トヨタ「RAV4」、トヨタ「ライズ」/ダイハツ「ロッキー」、スズキ「ジムニー」「新型ハスラー」、ダイハツ「新型タフト」と続々と発表されるSUV、またはSUVテイストの軽自動車。
それらに共通しているのは、悪路走破性の高さを感じさせる、ハード系のデザインであることだ。
ほんの少し前までは、トヨタ「C-HR」「ハリアー」やマツダ「CX-5」、日産「エクストレイル」のような、泥のにおいを感じさせない、都会派のスタイリッシュ系SUVが人気だった。それがなぜ急に、ハード系の花盛りになったのだろう?
本稿では、自動車評論家・清水草一氏の視点からその理由を考察する。
文/清水草一
写真/TOYOTA、SUZUKI、DAIHATSU、CADILLAC、編集部
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■日本だけでハード系人気!? 世界はいまだスタイリッシュ系が全盛
まず再確認したいのは、それらハード系のスタイルをまとったSUVたちが、どの市場に向けて開発されたのかということだ。RAV4とジムニー(シエラ)を除くと、国内向けモデルである。
なにせ軽自動車は日本国内専用。ライズ/ロッキーも、軽のプラットフォームをベースに、ダイハツが開発した国内向けの小型SUVだ。いまや日本を除くと、小さいクルマの需要は非常に小さくなっていて、軽はもちろんのこと、ライズ/ロッキーサイズでも、海外需要はあまり見込めない。
ジムニーは超本格派のクロカン4WDで、かなり特殊な存在だ。その特殊なクルマが、いまだに納車待ち約1年というのだから異常だが……。
一方、海外に目を向けると、SUVは都会派のスタイリッシュ系デザインがほとんどを占めている。
北米や中国では、もはや乗用車販売の7割がSUV系というほど普遍化していて、SUVは最もポピュラーな乗用車のスタイル。ごく普通の乗用車としてのマーケティングが行われ、その結果、そのほとんどが都会派のスタイリッシュ系デザインになっている。
実際、輸入SUVのデザインをざっと見渡すと、ハード系はメルセデス「Gクラス」とジープ「ラングラー」だけ。どちらもジムニー同様、超本格派クロカン4WDで、一般的なSUVとは一線を画す存在だ。そして、そのどちらも日本では異常なほど人気がある。
国産メーカーも、海外で生産あるいは輸出するSUVは、大部分がスタイリッシュ系だ。よって日本車も、輸出を前提として開発している中・大型SUVは、ほとんどがスタイリッシュ系。それが前述のC-HRやCX-5、エクストレイルなどに当たる。
ところが、RAV4も間違いなく全世界向け。なにせSUV世界販売ナンバー1の座を争うモデルだけに、発表されたのも北米が最初で、今年から中国での販売も始まる。実は、SUVの世界戦略車がハード系デザインをまとっている例は、RAV4をおいてほかにない。つまりRAV4のデザインはかなり冒険的かつ、例外的な存在なのである。
RAV4がなぜこういうデザインになったかは不明だが、背景には、北米におけるピックアップトラックの絶大な人気があると推測される。
ピックアップトラックは、どれも極めて強そうなデザインを採用している。RAV4のデザインは、トヨタの誇るランクルと、ピックアップトラックの中間的なデザインイメージで、トヨタとしては、そのニッチに狙いをつけたのではないだろうか。そして狙いは当たった。
加えて、こういうハード系デザインは日本で人気があることを見越し、思い切って導入したところ、それも当たった……という流れだ。
これらの状況から判断すると、ハード系デザインのSUVがブームになっているのは、日本だけの特殊な現象と言える。では、いったいなぜ、日本でだけハード系デザインのSUVが人気なのか?
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