サーキットの狼は手強い獣でもあった
ミウラのスタイリングから想像されるのは、卓越した運動性能とエンジンパフォーマンスだが、実際に運転すると期待とのギャップを感じることが多い。
公道ではサスペンションがしなやかで、不快な突き上げはないが、サーキットではドライバーのセンスが求められる。
高コストなサスペンションを搭載しているものの、コーナー手前でしっかり減速し、適切に進入しないと安定した走行が難しい。ステアリングは遊びが多く、タイヤのグリップ感を掴むにはミウラ特有の癖を掴むことが必要だ。
横置きV12エンジンの重量バランスの影響で、旋回性能はオーバーステア傾向が強い。安定したコーナリング姿勢を保つには、ドライバーの技量が試される。
ヒール&トゥを多用するサーキット走行では、アクセルとブレーキペダルの間隔が狭いため操作は比較的容易だ。
しかし、ブレーキ性能には若干の不安がある。現代のマスターバックのような補助装置がないため、減速はドライバーの踏力に依存する。タイヤとの兼ね合いもあり、限界ギリギリでコーナーに突っ込むのは避けたほうが賢明だ。
それでも、車両重量が約1トンと軽量なため、加速感は魅力的。キャブレターの調子がよければ、息継ぎなくスムーズにエンジンが回転し、非常に楽しい走りが味わえる。トルクも充分で、全開加速ではスポーツカーらしい爽快感が得られる。
いま改めて問う「ミウラ」の存在意義
ミウラのポテンシャルは現代のスーパーカーと比べると高くないうえに、スーパースポーツカーとしてのポテンシャルでも現代のスポーツカーに劣る。
だが、その魂、造形、哲学どれを取っても“スーパーカーの原点”として現在の評価につながっている。そして、このミウラがなければ、1974年に登場したカウンタック LP400もなかったのかもしれない。あらゆるスーパーカーの血統に、その面影が今も息づいている。
Miura P400S エンジン解説
大きなV型12気筒エンジンを横置きで搭載していることが、必ず話題に上がるポイントだ。これはトランスミッションとデファレンシャルを一体化することで実現したレイアウト。
このエンジンは、ランボルギーニの市販車第2号である「400GT」から受け継がれたものだが、設計を手がけたのはジオット・ビッツァリーニ。フェラーリ 250GTOなどを開発した、V型12気筒エンジンのスペシャリストである。
P400Sは、3.9L・V12エンジンから最高出力370ps/7000rpmを発揮する。初代P400からは圧縮比を高め、インテークマニホールドの径を拡大。これにより最高出力は20馬力アップし、最大トルクも39.5kgmへと向上した。カタログ上の最高速度は285km/hとされている。
また、インダクションボックスは火災の原因とされることもあり、これを廃止してウェーバー製ファンネルに交換された個体も多く見られる。



コメント
コメントの使い方車高1.1mね。
スーパーカーブーム世代の少年たちには、実物を見られなくても、スペック表を眺めて数値を覚えていた者も少なくはないはず。
ロータス・ヨーロッパなんか、車高1080mmだろ。
ミウラやカウンタックも同じくらいペッタンコだけど、どれも実物を目の前にすると、その低さには驚くもんだ。