即戦力間違いなし!? スズキ eビターラが想像以上の実力と完成度

即戦力間違いなし!? スズキ eビターラが想像以上の実力と完成度

 2025年6月、スズキ eビターラの試乗会が袖ヶ浦フォレストで行われた。良品廉価で知られるスズキが造る初のBEVとあって、中国のBEV攻勢に立ち向かえるのではないかと勇んで出かけた鈴木直也氏。eビターラはいかがでしたか?

※本稿は2025年7月のものです
文:鈴木直也/写真:平野 陽、スズキ
初出:『ベストカー』2025年8月26日号

【画像ギャラリー】完成度は申し分なし!! あとは価格か!? 2025年度内には日本登場予定のスズキ eビターラ(24枚)画像ギャラリー

大いに注目すべきニューモデル!!

2025年6月に試乗会が行われたスズキ eビターラ。スズキ初のBEVとして登場する
2025年6月に試乗会が行われたスズキ eビターラ。スズキ初のBEVとして登場する

●スズキ eビターラのポイント
・スズキ初のBEV
・インド・グジャラート工場で生産
・前輪駆動と4WDを設定
・BEV専用HEARTECT-eプラットフォームを新開発
・航続距離は400km以上、450km以上、500km以上の3パターン
・欧州、インドに投入。日本は2025年度内に発売開始

 i-MiEVとリーフで世界に先行しながら、その後は失速した日本のBEVづくり。美味しいところは全部テスラに持っていかれた感じで、大手メディアを中心に「日本メーカーは電動化に後れをとった」という批判記事が目立った。

 ここ1、2年ほどは世界的にBEVの普及が踊り場にさしかかったため、その反動で「やっぱ日本は正しかったんだ」みたいな声が大きくなったが、それもちょっと短絡的と言わざるを得ない。

 長期的に見ればクルマの主力が電動車になるのは必然で、そうなった時に勝利を収めるのは「お手頃価格で実用性の高いBEV」を造ったところ。ガソリンで走ろうが電気で走ろうが、日本が勝利する方程式は「良品廉価」なクルマ造りしかないのだ。

 そういう意味で、スズキが初めて造るピュアEV、eビターラは大いに注目すべきニューモデル。スズキならなんか面白いことをやってくれるんじゃないか? そんな期待を抱いて袖ヶ浦フォレストの試乗会へ向かった。

 というわけで、まずはeビターラの良品廉価ぶりをじっくりとチェックしてみた。

完全新設計のBEV専用プラットフォーム

4WDは走行中に前後の緻密な駆動力配分を行うALLGRIP-eを採用している
4WDは走行中に前後の緻密な駆動力配分を行うALLGRIP-eを採用している

 いかにもSUVっぽいスタイリングは、いわゆる“ラギッド系”といわれるゴツゴツしたデザイン。2700mmという長めのホイールベースによって、パッケージングはなかなか良好。

 後席レッグルームにはかなり余裕があり、室内の静粛性とゆったり感はスズキ車随一といっていい。内装の質感もBセグアベレージ以上といった印象だ。

 重要なポイントは、eビターラはこれまでのいかなるスズキ車とも異なるアーキテクチャで造られていること。

 プラットフォームは、完全新設計のBEV専用プラットフォーム「ハーテクトe」で、前ストラット/後マルチリンクのサスペンションも新しい。リアサスのレイアウトはバッテリースペースを避けた独特なレイアウトが興味深い。

 電動系ではバッテリーはBYD系のリン酸鉄リチウムイオンで、49kWhと61kWhの2種類を用意。eアクスルはトヨタ系のブルーイーネクサス製(61kWhモデルで128kW)。4WDモデルはこれに48kWのリアモーターが追加される。

 走りについては、静粛でスムーズな走行感がまずは印象的だった。

 レスポンスの穏やかなモーター制御によって体感的にはあまりパワフルさを感じないが、例えば4WDモデルで、タイトコーナー立ち上がりで思い切り踏んでみると、電動4WDらしい高効率なトラクション能力を発揮して、スルスルっとスピードに乗っていく。

 FWDにも試乗したが、体感的に走りのクオリティが高く、ハンドリングのバランスがいいのは4WDのほう。

 4WDで車重約1.9tというのはスズキ車としてはかつてない重量級だが、電動車らしくドライバビリティはむしろ軽快といっていい感覚。アッパーB〜CセグのBEVとして、全体としてとてもバランスよくまとまっている。

次ページは : 日本のBEV価格破壊はまだ先か?

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