トランプ大統領が何を根拠に「フォードF-150が日本で売れる!」そんなわけあるか!? 日本で売れるアメリカ車とは

過去の日本で売れなかった例をトランプ大統領は知っているのか?

シボレーのコンパクトセダン&クーペ、キャバリエをトヨタブランドで販売したが大失敗
シボレーのコンパクトセダン&クーペ、キャバリエをトヨタブランドで販売したが大失敗

 そもそも日米自動車摩擦はいまに始まったことではない。1970年代の石油危機の際にはすでに勃発、低燃費なホンダシビックなどが大人気となった結果ビッグスリーの業績は悪化。1980年には全米自動車労組(UAW)などが日本車の輸入制限を求めて米国際貿易委員会(ITC)に提訴したが、同年、日本の自動車生産は米国を抜いて世界一になっていた。

 当時、日本政府と自動車業界は1981年、対米自動車輸出台数を制限する「自主規制」を導入することになり、自主規制は1993年度まで続いた。日本車メーカーは米国での現地生産を加速したが1990年前後には「米国で現地生産するクルマの米国製部品の調達量が少ない」と今回のようにイチャモンがつけられたのだった。

 ブッシュ第41代大統領はビッグスリー首脳らと来日し、当時の宮沢喜一首相との首脳会談を経て、日本車メーカーによる米国製部品購入の「努力目標」が設けられることになった。

 1995年にもクリントン政権の米通商代表部代表が、日本市場の閉鎖性を理由に「レクサス」など日本製高級車13車種の輸入に100%の関税を課すと発表。

 これに対して、当時の日本政府は世界貿易機関(WTO)に提訴する形で応戦するも、トヨタは1996年1月、GM製シボレーキャバリエにトヨタバッジを付けてOEM供給する形で、いわば国家的な外圧により販売された。

 トヨタはしっかりとプロモーション活動を展開したが、さっぱり売れず、年間2万台の目標販売台数にはまったく届かないまま、予定していた5年間の販売期間を前倒しし、2000年4月に販売終了した。

 日本に合うボディサイズのクルマで、価格を安くすれば売れるはず……というGMの考え方が安易すぎたといっていいだろう。大失敗したクライスラーネオンやサターンも同様だ。

日本での販売増強を目論んで、ネオンの価格設定を日本車に匹敵するほどの低価格にした努力はすばらしかったが、安くて高品質の日本車を相手にはサイズが小さいから、安いというだけでは難しい
日本での販売増強を目論んで、ネオンの価格設定を日本車に匹敵するほどの低価格にした努力はすばらしかったが、安くて高品質の日本車を相手にはサイズが小さいから、安いというだけでは難しい

 2000年以降、アメリカ車の販売は下降線を辿り、特にヤナセがGMの輸入権を返上してから加速し、2016年にはフォードが日本法人を撤退してからはひどい状況に。そして2017年にはクライスラーブランドも日本市場から撤退、現在はジープ、シボレー、キャデラック、テスラの4ブランドのみだ。

 とはいえ、アメリカ車がまったくダメダメというわけではない。1990年代に比べると、現在のアメ車はクオリティが格段にアップしているし、大排気量V8OHVといった時代から2Lターボや1.2Lターボなどダウンサイジングターボをはじめ、ハイブリッド車やPHEV、BEVをピックアップトラックやSUVに積極的にラインナップしている。

 アメリカ車の特徴ともいえるデカいボディサイズも、日本車やドイツ車が年々拡大していて、かつて全幅は1800mmを超えると大きく感じたが、いまでは全幅1850mmも珍しくないので、昔ほど大きく感じなくなっている(ランクル300は全幅1980mm)。

 よく言われる右ハンドル化していないことについては、売れる車種の一部に留まっている。努力はしているという程度で、欧州車のように「日本で売るために右ハンドルは必須」という考えはない。

かつてフォードジャパンはマスタングの右ハンドル仕様を用意した。写真は2025年式マスタング。右ハンドルの英国仕様をする手もあるのだ。5L、V8のMT車がソソられる
かつてフォードジャパンはマスタングの右ハンドル仕様を用意した。写真は2025年式マスタング。右ハンドルの英国仕様をする手もあるのだ。5L、V8のMT車がソソられる

 ちなみに、1980年代~1990年代にかけてチェロキーにも右ハンドルが用意されていたし、フォードの日本撤退直前に発売予定だったマスタングにも右ハンドルがあった。さらに現行モデルのコルベット日本導入時は右ハンドルが用意され、300台が即完売。

