海外での初公開から、「こんなデザインなら、BEVのミニバンもいいかも」と感じていたクルマ好きも少なくないだろう。現代版「ワーゲンバス」、フォルクスワーゲン ID.Buzzがついに日本で正式発表された。鈴木直也氏が早速試乗する!!
※本稿は2025年7月のものです
文:鈴木直也/写真:中里慎一郎
初出:『ベストカー』2025年8月10日号
新世代の「ワーゲンバス」登場!
ビートルと並ぶVWのアイコンといえば、いわゆる“ワーゲンバス”。人によって“タイプ2”とか“ヴァナゴン”とかの呼び名があるけど、現在でも熱烈なマニアがいる名車だ。
ID.BuzzはそれをBEVとして復活させる試み。2017年のデトロイトショーに出展されたコンセプトモデルが大きな反響を呼び、2022年に欧州、2024年に北米で販売が開始されている。
そんなID.Buzzがついに日本に上陸ということで、早速試乗してみた。
まず、ぼくも含めて取材スタッフ全員が好感を持ったのはそのデザインだ。傾斜の強いフロントガラスやちょいワルなストームトルーパー顔など、造形的にはオリジナルとぜんぜん似ていないのだが、2トーンに塗って真ん中にVWのエンブレムをどんとハメ込んじゃうと、アラ不思議、すんなり受け入れられちゃう。
もうひとつ、全長約5m、全幅約2mという堂々たるサイズもその存在感を高めている。プラットフォームはID.3やID.4と共通のMEVなのだが、地味な兄弟車と違って“華”がある。デザインだけで「乗ってみたいな」と思わせる訴求力を持っているのだ。
外装に比べて地味でおとなしめの内装
ただ車内に入ると、内装には外装ほどの個性はないのに気づく。インパネなどはIDシリーズで見慣れたもの。白とグレーの2トーンで仕立てられたシートも機能的だけど普通。ラグジュアリーとファミリーの中間といった印象だ。
車重約2.5トンにモーター出力210kWだから、走りにはあまり期待していなかったのだが、実際に乗ると活発な走りは予想以上。電動車ならではのトルク(560Nm)でスイスイ交通の流れをリードして行ける。
静粛性と重厚な乗り心地も大きな魅力で、ここはレクサス LMですら脱帽するレベルと言っていい。
というわけで「上級ミニバン市場に注目の新人登場!」と言いたいところだけど、ネックになりそうなのが約900万〜1000万円の価格。少なくとも内装は価格に見合っているとは言い難い。
BEV時代のブランドアイコンたる資格は充分だけど、数を売るにはもうひと工夫必要かもね?
●フォルクスワーゲン ID.Buzz プロ ロングホイールベース 諸元
・全長:4965mm
・全幅:1985mm
・全高:1925mm
・ホイールベース:3240mm
・車両重量:2720kg
・モーター出力:286ps/560Nm(57.1kgm)
・バッテリー容量:91kWh
・1充電走行距離:554km
・駆動方式:後輪駆動(RR)
・価格:997万9000円






















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