「道路整備などの財源確保のため」という名目で1974年に導入されたガソリン暫定税率。それから50年以上も「暫定」が続いているとは呆れるが、選挙を経て、いよいよ廃止されそうな雰囲気となってきた。今度こそ本当に廃止されるのか?
※本稿は2025年8月のものです
文:井元康一郎/写真:トヨタ、スバル、日産、ホンダ、マツダ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年9月26日号
激しさを増す与野党のせめぎ合い
●ガソリン価格の構成(1Lあたり174円で想定)
・本体価格:102円
・本則ガソリン税:28.7円
・ガソリン暫定税率分:25.1円
・石油石炭税:2.04円
・温暖化対策税:0.76円
・消費税:15.9円(ガソリンの消費税は本体価格だけではなく、上記の諸税すべてにかかっている。「二重課税だ」と言われるのはこのため)
自動車用ガソリンに本来より高い税金をかける「暫定税率」を巡り、与野党の攻防が激しさを増している。何はともあれ廃止ありきの姿勢を示す野党に対し、与党は暫定税率廃止で税収が減るぶんの代替財源を確保できればという条件を付けて対抗と、議論の行方は予断を許さない。
暫定税率とは、燃料油にかけられる税金が道路の整備やそれに付帯する事業のみに使う「道路特定財源」であった1974年に実施されたもので、税率は本来の税率の約2倍。
道路整備が進み、道路特別会計が余るようになるにつれて、暫定税率がいつまで続けられるのかという議論が起こってきた。しかし、2009年に道路特定財源が一般財源化され、暫定税率は形式上廃止されたものの、税額の上乗せは「当分の間税率」として丸ごと温存され、今日に至っている。
その暫定税率の改廃論議が今になって沸騰しているのは、2024年12月に与党である自民党、公明党の両党が発表した2025年度の税制大綱に暫定税率の廃止を盛り込んだこと。
これはもちろん自公政権の本意ではなく、背景には2024年の衆議院議員選挙に敗北したことで税制大綱に野党の要望を盛り込まざるを得なくなったという事情がある。
国民の生活費増大を抑止することで人気を上げたい野党と、税収を少しでも上げて財政健全化を果たしたい与党では利益が完全に相反する。国会論戦や与野党協議が紛糾するのはある意味当然だろう。
50年以上も「暫定」が続くのは異常
燃料油価格の低下がエネルギーの浪費につながるのではないかと懸念する向きもある。たしかに燃料価格の高騰はクルマの使用をなるべく控えるという心理を喚起し、CO2削減効果を得られる可能性はある。
しかし、自公政権が税収減の代替財源確保を絶対に譲れない線として主張することや、税率の高さをCO2排出に対する実質的なペナルティとして考えることは、暫定税率廃止論議の本筋からはおおよそズレている。
本来テーマとすべきは、1974年から50年以上も本則税率の2倍の税金を“暫定”で取り続けてきたこと自体が異常であり、遅まきながらそれを是正するということ。暫定税率の廃止は減税でも何でもなく、いわれなき課税の解消なのだ。
与党が主張する財源論だが、今の日本はインフレの亢進で消費税をはじめ各税金の税収が飛躍的に伸び、過去最高を記録している。俗に言う「インフレタックス」と呼ばれている税収増だ。それを背景に2025年度の一般会計も過去最高の115兆円と、まさにジャブ漬け行政と化している。


















コメント
コメントの使い方代替財源云々言う前に、ヤル事があるだろう。現在、税金が何処にどれだけ使われているか が、そもそも不透明な上、無駄に税金を使っていないか?を精査すれば、恐らく代替財源など必要無くなる。与党はその辺りをシッカリと国民に説明すべきで、「減った分、増やします」なら子供でも出来る。