もともとは雪道や悪路を走破するためのメカニズムだった4WD。しかし、いつしか速さや運動性能を追求するためにも採用されるようになり、現在では実用性よりもスポーツ性を重視した4WDの比率が高まってきた。今回はそんなスポーツ系4WDのなかから、大人の遊び心を満たしてくれる4WDスポーツを紹介しよう。
文:木内一行/写真:スバル、トヨタ、日産、ホンダ
【画像ギャラリー】遊び心を満たす「大人の4WDスポーツ」(12枚)画像ギャラリー「2ペダルで気楽に楽しめるスポーツセダン」 スバル・WRX S4
WRCでの活躍もあり、長らく高性能な4WDスポーツセダンとして世界で知られてきたインプレッサWRX。2014年にはそのキャラを継承しながらWRXへ改名されたが、2021年に登場した2代目ではSTIが消滅してS4のみのラインナップに変更。加えて、大きな変化もあった。
その最たる部分がエクステリアデザイン。
インプレッサ時代を含め、これまではスポーツセダンとしての力強さや勢いを全面に押し出していたが、2代目ではボディ下部やフェンダーアーチをブラックアウトしてクロスオーバーSUV風のルックスとなったのだ。
シャシーも一新され、WRXとして初めてスバルグローバルプラットフォーム(SGP)を採用。水平対向エンジンとシンメトリカルAWDという基本的なメカニズムは不変だが、先代よりも排気量が拡大された2.4リッターターボのFA24が搭載された。
そして、国内仕様のミッションはCVTのみ。先代もCVTのみだったが、それは「スポーツリニアトロニック」と呼ばれるもの。
しかし2代目では「スバルパフォーマンストランスミッション(SPT)」と名付けられ、新開発の変速制御とステップ変速を行う8速マニュアルモードを採用。リニアなレスポンスを実現し、ドライブモード次第ではDCTの変速スピードも上回るという。
もちろん、セダンとしての実用性や快適性も向上しており、一層ゆとりある室内空間を確保した。
2代目ではSTIが消滅したことで、落胆の声があったことも事実、しかし、CVTのS4だって十分に走りは楽しいし、なによりも肩肘張らず乗ることができるのは大きな魅力。まさに大人のための4WDスポーツセダンなのである。
「トヨタの本気度が伝わってくるホモロゲモデル」 トヨタ・GRヤリス
数ある国産4WDの中でも、ゴリゴリのスポーツモデルと言えるのがGRヤリス。元々はWRCのホモロゲモデルとして開発されただけあり、トヨタの持つノウハウが惜しみなく注ぎ込まれている。
ラインナップは4WDターボのRZ/RCと1.5リッター自然吸気FFのRSがあるが、ここでは主力となる4WDターボについて話を進めよう。
ボディは通常のヤリスには未設定の3ドアで、大きな開口部のバンパーや大きく張り出したフェンダーを採用。ボンネットやバックドア、ドアパネルなどをアルミ製、ルーフをCFRP製にすることで軽量化を図っている。
パワートレインもヤル気十分だ。
搭載される1.6リッター直3ターボのG16E-GTSは、高速燃焼コンセプトや軽量部品によるエンジンの高回転化、吸排気系の最適化などにより、3気筒エンジンとしては世界最高レベルのスペックを実現。ミッションは自動ブリッピング機能を備える6iMTとなる。
そして駆動系には、新開発スポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を採用。これは多板クラッチによる前後駆動力可変システムを用いたシステムで、前後のトルク配分を3段階で切り替えることが可能。さまざまなシーンで卓越したパフォーマンスを発揮することができるのだ。
また、マイナーチェンジでの進化も著しく、2024年の改良では内外装をリフレッシュするとともに新開発の8AT「GR-DAT」を新設定。エンジンは最高出力・最大トルクともに引き上げられ、GR-FOURの制御も変更。シャシーやサスペンションにも手が加えられた。
さらに、2025年のマイナーチェンジではGR-DATに改良を施し、サスペンションセッティングを最適化。5カ月ほど遅れて、冷却性能と空力性能をさらに向上させる「エアロパフォーマンスパッケージ」もオプションで設定された。
モータースポーツを念頭においたハードスペックながら「誰もが安心して楽しく運転できるクルマ」として誕生したGRヤリス。世代を問わずクルマ好きを満足させてくれる1台だ。














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