■当初の予想を覆して大ヒット! それでもトヨタが4代目を出さなかった理由
ひとつの時代を確実に築いたトヨタ カリーナEDが、3代であっけなく廃番となった理由。
それは、前章で触れたように「その居住性を酷評されたから」でしょうか?
それも多少はあったかもしれませんが、決定的な要因ではなかったでしょう。
カリーナEDを廃番に追い込んだのは、いや、カリーナEDに限らず、「背の低い4ドアセダン(ハードトップ)」というジャンルそのものを死滅させたのは、世の中全体における「カッコいい車の基準」が大きく変わったからです。
筆者個人は2020年2月の今見ても、初代カリーナEDのことを「……なかなかカッコいいじゃないか」と感じます。
しかしそれは筆者が幼少期に「昭和なスポーツカー文化」の影響を色濃く受け、それをまだ引きずっているからに過ぎません。
「カッコいい車=背が低くて速そうな車」という思い込みというか、刷り込みです。
そしてそれは筆者だけでなく、「いわゆる車好きのおっさん」の多くは(または一部は)今もなお、心のどこかで「カッコいい車=背が低くて速そうな車」と少しは思っているはずです。
しかしあるとき、「車好きのおっさん」以外の人々、つまり大多数の人々の美意識と嗜好は大きく転換しました。
「背が低くて速そうな車でビュンビュン走ることなんて今や別にカッコよくないし、むしろちょっとダサい。それより、荷物や人を収容しやすいタフな車で山とか海へ行き、『行った先でのアクティビティ』を存分に楽しめることのほうがカッコいいじゃないか」というパラダイムシフトです。
より簡単に言ってしまえば「フェアレディZじゃなくて三菱パジェロに乗ってる男のほうがモテる」みたいな話です。
トヨタ カリーナEDは、初代から3代目まで一貫して(古い人間から見れば)なかなかカッコいい車です。
しかし世の中全体の「カッコいいの基準」が2代目の途中あたりからRV、今で言うSUVの方向へとシフトしたため、カリーナEDは途中から「カッコ悪い車」もしくは「屋根が低くて不便なだけの車」へと変わりました。
車そのものが変わったのではなく、受け止め方が変わったのです。
とはいえトヨタ カリーナEDが廃番となってから十数年後、ドイツを中心とする欧州各国では「背が低い4ドアクーペ」が一大ブームとなり、そのブームが今なお続いていることは、皆さんよくご存じのとおりです。
大柄な欧州製4ドアクーペと小ぶりなカリーナEDの居住性を同列で語ることはできません。しかしそれでも、「EDはちょっと早かったな、残念だったな……」とは思うのです。
■トヨタ カリーナED 主要諸元
・全長×全幅×全高:4485mm×1690mm×1315mm
・ホイールベース:2525mm
・車重:1200kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1998cc
・最高出力:165ps/6800rpm
・最大トルク:19.5kg-m/4800rpm
・燃費:11.6km/L(10モード)
・価格:188万5000円(1989年式Gリミテッド 5MT)
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