海外メーカーが抱える問題
ベストカー:大きな内需があるだけに、ヨーロッパメーカーよりはアメリカメーカーのほうがまだ安定しているように見えます。
鈴木:アメリカは海岸沿いの地域ではテスラが激増してるけど、内陸に入れば依然としてピックアップトラックが多いだけに、生きていける余地は大きい。
国沢:アメリカ系でもステランティスは厳しい。1990年代だったら今のステランティス系だけでクライスラーにフィアット系、PSA、オペルがあるわけだから、当時のトヨタなんて話にならないくらいの規模があったのにね。
鈴木:それが今や、ステランティスは“弱者連合”と言わざるを得ない。さらにルノーだって厳しい。
国沢:だから下手すると、ヨーロッパメーカーはヨーロッパ圏から出られなくなるかもしれない。もしそうなったら、あれだけの数のメーカーが人口4億人のヨーロッパ圏で、文字どおりしのぎを削ることになる。それはもう、相当厳しいことになるかと。
ベストカー:もしそうなったら、個人的にはメルセデスをはじめ、プレミアムブランドのほうが買える層の関係で厳しそうにも感じます。
鈴木:ヨーロッパは貧富の差が小さくなかったり、日本の家賃補助に相当するカンパニーカーっていう制度もあったりするから、読めないところはある。
それでも、ヨーロッパ市場がヨーロッパのメーカーによる生存競争になると、日本メーカーはかわいそうで、ヨーロッパに輸出できなくなるんじゃないかなぁ。そしてヨーロッパでかなり強いのがトヨタ。リスクを考えると、もう目立たないほうがいいですよ。
国沢:ヨーロッパがEVに移行すると、きっと中国メーカーが自動車メーカーのないヨーロッパ諸国により進出するでしょう。そこで地産地消が始まろうもんなら、話はまた大変。
鈴木:こういうことを決めるEU委員会がすごくややこしいことになりそう。
国沢:いずれにしても、中国メーカーのヨーロッパ進出は雇用などの意味ではドイツとフランス以外ウェルカムな国が多いし、EU委員会が揉めているうちに、ヨーロッパメーカーがどんどんなくなるかもしれない。といっても、なんだかんだヨーロッパは底力があって、それなりに生き残るのかなとは思うけど。
日本メーカーの対ヨーロッパ戦略は?
ベストカー:日本メーカーの対ヨーロッパ戦略はどうなるでしょうか?
鈴木:ヨーロッパメーカーはもうボロボロだから、力があるというか力を入れてるのはトヨタだけ。マツダは縮小だし、日産、ホンダも風前の灯火。だからトヨタも空気を読んで、撤退というのもまんざらでもないのかもしれない。
国沢:トヨタはもうヨーロッパを攻める気はあまりないけど、タクシーを筆頭にヨーロッパ人からのハイブリッドへの需要がすごいから、余計にややこしい。
鈴木:ヨーロッパでのトヨタ人気は、F1全盛期でもヨーロッパでシェアを伸ばせなかったホンダと対照的だよね。
国沢:やっぱりトヨタの強さの源は、ヨーロッパでも全方位でやってるのが大きいかなと思う。
鈴木:欧米という自動車市場の話をしたところで、日本人からすると三大自動車市場のひとつになる中国について考えてみると、中国も違ったリスクがあって、厳しい時代だと思ったね。
具体的にはヨーロッパは燃費やCO2といった厳しい規制、アメリカはトランプというジャイアン的存在による混乱と混沌、中国は「いいものが桁違いに安い」という強烈なコスト競争ってすごく難しいと思う。
国沢:よく考えると、今の世界のクルマ需要は年間約9000万台。日本車がその25%を占めてるってとてつもないことだと思う。そういったなかオウンゴールしてるメーカーがあるってのが情けないねえ。
鈴木:それだけに、トヨタは目立たないように気を遣ってるのに、VWがオウンゴールしてしまい、結果的に先頭に立っちゃったのは想定外だった。
国沢:そんな大事な時期だけに、つまらん経営者が出てくるところは厳しい。
渡辺:日本メーカー、というより日本のユーザーの不安要素というと、1980年代までは日本向けと海外向けは半々くらいだったけど、今は8割以上海外向けというところが多い。そうなると日本向けの魅力的な車種が減っているのは、日本のユーザーやディーラーにとって不安要素かなと。
国沢:それでも、なんだかんだシッカリしているところが多い日本メーカーって、本当に強いよね。それでもBEVの準備をはじめ、トヨタ以外は不安しかないでしょう。
そんななかで、上海ショーでそれぞれBEVのトヨタbZ3Xは10万元(約200万円)、日産N7も12万元(約240万円)で出せる価格競争力を2社が持っているのは救いだけど、逆に言えば2社以外は厳しいし、中国で生産するクルマ以外の電池をどう入手するのかなど、課題は山積み。
鈴木:そんな時に「福岡の電池工場建設を断念」というのも、日産らしいといえば日産らしい。
国沢:トランプが大統領になってアメリカのBEV移行が4年延期になったのは幸いだったけど、問題なのは、トランプの後にもしアメリカ政府の方針がBEV推進になったら、電池の調達をはじめどうするかという話。大きな不安要素だと思うよ。
鈴木:BEVへの移行時期の見極めは本当に難しい。
国沢:2035年は厳しいかもしれないけど、電池の性能や価格が3年前とまったく違うのを踏まえると、2040年ごろになったら、相当BEVが増えてるんじゃないかなぁ。


コメント
コメントの使い方ヨーロッパ諸国の斜陽は車の落ち込みがなくても既定路線でした。
そもそもがドイツや油田国以外は、植民地支配での膨大な搾取資本のやりくりによって世界の盟主面してただけなので
金融以外で増やせてないまま、ゆっくりと崩壊し続けて最終段階に入ってました。それが自動車と中国で少し早まった。
問題は、早まったせいで恐慌やテロや労働者問題などが起こりやすく日本企業まで巻き込まれること。