そのFR…実は“限りなく真ん中”だった!? 疑似ミドシップ車列伝!

そのFR…実は“限りなく真ん中”だった!? 疑似ミドシップ車列伝!

 優れたハンドリング性能から、クルマを操ることを重視する多くのドライバーに支持されるFR車。そのなかにはエンジンを中央に寄せることで擬似的なミドシップレイアウトとし、走りをより追求したモデルも存在する。

文:井澤利昭/写真:トヨタ、ホンダ、マツダ、三菱自動車、CarsWp.com

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駆動方式やレイアウトによって変わるクルマのキャラクター

そのFR…実は“限りなく真ん中”だった!? 疑似ミドシップ列伝!
伝統的にMRレイアウトを採用するフェラーリ。創業55年を記念し、2002年にその創業者の名を冠して登場したエンツォフェラーリも、6リッターのV12エンジンをミドシップに搭載している

 クルマの駆動方式は、エンジンが車体のどこに搭載されているかと、エンジンからの動力が伝わるタイヤ=駆動輪の位置によっていくつかの種類に分類することができる。

 現在、街中を走る一般的な乗用車では、車体の前側にエンジンを搭載してフロントタイヤを駆動する、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)や、前後4つのタイヤすべてを駆動する4WD(4ホイールドライブ)を採用するクルマが多い。

 特にFFは、エンジンやトランスミッションといった駆動系の主要部品を車体の前方に集めることで、室内空間を広くとれる点や、駆動輪がクルマを引っ張るようなかたちとなることで生まれる高い安定性、部品点数が少なく製造コストが抑えられるため、車体価格も安くできるといったメリットが多く、コンパクトカーから乗用車、軽自動車まで、幅広く採用されている。

 また4WDは、雪道や未舗装の道路でも安定して走行することができ、高出力エンジンでも安定した走りで運転がしやすいというメリットがある。

 いっぽう、走りの良さを売りとしているスポーツカーなどで積極的に採用されているのが、リアタイヤのみを駆動輪とするRWD(リアホイールドライブ)だ。

 RWDはエンジンを車体の前側に搭載するFR(フロントエンジン・リアドライブ)、エンジンを車体中央に置くMR(ミドシップエンジン・リアドライブ)、車体後部にエンジンを積むRR(リアエンジン・アドライブ)の3つに大別される。

 このうちMRは運動性能こそ優れているものの、そのピーキーなハンドリング特性や、エンジンを運転席の後ろに搭載する関係上キャビンやトランクなどの車内空間を広くとることができないというデメリットもあり、フェラーリやランボルギーニなどに代表されるいわゆるスーパーカーや、ホンダのNSXやS600、ビート、トヨタのMR2やMR-S、マツダのAZ-1といった実用性を度外視した一部車種のみに採用されるに留まっている。

 またRRも同様で、加速やブレーキ性能でのメリットこそあるものの、コーナリング時のコントロールが難しく、乗用車においてはその代名詞とも言えるポルシェ911シリーズなど、一部モデルでのみの採用となっている。

 かたやFRは、後輪駆動ならではのトラクションの高さ=加速性能の良さに加え、軽快でバランスのいいハンドリングが生み出す操作性の高さが魅力。

 室内空間にもある程度余裕があるため、国内外のスポーツモデルや大型セダンで採用されることが多く、古くから多くのクルマ好きに支持されている駆動方式と言えるだろう。

高い運動性能を見せる「フロントミドシップ」のFR車

そのFR…実は“限りなく真ん中”だった!? 疑似ミドシップ列伝!
国産ミドシップスポーツカーといえば、1990年に登場したホンダNSXだ。3.0リッターのV6エンジンを運転席後方に搭載し、開発にはF1ドライバーであるアイルトン・セナも携わった

 フロントタイヤが「曲がる」ことを、リアタイヤが「加速する」ことをそれぞれに分担するFRのクルマは、素直で扱いやすいハンドリングと、胸のすくような加速感を味わうことができるのがその大きな魅力だが、同じFRでもエンジンを搭載する位置によって、その特性はやや変わってくる。

 一般的なFR車では、エンジンがフロントタイヤの車軸より前側に飛び出すような位置に置かれていることが多い。これは、こうしたレイアウトを採用したほうがキャビンやトランクなどの車内スペースをより広くすることができるためだ。

 このようなFR車ではクルマ全体の重量配分がやや前よりとなるため、いわゆるフロントヘビーなハンドリングとなり、コーナリング時の限界点では弱アンダーステアの特性を示すことになる。

 こうしたハンドリングは一般道で非常に扱いやすく、ナチュラルな走行フィーリングを得ることができるのが魅力。

 FRならではのトラクションの良さは大排気量エンジンの大きなパワーを受け止めるのにも最適で、乗り心地にも優れるため、クラウンやスカイラインといった高級セダンでも積極的に採用されている。

 これに対して、前輪の車軸より後ろにエンジンを搭載するのが、いわゆる「フロントミドシップ」というレイアウトを採用するFR車だ。

 フロントミドシップレイアウトを採用する最大のメリットはクルマの運動性能を大きく左右する、前後重量配分を、その最適値とされる「50:50」へと近づけやすいという点。

 前後重量配分が50:50のクルマは、慣性モーメントに対するバランスに優れているため、「曲がる・止まる・走る」というクルマの運動性を決定する基本性能が、一般的なFR車よりもさらにレベルの高いものとなるからだ。

 特にコーナリング時の限界付近でのニュートラルなハンドリングは特筆もので、加速性能の高さやブレーキング時の安定性においても秀でているため、その多くが、走りを重視するスポーツモデルでの採用となっている。

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