どうしてもトヨタが好きで、トヨタの内情を知りたい!! ということで自腹でレースやラリー現場に足をはこぶ大学生に原稿をもらってみることに。正直なところまだまだ甘いところもありますが、次世代人材としてあたたかい目で見てあげてください。今回はクルマを壊して育てるってどういうこと?をテーマに語ってもらいます!
文/:大学生くま吉くん/写真:大学生くま吉くん、トヨタ、ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】トヨタはクルマ界の破壊王!? もちろんいい意味です! クルマを壊し、直して進化させることこそトヨタの爆勝宣言なり!!(4枚)画像ギャラリークルマを壊す=クルマをつくる!?
未来に向けた新技術開発を進めるトヨタ。その開発現場で日々繰り返されているのが「走る・壊す・直す」というプロセスだ。そして、クルマが壊れた際に開発陣から聞こえてくるのは「壊してくれてありがとう」という言葉だという。
なぜ、壊れることが歓迎されるのか。トヨタ自動車の担当エンジニアに、その背景と、自動車会社がクルマを壊す理由について話を伺った。
クルマは約3万点の部品が組み合わさってできている
───そもそも「走る・壊す・直す」を繰り返す狙いについて教えてください。
担当エンジニア:クルマは約3万点もの部品で構成されています。その一つひとつが正しく機能しなければ、クルマ全体が正常に動きません。ドライバーがステアリングを切ったり、ブレーキを踏んだりする。その操作にクルマが応えて動く訳です。ドライバーとクルマは常に対話を繰り返しており、ドライバーが操作を通じて意思をクルマに伝え、クルマはドライバーの意思を受け取って走っています。
───人間の身体とも似ている仕組みに感じます。
担当エンジニア:まさにその通りです。人間の身体も、脳が指令を出し、それを受け取った無数の細胞が連携して動きますよね。クルマも同じでドライバーがクルマの脳となり、その指示に応えるべく一つひとつの部品が適切に動作して、はじめてドライバーの意図通りの動きが可能になるわけです。
壊れたからこそ見える改善ポイント
───そういった意味では人間とクルマが同じことはわかりました。では「走る・壊す・直す」の中で、なぜわざわざ“壊す”というプロセスが必要になるのでしょうか?
担当エンジニア:例えば、スポーツ選手がケガをすると、次は同じケガをしないように筋肉を鍛えたりしますよね。クルマも全く同じで、ある部分が壊れれば、そこを重点的に補強していきます。
───では壊れた部分を鍛え直せば、次は壊れなくなるということですか?
担当エンジニア:実は壊れなくなる訳ではありません。鍛えれば鍛えるほど、その箇所の性能は向上しますが、その分、今度は別の場所に負荷がかかり、鍛えてなかった箇所が新しく壊れてしまいます。
結局のところ、クルマと人間はある意味同じで、性能を上げるごとに耐えなければならない負荷も高まります。その結果、鍛えても鍛えても別の新しい箇所が壊れるので、開発は「イタチごっこ」のように続いていくわけです。そして、それは一度壊れて鍛えた箇所も例外ではありません。
───確かに、ある意味「壊れること」が「もっといいクルマづくり」に必要不可欠とも言えそうです。
担当エンジニア:そうした背景から、私たちエンジニアは「壊してくれてありがとう」と口にします。壊れない限り、次に鍛えるべき箇所が見えてこないですから。
発売してからが本当のスタート
───現在のGRシリーズなどは従来のトヨタ車よりも非常に高い頻度で改良が加えられていますが、それにはどのような背景がありますか?
担当エンジニア:正直、私がトヨタで開発に携わり始めた頃は「クルマは販売してしまえば基本的に改良はしなくて良い」という意識が強かった側面があります。もちろん法規対応などの小規模な改良はありましたが、市販後に大幅に改良するという考えは一般的ではありませんでした。
ですが、モリゾウさん(トヨタ自動車:豊田章男会長)は違いました。なぜならクルマは発売して終わりではなく「絶えず進化させる」ことが大切だからです。
だからこそ、発売後もサーキットやラリーといったモータースポーツの現場で徹底的に走り込み、問題点を見つけ出し、それを改善していく。これがモリゾウさんが言われている「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」です。
───まさに「走る・壊す・直す」を体現しているわけですね!
担当エンジニア:こうして開発の場で壊れることで得たフィードバックは常に「もっといいクルマづくり」に活かされてきました。そしてその積み重ねが、GRシリーズをはじめとしたトヨタ市販車の進化につながっています。








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