セダン・クロスオーバー・スポーツ・エステートと、4種が揃った現行型クラウン。はじめは違和感も大きかったが、今ではそれぞれがクラウンらしさを追求しながら、クラウンの新しい価値を想像している。長いクラウンの歴史を紐解いていくと、印象的なデザインでクラウンらしくないと言われていた世代がもうひとつある。ピンククラウンでも有名になった、14代目クラウンを振り返っていこう。
文:佐々木 亘/画像:トヨタ、ベストカーWeb
【画像ギャラリー】意外と個性の塊なんだよ! しっかりしたクルマだからこそできる冒険! カラフルクラウン!(12枚)画像ギャラリー生まれ変わったクラウン
2012年12月に登場した14代目クラウン(210系)。キャッチコピーは「CROWN Re BORN」であり、クラウンの生まれ変わりが当代での目的だった。
プラットフォームこそ、12代目のゼロクラウンから3世代続けて同じものが使われてきたが、開発時期がリーマンショック後の景気後退期に重なっていたこともあり、コストダウンの側面からやむを得なかったことだろう。
それでも、商品力という結果から見えれば、プラットフォームのキャリーオーバーは、熟成を進めたプラスの側面の方が大きかった。
全長・全幅は、先代よりも若干拡大。全長4895×全幅1800×全高1450~1460mmとしている。パッケージングを煮詰めて後席の居住性を高めた上で、ガソリン・ハイブリッドモデル共にトランクスペースが拡大されているのだ。
14代目クラウンで特筆すべきは、そのデザイン。メイングリルとロアグリルを繋いで、「クラウン(王冠)」をモチーフにした開口部輪郭を特徴とし、クラウンの印象を大きく変えている。特にアスリートでは、稲妻のようにも見えるアグレッシブで特徴的なフロントグリルを作り出し、コンサバなクラウンのイメージを革新的なモノへと変貌させた。
ボディカラーで達成したクラウンの悲願
14代目クラウンの衝撃は、エクステリアデザイン以外にもまだある。中でも特に印象が強いのは、2013年7月に登場したピンク色のクラウンだろう。リボーンピンクというショッキングピンクのようなボディカラーをまとったクラウンの登場には、クラウンファンならずとも度肝を抜かれたはず。
ピンククラウン自体は、210系クラウンの発表会で公開されており、完全にデモカーの雰囲気を纏っていたものだ。これを市販化するとは、誰が想像したことだろう。ロイヤルよりも若いユーザーをターゲットにし、様々なことへ果敢にチャレンジしてきた210系アスリートだからこそできた、一種の遊びのようにも思える。
その後、2015年には空色エディションと若草色エディションという特別仕様車を登場させ、同年のマイナーチェンジではジャパンカラーセレクションパッケージというオプションを設定。茜色や群青、翡翠といった日本ならではの繊細な色域のボディカラーを全12色も用意している。
こうしたクラウンの突拍子もないように見える挑戦は、若年層の興味関心へと繋がっていった。結果として、長年ユーザー層の若返りを狙いながら果たせなかったクラウンの、悲願とも言える若年ユーザー層の拡大に、210系クラウンは成功したのだ。
狙い通りにクラウンは生まれ変わり、新たなステージへと上がっていった。
14代目は最もクラウンらしいクラウン
大人しく保守的、そんなイメージが強いクラウンだが、ニューモデル登場のたびに、革新・若返り・変革と言った変化を求め続けてきたクルマである。そうした意味では、最も狙い通りにクラウンが変わった瞬間は、まさしく210系が活躍していた時であろう。
街中で14代目クラウンを見つけると、その車内では若いドライバーが楽しそうにドライブを楽しんでいる。210系の中古車を探しに来るユーザーも、クラウンの中では若いという。
現行型の4つのクラウンが生まれた根源は、14代目クラウンが果たした若返りと変化によるものだったのかもしれない。登場時、これはクラウンではないとまで言われた14代目クラウンは、歴史の大きな転換点として、そして歴史上最高のクラウンとして君臨し続けることだろう。















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