走行中にATをDからRに入れる行為は?
さて、基本的にはやってはいけないものの、最新のモデルであれば大丈夫というケースもある。ATはその最たる例だ。
ATのセレクトレバーは電気スイッチで、実際にはコンピュータが判断してギヤを切り替える油圧バルブを作動させており、最新のATには誤った操作をした場合、重大なトラブルに発展するのを防止するセーフティ機構が備わっている。
例えば、走行中にDからRに入れたとしてもセーフティ機構が働いてNをキープするため、大事には至らずにすむ。
トランスミッションのギヤを機械的にロックするがために、走行中にやってしまうと致命的なダメージを受けるD→Pも、一定の速度以上ではただちにロックされることはない。
しかし、セーフティ機構が搭載されてない車種や低年式のクルマだったら、ATが致命的なダメージを受けることになる。
また、最新ATでも何らかの不具合が重なったり、偶然条件が揃うことでセーフティ機構が機能しないケースも考えられる。その場合の修理費は安く見積もっても20万~30万円コースとなる。
間違った操作、やってはいけない操作が、取り返しのつかないトラブルを呼び寄せてしまうのは当然の結果。
基本はクルマを停止してからATのシフトチェンジを行うこと。正しい操作を心がけるよう、くれぐれも注意したい。
クルマからのSOSのサインを見逃すな!
■走行中の「キーッ」という音
ここからは具体的にクルマから発せられるSOSサインはどんなものがあるか、紹介していきたい。
常にキーッと高音を響かせながら走っているのは、そのほとんどがブレーキパッドの使用限界まで磨耗していて、金属板のウエアインジケーターがディスクローターに接触しているのが原因だ。
その時点ではブレーキパッドは完全に摩滅している訳ではないが、使用限界を迎えているので本来の制動力を発揮できていないし、安全のためにもすぐに交換する必要がある。
このまま走っているとブレーキパッドのライニングが完全に摩滅してなくなり、ライニングが張り付いていたバックプレートがディスクローターと直接接触してしまうことになる。
そうなると金属同士で接触することになり、摩擦係数が大きく落ちて、ブレーキの利きが大幅に落ちるだけでなく、ローター表面が削れてしまうので、早く整備工場に持ち込んだ方がいい。
クルマが発してくれているサインを見逃した、あるいは無視したがために大事に至るケースもある。そのまま乗っているとライニングがなくなり、ブレーキパッドのベースの鉄板がディスクローターに接触。
金属同士で擦れ合う摩擦熱でディスクローターに深い傷が入ってしまうため、ブレーキパッドとセットで交換する必要が生じてしまう。うっかりそのまま見過ごしていたら痛い大出費が嵩んでしまう典型的な例だ。
走行中にメーター内の赤いランプが点灯もしくは点滅したときは、とにかく要注意だ。
また、ブレーキフルードの液面はボンネットを開ければ目視でチェックできるので、たまにLOWライン(下限ライン)近くまで減っていないかチェックすることをお薦めする。
■ブレーキパッドは厚みが残っていても年数が経ったら寿命
ブレーキッパッドはライニングの厚み(残)があるから大丈夫というものでもない。ブレーキパッドはライニングが摩耗することで止める力を生んでいるため、熱が加わりながら年数が経過すると硬化して摩耗しにくくなる。
すると食いつきが悪くなるため、ブレーキの効きが悪化してくるのだ。特に峠道などでブレーキを使いすぎて焼けてしまったなど、過度のブレーキングで表面を焼いてしまったときは注意が必要だ。
このため、極端な話、5年で1万㎞しか走らずに半分以上残っていたとしても、ダメなときはダメ。
つまり、残量が第一要件なものの年数や使い方で考える必要もある。摩耗末期も同様の理由で確実に効きは悪化しているので注意したい。キーッというSOSサインがなくても年数が経ったら寿命だと考えてほしい。
■加速時にだけ「ギューッ」という音が鳴く
信号待ちからのスタート時など、加速時にギューとかキューという音を響かせているクルマもよく見かける。
これは発電機やウォーターポンプ、エアコンのコンプレッサーなどの補機類を回しているベルトが滑っている状態だ。
原因としてはベルトの摩耗やテンショナーの不良、ウォーターポンプや発電機のベアリングが壊れかけて、フリクションが増えていたり、それ自体からキュルキュルと音が出ている場合もある。
■エンジン始動時や回転の上下に応じて「ガラガラ」と音が出る
エンジンを始動した途端にガラガラと音が出るのは、バルブのトラブルであることが多い。
一番多いのはバルブクリアランスを調整してくれる油圧ラッシュアジャスターの不良だ。カムシャフトとタペットの間が開いてしまって、カムがタペットを叩いてしまっているのだ。
バルブのリフト量が足りなくなっている状態のため、1気筒だけ出力が低くなり、燃費も悪化してしまう。
放っておけばタペットやカムの摩耗が進んでしてしまうことにもなる。車種やエンジンの種類によっても差はあるが、オイル管理が悪いと起こりやすいトラブルだ。
エンジンが温まってしまえば音が消えてしまう場合は、エンジンオイルが温まって粘度が下がることで流動性が上がり、ラッシュアジャスターにオイルが供給されるようになるから、ということもある。
オイルの粘度を下げたり、上げたりすることでラッシュアジャスター内部の状況が変わって、音が消えて問題が解消する場合もある。
■エンジンから「カンカン」という音が響くのは?
