各社期待のニューモデルがひしめきあう2020年・2021年。ところが、今年の秋ごろ以降に発売される新車から、非常に厳しい規制が始まる予定となっている。
車種によっては販売を継続できないモデルが出てくる可能性もあり、ハイブリッドを持たないメーカーにとっては非常に厳しい状況になる可能性もあるという。一体どういうことなのか。自動車評論家の国沢光宏氏に話を聞いた。
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※本稿は2020年1月のものです
文:国沢光宏/写真:AdobeStock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年2月10日号
■2020年秋にスタートする騒音規制『フェーズ2』
2021年から始まるのが厳しい騒音規制と、厳しい燃費規制である。
どちらもクルマのコンセプトや性能、パワーユニットに大きな影響を与えます。2021年に絶版となる車種も出てくるほど。
まず騒音規制から紹介していきたい。
2020年秋以降発売の新型車の義務となるのが『フェーズ2』。エンジン音はもちろんタイヤから出る騒音レベルまで問題になる。
ワイドな幅のタイヤだと、タイヤが路面と接するパターンノイズで基準をオーバーするというから驚く。
大雑把なイメージで紹介すると、現在施行されている『フェーズ1』の場合、75dBまでOK(騒音は車両から7.5m離れた場所で計る)。
音の大きさは文字で表現しにくいけど、大ざっぱに言って、例えば窓を開けた地下鉄のなかが80dBで、ほぼ会話不能だ。
標準的なクルマの走行音を道路端で聞けば、75dB以下だと思ってよい。2020年からフェーズ2だと73dBになる。たった2dBだと思うだろうが、dBは2違うと音のエネルギーで100倍!
75dBだと大きな声で会話しなければならないが、73dBレベルだとふつうの声でまったく問題ないから素晴らしい。車道に隣接する歩道で会話可能だと思ってよかろう。
自動車メーカーに聞くと、「フェーズ2レベルでもエンジン音を引き下げ、タイヤも改良しなければ厳しい。その次に予定されているフェーズ3レベルになってきたら、今の技術だとエンジンだけでなくタイヤも対応が難しいです。スポーツモデルなど生き残れないかもしれません」。
ということで、2021年にデビューしてくる新型車は早くも高性能タイヤを履けないと思う。
■2021年スタートの燃費規制
続いて2021年に始まる燃費規制。最初にクリアしなければならない欧州2021年規制のCO2排出量は『95g/km』。およそ24.0km/Lになる。
これ、企業平均です。トヨタでいえばプリウスをたくさん売れば、少し燃費悪いクルマも売れるくらいの数値。
ところがハイブリッドを持っていない企業からすれば2021年規制をクリアすることすら非常に難しくなるだろう。
燃費規制を守らないと「事実上の販売禁止措置」のような巨額の違反金を支払わらなければクルマの販売はできない。
例えば、スバルのような燃費悪いクルマしか持っていない企業だと真剣に撤退を考えないといけないほど。
逆にもしスバルが欧州でクルマを売り続けるなら、アメリカで販売しているXVのPHVしかない。でも高価だから人気薄で売れないと思う。
マツダも厳しい。マツダ3のSKYACTIV-Xがギリギリ。ディーゼルならイケると思うだろうけれど、軽油に含まれている炭素はガソリンより10%くらい多い。
したがってガソリン車の24.0km/Lってディーゼル車なら26.0km/L以上走らないとダメなのだった。マツダ2のディーゼルだって届かず。マツダはSKYACTIV-Xの進化版を出すらしい。
トヨタと並び、2021年規制をクリアできそうなのは燃費のいい2020年に出てくる次世代のe-POWERを持つ日産と、新世代2モーターハイブリッドを採用拡大していくホンダ。この2メーカーはトヨタと同じくクリア可能。
そうそう。三菱のアウトランダーPHEVもOK。ということで2021年をもって欧州市場から“ほぼ”撤退のメーカーが出てくると予想しておきたい。
このふたつがわかっていれば2021年の国産車は自動的に読めてくることだろう。すなわち、新型車についていえば、すべて燃費よく、静かなハイブリッドかPHV、そして電気自動車に燃料電池車だ。
もはやGT-RやヤリスGR-4(あらためGRヤリス)のような1600ccの高性能モデルすら、騒音規制をクリアすることが極めて難しいため出てこなくなってしまう。スポーツモデル=電気自動車です。
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