ上の燃費は6.1km/Lだが、実情は街乗りで2km/Lを切ることもあったという。
いくらバブル景気時代の登場とはいえ、この悪燃費も要因になって販売成績は伸びず、1996年に製造販売が終了している。
燃費の悪さや販売不振からユーノスコスモをあまり評価しない意見もあるが、何ものにも似ていない個性があったのは間違いない。
●ホンダ Z(2代目)
ホンダのZは初代が1970年に発売された軽自動車だが、今回の主役は1998年にデビューした2代目モデル。
2代目Zは初代と同じ軽自動ながら、SUVスタイルの4WDを採用していたのが特徴だった。
もちろん2代目Zの特徴は他にもあり、エンジンをミドシップに搭載する4WDというのが最大のウリといえた。
UM-4(Under floor Midship 4WD)と呼ばれたレイアウトは、エンジンを後部座席の下に搭載する方式を意味し、低重心化を実現するとともに衝突安全性も大幅に向上させていた。
ミドシップレイアウトによる50:50の前後重量配分やパワフルなエンジン、そして4WDによるトラクションの高さなど、ハイレベルな走りを可能にした2代目Zだが、高機能ゆえに車体価格も高めになってしまい、期待されたほどの販売成績を残せなかった。
ラグジュアリーセダンの異端車
●三菱自動車 デボネアV
三菱自動車の高級セダン・デボネアの初代モデルは、1964年に発売されると、以降1986年まで基本デザインの変更なしに製造が続けられたため「走るシーラカンス」といわれることもあった。
そんなデボネアにも1986年についに新型が登場。2代目デボネアにはデボネアVの名称が与えられた。
デボネアVは三菱自動車のギャランΣ(シグマ)をベースに開発されたこともあり、この時代の大型セダンでは珍しいFF(フロントエンジン・フロント駆動)方式で登場した。
エンジンもギャランΣと同じV型6気筒が採用され、これが車名デボネアVの理由のひとつになっている。
デボネアVの想定ライバル車はトヨタのクラウン&セルシオや日産 セドリック&グロリアだったが、バブル景気が始まりつつあったこの当時のライバル車は強力で、セールスでは苦戦した。
FR方式を採用するライバルに比べて後部座席の足元スペースに余裕があるなど、アドバンテージになっている部分はあったものの、販売成績は好転することなく1992年に生産が終了した。
●トヨタ アリスト V300
1991年にデビューした初代トヨタ アリストは同社のクラウン マジェスタの兄弟車であり、北米ではレクサスブランドからGS300として発売された。
2代目アリストの登場は1997年で、このモデルからクラウンマジェスタと共通ではなく独自のプラットフォームが採用された。
エンジンは先代のV8&直6から3リッター直列6気筒に統一されている。
V300は2代目アリストの基幹モデルであり、そのエンジンはターボチャージャーの装着によって280psを発生、230psのNA(自然給気)モデルにはアリスト S300の名称が与えられた
4ドアセダンながらパワフルなエンジンを搭載するアリスト V300は魅力的なクルマだったが、日本の道路事情ではその性能を生かしきることができず、新車価格の477万円(1997年)は、当時の相場を考えると高めなこともあって日本国内ではそこまでのヒットモデルにはならなかった。
この2代目アリストも北米ではレクサスGSの名称で販売され、GS300(自然吸気エンジン搭載)とV8エンジン搭載のGS400(後にGS430)のバリエーションがあった。
特にV8モデルは、1998年にはモータートレンド誌の「インポートカー・オブ・ザ・イヤー」に輝いている。
そしてトヨタは日本国内でもレクサスブランドでの販売を開始することになり、アリストの次期型はレクサス GSで統一。
これでアリストとしての歴史に幕を下ろすことになった。


















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