ついにR35GT-Rの生産が終了してしまった。2007年から18年間の超ロングキャリアとなった史上最長、そして史上最強GT-Rの幕が閉じた。その最後の瞬間にベストカーは立ち会えたのだが、実はちょっとだけ残念な瞬間もあった。スカイラインGT-Rに乗った編集長の思いとはいったい?
文:ベストカーWeb編集長 塩川雅人/写真:池之平昌信、編集部、日産
【画像ギャラリー】キミと同じ時代を過ごせてよかった!! さらばGT-R!! また会える日まで(15枚)画像ギャラリー約4万8000台の生産台数は色褪せない「GT-R」の足跡
GT-Rが終わってしまう。今やベストカーWebの編集長として責を負っている筆者だが、実は元々は違う仕事をしていた。しかし1台の青いクルマが脳裏から幼少期から離れず、お堅い仕事から転職してベストカーの門を叩いた。
そのクルマはR32のカルソニックGT-R。あの縁石を跳ぶように走る写真に心は虜になり、いつしか勝手にスカイライン、そしてGT-Rへの憧れを持つようになった。仕事柄、特定メーカーに肩入れすることはない(ようにしている)のだが、日産ファンというのは隠しようがない事実。
第2世代のGT-RがR34で終わり、第3世代のR35にスイッチした時にはいろいろな思いが世間に広まった。直6を捨てた、そして何より「スカイラインとの決別」は格好の批判材料だった。でもそこには稀代の名エンジニアである水野和敏氏をはじめ、日産の意思があった。
世界にGT-Rを売る。それはいつでも、どこでも、だれでも操れるマルチ・パフォーマンス・スーパーカー。300km/hでも助手席と会話ができる。ニュルブルクリンクで鍛えた体躯と足回り。しかも市販車でタイムアタックまで敢行してポルシェにガチンコで挑んでいく。
これだけの世界観を見るためには「スカイライン」との決別は必然だったし、今日のR35の世界中での評価を見れば「なぜスカイラインじゃないのか」という人はもうこの世界にはいないだろう。
最後の花向けなのに「なぜそうなっちゃうの?」
日産栃木工場で開催されたメディア向けのオフライン式。最後のR35がラインから巣立つ瞬間を公開してくれるという。こんな素敵なイベントをやってくれるなんて感動してしまった(余談だが工場のラインを止めるのは本当に大変な手間がかかる)。
メディアとして、前述したとおりひとりのGT-Rに魅了された人間として、ワクワクして栃木へ向かった。まずはプレゼンテーション。GT-Rアンバサダーの田村宏志さんの軽妙なプレゼンテーションが始まる。
そして初期から開発を担当した松本光貴さんのニュル24時間レースへの参戦などのエピソードも非常に興味深いものだった。
ただ、2007年のGT-R登場時から現在までを振り返る1時間ほどのプレゼンテーションに水野和敏さんへの言及はついぞなかった。ここだけは残念に思える。
登壇者に非があるわけではないと断言するが、イベント全体を通じて伊藤修令さんや渡邉衡三さんの名は出たのに水野さんの実績は最後まで出なかった。まるで何事もなかったかのように筆者には映った。
用意されていたオープニング映像にも水野さんの姿は映らなかったし、投影資料にも出てこない。関係者に聞いたところ当然ながら恣意的に排除したものではないというが、R35となれば「生みの親」でもある水野さんをほんの1行でも触れるべきだったと思う。
ましてや自動車専門メディア以外の一般メディアも入ったイベントだったわけで、あの説明だけでは史実が正しく伝わらないのではないか(あの財政状況下で開発を決定したカルロス・ゴーンの経営手腕も凄かったのだが、さすがにそこは触れにくいのはわかる)。
そんなことを考えるとあの場限りの話ではあるが、開発前史と初期モデルの史実が結果として「違うこと」になってしまったのはもったいない。他の自動車メディアからも「あれ、水野さんは……」という声は聞こえてきたが、自動車に精通した関係者はどこにもぶつけられない違和感を覚えていただろう。
もちろん時間に制約があるなかでの大きなイベントだったことも理解するし、事情があるのもよく理解している。せめてお名前だけでも、と思ってしまうのはGT-R好きの勝手な想いだろうか。せめてものメディアの務めとしてこのような記事を出させていただいた。
余談になるがGT-Rのモータースポーツ実績の紹介で、2011年のFIA-GT1でのドライバーズチャンピオンがプレスリリースから抜けていたのは残念。たしかに地味だけど日産初の世界選手権タイトルだったのよ……。GT500、GT300、そしてS耐など国内レースでもよく頑張ったぜR35!
GT-Rへの敬意というか、愛というか、たくさん詰め込んだプレスリリースだったのでそこだけはもったいないのですよ。





















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