1990年に登場した初代トヨタ「エスティマ」は、当時のミニバンの常識を覆す革新的なパッケージングで、自動車業界に衝撃を与えました。
空力を意識した卵型のフォルムや先進的なパッケージング、快適性と走行性能を高次元で両立させた設計思想は、その後のミニバン市場に多大な影響を与え、2020年に生産を終えた現在でも、その影響力は色あせることなく、自動車ファンの記憶に深く刻まれています。エスティマファミリーがはたした役割や、復活の可能性について考察していきます。
文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:TOYOTA
【画像ギャラリー】当時の常識を覆す革新的なミニバンだった、トヨタ「エスティマ」の歴代モデル(18枚)画像ギャラリー「走るリビング」を実現させたエスティマ
初代エスティマの登場(1990年)は、単なる新型車の投入という枠を超え、「クルマのあり方そのもの」に一石を投じるものでした。開発陣が目指したのは「近未来のファミリーカー」。ホイールベースの中央付近にエンジンを搭載し、前後重量配分と低重心化を実現。走行安定性と広大な室内空間の両立に成功し、まさに「走るリビング」ともいうべきこれまでになかったミニバン像を提示したのです。
デザインも革新的でした。空力性能を追求したことによる卵型フォルムは、後の車両デザインに影響を与えましたし、曲線を多用したインテリアや、大きなガラスエリアによる開放感は、いま見てもなお先進的な印象を与えてくれます。
初代エスティマは全幅が1800ミリと日本市場で使うにはボディサイズが大きく、当初は販売が思わしくありませんでしたが、ダウンサイジングして5ナンバーサイズとしたエスティマエミーナ/ルシーダを投入することで販売は好調に。その後の2代目そして3代目では、FFベースのプラットフォームを採用し、「天才タマゴ」といわれたアンダーフロア型ミッドシップレイアウトのコンセプトは、残念ながら初代モデルで途絶えてしまいましたが、ハイブリッドモデルもラインアップに加えるなどによって、エスティマは「乗用車感覚のミニバン」としてファンから熱い支持を集めていきました。
しかしながら、SUV人気の加速や市場の多様化などを背景に販売は徐々に低迷。エスティマは2020年に30年の歴史に幕を下ろすことになりました。
最大の功績は、ミニバンに「スタイル」と「アイデンティティ」を持たせたこと
エスティマファミリーの最大の功績は、「実用的な箱型車両」に過ぎなかったミニバンに「スタイル」と「アイデンティティ」を持たせたことでしょう。家族のための「道具」であることにとどまらず、「かっこよくて楽しい」ライフスタイルカーという新しい価値観を提示したのです。ライバルのホンダ「オデッセイ」や、日産「プレサージュ」など、他社へも多大な影響を与えたのも間違いありません。
その思想は、後に登場するアルファードやヴェルファイアといった高級ミニバンにも引き継がれ、トヨタの「ミニバンブランド」を確立する基盤となりました。エスティマの存在がなければ、今日のトヨタのミニバン戦略はまったく異なるものになっていたかもしれません。





















コメント
コメントの使い方日本でマツダのMPVとエステマが、商用車以外のシャ-シから初めてミニバンを登場させました。エステマの弱点は、非力の2.4直4のみでV6が搭載できなかったこと。但し初めて1.7m幅を超えた普通登録3Noの先駆けとなったこと