学生が車両製作技術を競う学生フォーミュラ。フォーミュラと名がつくものの、決して速さだけを競うものではなく、車両の安全性、そしてレギュレーションに沿った車両製作ができているかを評価される。まさにクルマ作りの甲子園というイメージだ。2025年も日産京都自動車大学校が挑んでいるが、その結果はほろ苦いものだった。
文/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】悔し涙は嬉し涙に!!! 最先端技術を学生が作り上げる学生フォーミュラを知る(24枚)画像ギャラリー順調な滑り出しと昨年を上回る審査結果
学生フォーミュラ。全国の自動車整備専門学校、大学などが挑む日本最大の競技会だ。前述したが「フォーミュラ」と名はついているものの、決してスピードだけを競うものではない。車両がレギュレーションに合致しているか、そしてその車両の再現性まで問われる。
簡単にいえば自動車メーカーの社内でプロジェクトチームが決裁をとり、予算を確保し、そして法規対応をして、どのような車両設計をするのか。それと似た要素が学生フォーミュラにギュッと詰まっている。
そして今年も挑戦を続ける日産京都自動車大学校の「NATCK-F」チームの姿が、学生フォーミュラの現場である愛知県の愛知スカイエクスポにあった。
まずは車検、そして静的審査という項目がある。車検は文字通りだが、NATCK-Fが出場するEVクラスでは降雨を想定したテストまで実施される。規定値に収まったマシンメイクはもちろんのこと、安全性の管理についても徹底的に追求される。
そして静的審査ではコストレポート、デザインレポート、そしてプレゼンテーションなどで審査が行われる。好き勝手にマシンを組み上げていくわけではなく「NATCK-F」が、もしベンチャー企業だったらと仮定して、マシンの加工費、そしてその収益性などまで審査対象となる。
学生に聞けば「先輩からのアドバイスもたくさんもらって、質問される事項などを聞いて、入念に詰めていきました。”学生レベルだからこれくらいでいい”は通用しないので、きっちりとした書類のレベルが求められます。車両作りと同じくらい大変な審査でした」。
卒業した先輩方からのアドバイスも非常に有益なもので、やはり現役の学生にとっても先輩たちの実績を踏襲して、さらに自己ベストを更新してかなければという自負が大きい。老舗の鰻屋のタレと同じで、過去の成分にイマを継ぎ足して継ぎ足して、今現在がベストと言える必然がある。
もちろん昨年以上の点数でクリアした。
シケインを超えてからのシャットダウン
そして肝心な動的審査。マシンの動作をチェックする審査になるが、ここがかなり厳しい関門となる。理論上は動作に問題がないと分かっていても、実際に路面との摩擦で駆動部には負荷がかかることもあり、動かしてみないとわからない部分だ。
今回は降雨予報もあったためにマシンのプログラムをレインモードに変更していたという。しかし急遽シャットダウンしてしまうという症状に見舞われた。シケインを通過すると段々とスローダウンしてしまう。
フェールセーフが効いた状況で動くよりも止まることを選ぶのは自動車の鉄則。しかし今回ばかりはその機能が誤作動を起こしたという。CAN通信のエラーと推測はできたものの、現場では部品の交換などの必要性も考えるとその後の走行は断念せざるを得なかった。
担当が現場に到着した時点ではすでにマシンは不動。学生は気丈に振る舞ってくれたが、悔しくないわけはないだろう。
「情報共有ひとつ取ってもまともにできなかった。そういうことの積み重ねがあると思う。でも現場にくるとグッと団結は増えた。もう少し車両完成を早い時期から進めて、走り込める時間があればよかったのに。あとは後輩に託して、今年の活動は終わります」。
リーダーが笑顔で本音を語ってくれた。時に極限を求められる現場は過酷だ。流した涙には後悔、そして「たら・れば」しかないはず。自動車開発のプロだって失敗を繰り返していくのに、学生に与えられた時間は多くない。
トッド・スキナーというロッククライマーが残した言葉にこうある。
「山を低くすることはできない。だから自分を高めなければならない」。
来年の挑戦も大いに楽しみだ。



























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