最高速325km/hの実力
最終コーナーを3速で進入してメインストレートに入ったところで、アクセルを床まで踏み込み4速にシフトアップ。空気をものともせずに美爆音とともに軽やかに加速。
5速に入る頃にはメーターは軽く240km/hを超える速度域に突入。この速度域でも空力性能の優位性による抜群の安定感には驚かされた。カタログ値の最高速325km/hも決してブラフではなさそうだ。
エンジンのポテンシャルに感心していると、あっという間に下りながらの緩やかな左コーナーにさしかかる。アクセル抜き、次の右コーナーの手前でフルブレーキングと共にシフトダウン。すると強烈な減速Gが身体を襲う。
F50のブレーキは大径クロスドリルド・ベンチレーテッドディスクが採用され、サーボアシストを持たない仕様。ドライバーの踏力で効きが変化し、進入時のボトムスピードを自在にコントロールできる。旋回Gが残っていても的確に速度が落とせるのは、車体の前後バランスと優秀なサスペンションの賜物だ。
時代を超える価値
発売当初の価格は約5000万円だったが、限定生産ゆえに市場では数倍のプレミアムがついた。近年の中古価格は、9000万円から1億円を超え、今なお高騰を続けている。
個人的な見解だが、フェラーリが真のスーパーカーメーカーとして成熟したと感じたのは、このF50が初めてだ。
わずか2年の生産期間、限られたオーナーに向け淡々と造られた3代目スペチアーレは、後世に語り継がれるスーパーカーであり、跳ね馬の情熱と技術が凝縮されたフェラーリは時代を超えて輝き続けることだろう。
Tipo 040型改 エンジン解説
フェラーリF50のエンジンは、F1マシン「F92A」に搭載されていた自然吸気V型12気筒を市販車向けにデチューンしたもの。
ジュラー鋳鉄製ブロックや鍛造アロイピストン、チタニウム製コンロッドなど、市販車ではまず使われることがなかった贅沢な部品を採用し、高回転までスムーズに回るエンジンに仕上げ、レースマシンさながらの仕様となった。
総排気量は4698cc、ボア×ストロークは85.0mm×69.0mm、圧縮比は11.3:1で、最高出力520PS/8500rpm、最大トルク48.0kgm/6500rpmを誇る。過給機付きエンジンとは異なり、扱いやすさとトルク感のある瞬発力が特徴だ。
ミドシップ(MR)レイアウトによりエンジンを車体中央に搭載。レブリミットまで回した際のエキゾースト音は、スクーデリア・フェラーリの妥協なきこだわりが感じられる、官能的で「美爆音」と称したくなるサウンドだ。



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