ナカニシ自動車産業リサーチ・中西孝樹氏による本誌『ベストカー』の月イチ連載「自動車業界一流分析」。クルマにまつわる経済事象をわかりやすく解説すると好評だ。第48回となる今回は、いよいよ開催が迫った「ジャパンモビリティショー(JMS)2025」について。アナリスト視点で見る今回の「注目ポイント」とは?
※本稿は2025年10月のものです
文:中西孝樹(ナカニシ自動車産業リサーチ)/写真:トヨタ、SCSK株式会社
初出:『ベストカー』2025年11月26日号
最大の注目はトヨタ自動車のブランド再定義
ジャパンモビリティショー(JMS)の開催が迫っています。一般公開は10月31日からで、各社から続々とブース出展の概要が発表されています。そのプレビューと見どころをアナリストの視点からお伝えします。
JMSといえば、 2023年に従来の自動車ショーから脱却し、クルマにとどまらない産業横断型の「モビリティ・プラットフォーム」へと再設計されました。
来場者数は111万人に上り、一定の成功を収めました。しかし、産業横断のモビリティ共創の試みが注目を集めた一方で、新型モデルやプロトタイプの発表数は少なく、消費者への訴求力という点では課題が残りました。
今年は500社以上の企業が参加します。多様な産業が共創し、モビリティの概念を拡張することは、国内自動車産業の競争力を支える重要な取り組みです。
ただし、モビリティ体験に「ワクワク感」をもたらし、需要を喚起するのはユーザー自身です。来場者が未来への期待を感じ取れるかどうか、そこが今年のJMSの注目すべきポイントだと考えます。
その観点において、筆者の最大の注目はトヨタ自動車のブランド再定義にあります。
トヨタ、レクサス、ダイハツ、GRの4つに加え、「センチュリー」という最上位の高級車を独立したブランドとして、5つのブランドを再定義します。
それぞれにブランド価値を体現するコンセプトモデルがティザー公開されており、同社の特設サイトにあるセンチュリーのクーペと、まるで月面探査車ルナクルーザーのようなレクサスLSには、「ワクワク感」を超えた強烈なインパクトを感じさせるものがあります。
JMSが担う産業横断型の連携
2年前のJMSにおいて最大の課題は、出遅れたEVの挽回戦略でした。2年が経過した今年のJMSでも、各社が戦略を具現化した生産モデルの展示を通じて存在感を示すでしょう。ただし、EVシフトは先進国では大幅に遅れ、各国の環境規制も後退しています。ホンダはEV事業で6500億円という巨額の赤字を今年度に計上する状況です。
しかし、この取り組みを止めるわけにはいきません。EVシフトは先進国では停滞しても、中国では流れが一段と加速し、ソフトウェアの強みを背景に世界市場へと打って出ています。国内メーカーは、これに対抗しなければならないのです。
ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)と呼ばれる、ソフトウェアが主導し、人工知能(AI)や高度な半導体を搭載した新興ブランドが中国で台頭しています。また、自動運転やデジタル化が進んだコックピットが世界で急速に進化しています。
ハードウェアファーストを中心とした垂直統合的な従来の思考から脱しきれていない国内自動車産業は、SDV化で先行する中国EVメーカーに、中国市場にとどまらず多くの市場でシェアを奪われています。
この閉塞感を打ち破るためのひとつの打ち手こそ、JMSが担う産業横断型のモビリティプラットフォームです。いわば、クルマの周辺領域の進化とクルマの連携であり、これは日本の強みの領域で勝負する戦略として正しいと考えます。
ただし同時に、SDVとしてのクルマ個体の進化はいまだ出遅れており、デジタルネイティブの若い世代に刺さる「ワクワク感」の提供という点でも、依然として遅れていると言わざるを得ません。













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