魅力的なクルマほど消えて行ってしまうのは世の常。世界的にも貴重な存在となった電動化なしの純内燃機関、V8、5L・NAエンジンを搭載するレクサスの2台に加え、V6、3Lツインターボを搭載するスカイラインに松田秀士氏が試乗!!
※本稿は2025年7月のものです
文:松田秀士/写真:奥隅圭之/予想CG:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年8月10日号
乗って楽しいクルマが消えていく
メルセデスはラグジュアリーモデルに直6エンジンやV8エンジンを再搭載することを検討しているという。なのにレクサスから今、あの官能的な5L、V8エンジン搭載モデルが消えようとしている。
そのパワーユニットを搭載しているのはレクサス RC F、IS500Fスポーツ、そしてLC500だ。RC Fは200台限定のファイナルエディションがすでに完売。IS500も終売がアナウンスされ、LC500以外は生産終了。この流れだとLC500も先が見えてきたようだ。
ならば、今のうちにもう一度、刺激的なこの2台に試乗しよう。さらにスカイラインNISMOもすでに買えない。400Rは手に入れることが可能だが、次期モデルはe-POWERとの噂もあり、V6・3Lツインターボも風前の灯か?
IS500Fスポーツパフォーマンスは2022年8月に追加された。IS Fの再来かと思われたが実はそうではない。IS F同様V8、5L自然吸気エンジンを搭載しながらも、あくまでも位置づけは「Fスポーツ」なのだ。
とはいえ、パワーはIS Fより進化している。注目なのはトルクとその発生回転数。IS F(51.5kgm/5200rpm)⇒IS500 Fスポーツ(54.6kgm/4800rpm)と、より低い回転数で+3.1kgmを発生。
しかも馬力は423ps/6600rpm⇒481ps/7100rpmと、500rpmもブン回せるようになっていて、中速トルクを盛りながらより回して馬力を絞り出しているのだ。
さらにIS全モデルに施された2020年のマイナーチェンジでホイール締結をナットからハブボルト締結にし、ボルト径を12→14mmにアップ。締め付けトルクを103→140Nmにすることで締結剛性を上げている。
これによってコーナーへのターンインでよりノーズの入りがシャープになった。また可変ダンパーのAVSとリアにパフォーマンスダンパーを装備し乗り心地もいい。
フロントブレーキは大径の323mmだがIS Fの6ポッドではなく4ポッドキャリパーだ。IS Fと違い間口を広くする意味合いが強いモデルで、850万円の価格もリーズナブル。
「F」モデルはやっぱり別格のパフォーマンス!
さて、個人的にいちばん残念なのが、RC Fが終了すること。IS Fの2ドアクーペ版とも言え、個人的にはIS Fでニュル24時間をクラス4位完走した者として、最後の「F」が消えゆくことに万感の思いを込めてこのファイナルエディションのステアリングを握った。
走り出してまず感じたことが、ボディ建て付け、サスペンション、ホイールトラベルのどこにもわずかな緩みも遊びもない。とにかくすべてが締まっていることだ。
エンジンパーソナリティはIS500Fスポーツと共通ながら、そのキャラはより激しく感じられる。スロットルレスポンスが刺激的なのだ。
それでいてサスペンションマネージメントはIS Fのバンプストッピングラバーの分厚いハーシュはなく、ストロークを重要視していて意外なほど乗り心地もいい。
乗り終えてドアを閉じた瞬間、マジ、ファイナルエディションが欲しくなった。もう買えないけど。
そしてスカイラインだ。ベースとなるプラットフォームは古いが、NISMOに乗ればわかる。そのポテンシャルの高さが。
そこにV6、3Lツインターボ。レスポンスも鋭いが扱いやすさもピカイチで、最高出力420psもさすがだが、56.1kgmの最大トルクを2800-4400rpmで発生する。このトルクでリアから蹴飛ばされるようにコーナーを立ち上がる。FRスポーツの楽しさバンザイだ!
レクサス RC F
エンジンの魅力もさることながら、大径スリット入りローターの6ポッドキャリパーブレーキや、ガッチリした車体剛性も魅力的。
●レクサス RC F
・価格:1360万円
・エンジン:V型8気筒DOHC 2UR-GSE
・ボア×ストローク、総排気量:94.0×89.5mm、4968cc
・最高出力:481ps/7100rpm
・最大トルク:54.6kgm/4800rpm
・トランスミッション:8速AT
・全長×全幅×全高:4710×1845×1390mm
・ホイールベース:2730mm
・車両重量:1750kg
・最低地上高:130mm
・フロントサスペンション:ダブルウィッシュボーン
・リアサスペンション:マルチリンク
・タイヤサイズ:F=255/35ZR19、R=275/35ZR19
・WLTCモード燃費:8.5km/L

































コメント
コメントの使い方未来のRC後継クーペや、EV化で刺激も大きさも上乗せされるであろう次期スカイラインも期待してますが
今こうして残っているキレのいいスポーツセダンというのは、価格が高く感じても確保しておくべき貴重な遺産です。
もうこういう車は新車では手に入らないうえ、次期型が出たら間違いなく割安だったと映るようになります。あと、セダンっていうのは使ってみると想像と違って不便がないですよ。