同じくエンジン始動からカンカンという音が響いてきたなら、それはおそらくクランクシャフトの打音だ。
クランクシャフトは、メタルベアリングによって支持されている。通常はメタルとクランクの間に油圧によって油膜が作られ、オイルのなかでフローティングしながらクランクシャフトは回転しているのだが、メタルベアリングが摩耗してクリアランスが広がってしまうと、オイルリークが増えて必要な油膜が保てなくなる。
そうなると、さらにメタルベアリングが摩耗してしまうという悪循環に陥り、前述の様にクランクが回転する度に打ち付けられて打音が発生してしまうのである。
30万kmくらい走行すれば、どんなエンジンでも起こり得る症状だが、実際にはもっと少ない走行距離で起こっていることが多い。
その原因は、やはりやはりオイル管理の悪さだろう。オイルが汚れたり劣化したまま、あるいはオイルが減っているのに交換も継ぎ足しもせずに乗り続けていると、潤滑不良を起こし、オイルポンプ自体も内部が摩耗し、油圧自体が低下してしまう。
■発進時やDレンジにシフトした時の「ゴンッ」という衝撃音
Dレンジに入れた時や発進時にゴンッと衝撃と音が響くのは、エンジンマウントがヘタッているからかもしれない。
特に前後方向の位置決めを行なうトルクロッドと呼ばれる部品のブッシュがまずヘタリ、それによってエンジンや変速機をサブフレームにマウントしているエンジンマウントだけでは支え切れず、パワーユニット全体が大きく揺さぶられることになってしまうのだ。
異音の正体は、エンジンから駆動力が伝わる瞬間にパワーユニット全体が前後に大きく動いていることなのである。
クルマの各部に使われているゴム製のブッシュやマウント類は、クルマの剛性を調整し、振動や異音を抑えるために使っている緩衝材だ。
そのため劣化したら交換しないと振動や衝撃、異音を発生するようになり、そのまま放っておけばその部品の周囲の部品にストレスがかかり、クラックや変形などのトラブルを引き起こすのだ。
■走行中、段差などを乗り越えた衝撃が「ゴツッ」と響く!
段差などを乗り越えた時にガツンッと鋭い音が響いたり、ステアリングに衝撃が伝わってくるようなことがあれば、足回りの部品の劣化が考えられる。
ダンパーやスプリングといった骨格や筋肉部分ではなく、人間で言えば関節に相当する部分にガタが生じているのだ。
サスペンションアームのブッシュ、ストラットのアッパーマウント、アームとハブキャリアを結ぶボールジョイントなどである。
ブッシュは前述のエンジンマウント同様、ゴムでできていて走行中の衝撃を吸収してくれるが、劣化してやがて変形したり、ちぎれてしまうこともある。
こうなると衝撃を受け止められずに異音が発生したり、クルマの動きが不安定になる。
しかし、まだまだ乗り続けるつもりなら、いっそ足回りをリフレッシュして、同じような箇所の修理を一気に済ませた方が安上がりだ。
同じように足回りでボールジョイントを使っている操舵系のタイロッドエンドやスタビライザーのリンクなども、ガタが出てくると、異音を発生する。
スタビライザーリンクは、左右どちらかのサスが動いた時にだけコキンッと音が出ることが多い。
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