時間帯別に料金を変動させるなど、渋滞への対策を図る東京湾アクアライン。しかし事故渋滞は防ぎようがない。アクアラインでは玉突き事故が多いが、この原因はなんなのか? トラックドライバー歴30年のベテラン・長野潤一氏が考察。
※本稿は2025年11月のものです
文:長野潤一/写真:ベストカー編集部、AdobeStock(トビラ写真=Kumi0@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2025年12月10日号
アクアラインで多発する玉突き事故
東京湾アクアラインで、2025年10月22日(水)と23日(木)の連続で玉突き事故が起き、激しい渋滞が発生した。
両事故とも、夕方の上り線・川崎方面、アクアトンネル内の追越車線というのが共通点。休日の夕方にも上り線で玉突き事故が多い。なぜ玉突き事故が多いのか?
東京湾アクアラインは、1997年開通当初は普通車4000円と超割高な道路だった。森田知事時代の「普通車800円」割引実施からは、観光客、通勤客、バス、トラックの利用が増え、今では首都交通網の一翼を担う。
休日の渋滞激化への対策として、2025年4月から時間帯ロードプライシングの料金変動幅をより強化した。なお、水底トンネルであるためタンクローリー等の危険物積載車両の通行は禁止されている。
玉突き事故の正体見たり

別の日に乗用車で走ってみると、目の前で急ブレーキの連鎖が起き、玉突き事故が起こる理由がわかった。
上り線の海底トンネル最深部に向かっている下り坂で特に追突事故が多い。
片側2車線であるが、急いでいる人、高性能なクルマに乗っている人ほど右車線(追越車線)を走る傾向がある。それで右車線が大人気でクルマが片寄りがち。クルマが数珠つなぎになり、全体的に流れの速度が落ちる。
ところが、人気のない左車線はクルマもまばらですいている所がある。そこで、流れの遅さに業を煮やしたせっかちなドライバーが、すいている左車線から追い越しを掛ける。右車線に並んでいる人たちは割り込まれまいと、車間距離詰め詰めで防衛する。
だが、せっかちドライバーの勝利で強引に割り込む。そこへ、最深部のサグ(=下り坂から上り坂に転ずる地点)で車列の速度が自然に落ちる。この悪条件が重なって、急ブレーキの連鎖が起きた。これがアクアトンネル内で追突事故が頻発するメカニズムだ。
防ぐ方法はあるのか?
ほかにもアクアラインの流れが悪いのには理由がある。トンネル出口の行先案内だ。
行先別の車線を案内する標識が、長い退屈なトンネルの間にはほとんど出ないのに、出口直前になって突然出るから、「えっ! どっち?」となる。
それからトンネル内部の殺風景さ。2022年にトルコ・ボスポラス海峡のアブラシャトンネル(小型車専用海底トンネル)を通ったが、トンネル内部が七色のイルミネーションで電飾されており、トンネル自体が異空間だった。こうした夢のあるエンターテイメントがあれば、事故も減るのではないだろうか。
さて、割り込みの問題なのだが、これはもう人間の性(さが)なので、割り込みをなくすことは近い将来には無理だろう。自動ブレーキも、数台前のクルマの動きまでは見ていないので、機械が「アッ!」と思った時にはもう遅い。
どんなに急いでも、事故を起すことが最も遅くなる。読者諸兄におかれては、世の中にはそういう道理もあると知ったうえで、割り込まれてもいいから車間距離を取ったほうが得だと思っていただききたい。
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