 GMジャパンは、日本市場において2026年末までにBEV3車種を投入する計画を立てており、その第一弾として2025年3月からミドルサイズSUVのリリック、2026年にはコンパクトSUVのオプティック、3列シートSUVのヴィスティックを発売する。GMの本気が感じられる全車右ハンドル、そしてCHAdeMO(チャデモ)規格の急速充電器にも対応するというから見ものである。

 ただし、かつてヤナセがインポーターだった頃と違い、どこにいけば買えるのかわかりにくいし、そもそも販売拠点が少ない。重要なポイントはビッグ3が日本で売る気がないこと。たいした市場ではないからと、日本に寄り添う姿勢を見せていないからだ。

フォードF-150のサイズは?

フォードF-150レギュラーキャブ
フォードF-150レギュラーキャブ

 トランプ氏が日本売れると、声高く挙げたフォードF-150は、米国ピックアップトラック市場で48年間ベストセラー1位を誇るフルサイズピックアップトラックでガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、電気の4種類のパワートレインを用意している。

 1回でもロザンゼルスを訪れたことがある人ならわかると思うが、道幅は広いがガタガタな路面が多く、東京都心部のような狭すぎて曲がるのに苦労するところはほとんどない。道がクルマを作るというが、アメリカ車はアメリカに合ったクルマしか作っていないというのが正直な感想。

 かれこれ30年以上前に「なぜ日本でピックアップトラックが売れないのか?」という企画を掲載したことがある。垣根やブロックで家を囲う日本人からしてみると(一般的なアメリカの一軒家の前は芝生)、大型スーパーで1週間分の食料品を買って荷台に積む文化は、キャンプや車中泊などが流行し、コストコが人気になっている今の日本でもまだまだ多くはない。ピックアップはまだまだメジャーにはなりきれないのである。

フォードF-150スーパーキャブXLT(5人乗り)
フォードF-150スーパーキャブXLT(5人乗り)

 とはいえ、数十年ほど前よりはピックアップトラックの人気は高まってきたと肌で感じる。2017年9月~204年1月まで日本で販売されたハイラックスは最大年間1万1080台(2023年)を販売。

トヨタハイラックス(8代目、2017年登場)。2017年に日本に導入されたハイラックスの新車は2024年10月に販売休止。ボディサイズは全長5340×全幅1855×全高1800mm
トヨタハイラックス(8代目、2017年登場)。2017年に日本に導入されたハイラックスの新車は2024年10月に販売休止。ボディサイズは全長5340×全幅1855×全高1800mm

 2024年2月から販売されている三菱トライトンは2025年1月までの12カ月間累計の販売台数は3978台。 月平均約332台で、目標とする月200台の1.5倍強の水準で推移している。

 しかし、年間76万5649台販売するピックアップトラックNO.1であるフォードF-150が、日本で売れるかは別問題である。

フォードF-150スーパーキャブXLTインテリア
フォードF-150スーパーキャブXLTインテリア

 なにしろデカすぎるのだ。

 現行フォードF-150は2020年6月にフルモデルチェンジした14代目。2ドアのレギュラーキャブ、2+2ドアの5人乗りの2ドアのエクステンドキャブのスーパーキャブ、4ドアのスーパークルーの3種類あり、荷台の長さも5.5フィート(167cm)、6.5フィート(198cm)、8フィート(244cm)を用意。

 2ドア5人乗りのスーパーキャブ(5.5フィートの荷台)のボディサイズを見ると、全長5893×全幅2030(ミラーを除く)×全高1912mm。4ドア5人乗りのスーパークルーは全長5885~6185mm、2ドアのレギュラーキャブでも全長5311~5784mmもある。

4ドア5人乗りのフォードF-150スーパークルー
4ドア5人乗りのフォードF-150スーパークルー

 ちなみにトヨタハイラックスはZ、Xグレードで全長5340×全幅1855×全高1800mmだから、特にF-150の全長と全幅がデカすぎる!

次ページは : フォードF-150の燃費は3.5Lのフルハイブリッドでも約11.1km/L

PR:かんたん5分! 自動車保険を今すぐ見積もり ≫

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

GRスターレットは次期型ヤリス!? 2025年に出たクルマをALL CHECK!『ベストカー1.10号発売!』

GRスターレットは次期型ヤリス!? 2025年に出たクルマをALL CHECK!『ベストカー1.10号発売!』

 12月に入り、いよいよ今年もラストスパート。2025年は新型車ラッシュに加え、JMS2025をはじ…