そんなにたくさん売れたわけじゃない。でも何年経ってもみんなが覚えているクルマ……今回はバブル終焉から随分経った日本に突如現れた超お手軽価格の大衆向け2人乗りオープンスポーツ、トヨタ MR-Sをご紹介。こんなの二度と出ないぜ!?
※本稿は2025年11月のものです
文:小沢コージ/写真:茂呂幸正
初出:『ベストカー』2025年12月10日号
このヒラヒラ&踏ん張り感なんなの!
つくづくニッポンは宝の国よ! そう、世にも希な、大衆向け2人乗りフルオープンコンパクトミドシップスポーツのMR-Sだ。
そもそもロードスターやビートなど、安く楽しくお客が喜ぶだけで全然儲からないスポーツカーが自慢の我が国。
それだけでもエライのに、より儲からないバブルも弾けきった1999年に登場。セリカ用1.8L直4や、一部にヴィッツ用コンポーネンツを使うとはいえ、ミドシッププラットフォームは専用設計。
かつてのハイパワーにも耐えられるMR2とは違う、ノンターボ用の軽量ボディで初期は全車1トン以下。価格も200万円以下と超お手軽で、まさに走る国宝だ。
最大の魅力は全長4m弱×全幅1.7m弱の軽くて楽しい5ナンバーボディ。ザ・ミドシップたる風格で、一部プアマンズボクスターなどと揶揄する声もあるが、エッジの効いた直線的ボディはほかのどれにも似ていない。
さらに乗ればノーズ短く、ウィンドウも近く、クルマに乗るというより着るような人馬一体感はロードスターに匹敵。いや、鼻先一体感は超えている。
特にダイレクトでタイトなステアフィールはFF&FRでは絶対に得られない味わいでこれだけでもMR-Sを買う価値アリだ。
確かにエンジンパワーは140psと普通だし、ターボ付きMR2のようにパワーを上げてサーキットをガンガン走るような武闘派でもない。
だが、街なかをクルマ好きのみならず、運転苦手な人も軽いクラッチと素晴らしいボディ見切りで、普通にヒラヒラと走れる特性は貴重。小沢的には、世が世ならロードスターと並ぶ大衆オープンの代名詞になれたと確信する。
ロードスターよりビミョーに本格的!?
ボディの作りとタッチもナイスだ。高級なソフトパッドこそ使われてないが、スッキリした水平基調のインパネは見やすく使いやすいし、メーターはスポーツカーらしくカッコイイ3連モノ。
初期5MTで、後期6MTとなるマニュアルギアボックスは、クルマ好きを考えたコキコキ入るフィールを持っている。軽いクラッチもあって操作もラク。
屋根の出来も素晴らしく、布幌は最新ロードスターも顔負けの軽さと動きのスムーズさ。運転席後部のワンタッチロックを外せばひとりで開閉できるレベルで、オマケに折り畳むと完全にボディとツライチになる。
開けたら開けたで風の巻き込みはそれなりだが、純正の折り畳み式風防を立てれば助手席との会話もOK。もちろん高速は無理だが。
この中古車に備わってた社外デタッチャブルトップも出来はいい。軽いとは言わないが、大人2人で取り外しがラクにできる。
リア2点を引っかけて、フロントを2点ロックすればカッチリ固定。緩みも少なく使用感は上々で、雪国で積雪が気になる人ならずとも欲しい逸品。
収納も意外と豊富で、リアはほぼエンジンに占領されているが、シート後ろ左右に大きなボックスが2個付くし、ボンネット下もスペアタイヤを外せばボストンバッグは入る。某軽オープンよりよほど便利だ。
累計8年で8万台弱も作り続け、安い中古車は100万円以下で買え、ただし今回の低走行1.5万キロ物は約200万円。ここ数年で徐々に値上がりしてるので欲しい人は善は急げだ。もう二度と世に出ない大衆オープンなのだから。
●小沢コージ氏の評価
・タイムスリップ度:★★★
・レア度:★★
・お金かかりそう度:★★★
・乗って楽しい度:★★★★★
十数年前まであったMR-S。懐かしくはないけど、もう二度と生まれない大衆ミドシップ。楽しさロードスター顔負けだし、今こそチャンス!
























コメント
コメントの使い方軽さとMRとオープンスカイ、運転の楽しさ全部入りの贅沢な車ですが
当時はなぜか、FRなら遅くてもいいがMRは速く走る事が至上命題、な雰囲気があり
海外ではポルシェに勝てるほどチューンしたのがあった中で、国内では無視してチューン許容が少ないと噂され売れませんでした。
弄ればエリーゼやA110に負けない運転体験を得られる車だったのに