真夏の車内は、たった30分で50℃を超える灼熱空間と化し、発火・破裂・劣化といった重大リスクが一気に高まる。わずかな油断が、愛車の損傷だけでなく、命を脅かす事故にもつながりかねない。今回は、夏場に車内へ絶対に置いてはいけない5つのアイテムを解説。
文/斎藤信二、写真/写真AC
【画像ギャラリー】真夏の車内放置で車両火災も…(7枚)画像ギャラリー車内放置NGアイテム1 スプレー缶──密閉空間での爆発は“ガラスを突き破る”ほど
スプレー缶には、LPG(液化石油ガス)やDME(ジメチルエーテル)などの可燃性ガスが高圧で封入されている。これらは沸点が-42℃〜-25℃と極めて低く、炎天下の車内では缶内の圧力が急上昇し、破裂事故につながる。
JAFの実験では、外気温35℃の条件下で車内に放置されたスプレー缶が爆発。その衝撃はフロントガラスを突き破るほどだった。
破裂時には金属製の缶が鋭利な破片となって飛び散り、周囲の人にケガを負わせるおそれもある。さらに、漏れ出た可燃性ガスがわずかな火種に反応すれば、車両火災へと発展する可能性も否定できない。
特に注意すべきは、制汗スプレーやスプレー式化粧品、消臭剤、殺虫剤といった「日常使い」の製品。うっかり放置してしまいがちだが、夏場の車内ではそれが致命的になることも……。
車内放置NGアイテム2 ライター・乾電池──小さな火種が“密室火災”を引き起こす
ガスライターは、内部に充填された液化ガス(おもにブタン系)が高温環境で急激に膨張し、破裂やガス漏れを引き起こす危険性がある。
直射日光が差し込むダッシュボード上などに放置すれば、本体温度は瞬く間に上昇し、圧力の限界を超えて爆発するおそれがある。
特に使い捨てライターは着火部などに金属パーツを含むため、熱を吸収しやすく、内部の温度も急速に上昇しやすい。炎天下の車内に放置されると、ライター内部のガスが膨張し、容器の強度を超えた圧力がかかることで破裂やガス漏れが発生するおそれがある。
漏れ出したガスが車内に充満した状態で、静電気や電子機器のスパークなどに引火すれば車内は一瞬で火の海と化してしまう……。
乾電池も、うっかり車内に放置すると予想外のトラブルを招く。アルカリ電池やマンガン電池は通常の使用環境では安全性が高いが、高温下で金属と接触した場合にはショートによって発熱し、液漏れや発火につながることがある。
なかでもリチウム電池は、構造がデリケートで熱に弱い。高温にさらされると、膨張や内部ショートを引き起こしやすく、突発的に発熱・発火する事故が多く報告されている。
また、使用済み乾電池にも注意が必要だ。使い切ったと思っていても、わずかに電気が残っていることがあり、金属と接触すると発熱・発火の原因になることがある。また、長期間放置された電池は内部が腐食し、液漏れや異常発熱を引き起こすこともある。
車内放置NGアイテム3 電子機器──“熱暴走”は制御不能の連鎖反応
前項でも取り上げたスマートフォン、モバイルバッテリー、ワイヤレスイヤホンなどに搭載されるリチウムイオン電池は、高温環境に非常に弱く、特に炎天下の車内では「熱暴走」と呼ばれる危険な現象を引き起こすおそれがある。
熱暴走が発生すると電池が発熱を続け、内部温度が数百℃に達して爆発するケースも。 特に、充電中は電池に負荷がかかりやすく、異常な発熱や膨張、最悪の場合は爆発につながるケースもある。そのため、短時間でも充電したままクルマを離れるのは非常に危険だ。
東京消防庁の火災統計によれば、2024年(令和6年)上半期(1〜6月末)では、リチウムイオン電池関連の火災は107件発生しており、前年同期(79件)と比べて約34.5%増加している。
モバイル機器の高性能化とバッテリー内蔵製品の増加に伴い、こうした火災リスクは今後も増加傾向にあるとみられる。
ちなみに、大人気のハンディファンにもリチウムイオン電池が内蔵されているため、炎天下の車内で熱暴走を起こすリスクを秘めているので車内放置は厳禁だ。










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