中古車市場において「MT」車の値段が上がるケースは多い。しかし、値段が上がるといっても一部の超人気車を除けば、大抵は相場より20〜30%ぐらいだろう。しかしアメリカでとあるSUVのMTが異常な値上がりをしたのだという。ポルシェのSUV、カイエンのMT車である。
文:古賀貴司(自動車王国) 情報元:Cars & Bids
【画像ギャラリー】うわ、ほんとにMTじゃん!! もう見られないかもなカイエンMTの全貌がコレ(6枚)画像ギャラリー決してコンディションは良くないカイエンなのに…
2025年9月5日、アメリカの中古車オークションサイト「Cars & Bids」で前代未聞の出来事が起きた。
2014年式ポルシェ・カイエンのベースグレードが12万5500ドル(約1900万円)で落札されたのだ。この金額は新車の911カレラを購入できる水準である。同世代のカイエンの一般的な中古車相場は1万2000〜4万ドル程度。
今回の落札価格は、相場の上限を8万5000ドル以上も上回る異常値となった。この驚異的な価格は、6速マニュアル・トランスミッションを搭載していたことにあろう。
走行距離は6万4600マイル(約10万4000km)と年式相応。低走行、6速MTなら少しはまだ納得できるが…。
仕様はジェットグリーンメタリックの外装色に、プレミアムパッケージプラスが装備されたモデル。
パノラマサンルーフ、前席ベンチレーション、ヒーテッドステアリング、レーンチェンジアシストなどの豪華装備は備わっているが、特筆するような仕様でもないだろう。
マニアックな物件の価値が上がりやすい時代に
ポルシェ・カイエンにマニュアル・トランスミッションが存在したことを知る人は少ない。初代カイエン(955/957型)と第2世代(958型)のベースグレードV6モデルに、2011年から2014年まで6速マニュアルがオプション設定されていたのだ。
初代のGTSグレード(2008年〜)にもマニュアルが用意されていたが、2014年を最後に廃止されている。
ポルシェが年々マニュアル・トランスミッションの設定を縮小していた時期の産物であり、製造台数は極めて少ない。
正確な生産台数は公表されていないが、現在アメリカ全土で売りに出されている第2世代のマニュアル仕様カイエンは、片手で数えるほど。
日本では、この物件ほど高値物件はまだ目にしたことがないが、流通台数は極めて少ない。
興味深いことに、今回の売主は4年前にBring a Trailerで5万1000ドルでこの車両を購入していた。
つまり4年間で価値が約2.5倍に跳ね上がったことになる。中古車を4年間乗り回して価値が倍以上になるなど通常、カイエンでは考えられない現象だ。
比較として、2023年には同様のマニュアル仕様カイエンが4万350ドルで落札され、2024年にはCars & Bidsで3万3,500ドルで取引されている。
ちなみに事故歴があるものは2万4250ドルだった。今回の12万5,500ドルという価格がいかに突出しているかが分かる。
Cars & BidsやBring a Trailerといったオンラインオークションの普及により、希少車の価値が再評価される機会が増えた。
従来なら地域のディーラーで埋もれていた特別仕様車も、全世界のコレクターの目に触れるようになったのだ。








コメント
コメントの使い方