スカイラインGT-RやNSX、ロードスター、RX-7、レガシィ、セルシオ――。
一般的に「平成の名車」といえば、こうしたクルマたちが挙げられますが、「名車」の基準は人それぞれで、クルマに対する思い入れや、使い方などによって、その基準は変わってくるもの。
今回は、自動車メーカーで開発のエンジニアをしていた筆者が考える「平成の名車」をリストアップしてみました。
文:吉川賢一、写真:トヨタ、BMW、日産、アウディ、VW
トヨタ 初代セルシオ(平成元年~)
セルシオは、平成元年(1989年)に登場した、トヨタのフラッグシップセダンです。北米ではレクサスの「LS」として販売されていました。
当時の高級セダンといえば、BMW7シリーズやベンツSクラスが抜きん出た存在で、これらのクルマの引き締まった走りが、世界の高級車のスタンダードとして認識されていた時代でした。
そんな中に登場した初代セルシオは、圧倒的な静粛性と乗り心地の良さ、内装の上質感、4リッターV型8気筒のエンジンの滑らかさ、といった特徴で登場し、世界中のメーカーを驚かせました。
筆者は、初代セルシオに初めて乗った時、その世界観に衝撃を受けました。現代のLSと比べると、走行性能は低く、またボディの揺れも大きいのですが、揺れの動き方がかえって快適に感じられたのです。
操安乗り心地性能を学んでいたエンジニアとしては目からウロコ。乗り心地の良さとはボディの動きや、車体の振動を小さくすることだけではないことを教えてくれた一台でした。
■トヨタ 初代セルシオ 主要諸元
- 全長×全幅×全高:4995mm×1820mm×1400mm
- ホイールベース:2815mm
- 車両重量:1790kg
- 価格:455万円~
BMW 330i E46(平成10年~)
2台目は、平成10年(1998年)に登場した、BMW3シリーズの最上級グレード「330i」です。スポーツセダンの見本として、「ハンドリングのあるべき姿」を教えてくれた一台でした。
3.0リッター直6のNAエンジン、通称「ストレート6」を積み、5MTとの組み合わせで、滑らかな加速フィールを持ち合わせています。
筆者が特に印象に残っているのは、そのハンドリングです。フロントサスはストラット式、リアはマルチリンク式サス。
据え切り時は「ずしり」とくる、男らしい操舵力なのですが、走り始めると一瞬で、「すっ」と手になじむ操舵力&補舵力になります。
その印象が中低速から高速走行に至るまで常に続く、極上のステアリングフィールをもったクルマでした。
操舵初期の応答性に優れ、コーナリング後半の巻き込みもなく、切り始めから戻しまでのリニアリティがバツグンに高い。
「ステアリングを切れば切っただけ車両が動く」とは当たり前のことですが、遅れの小ささや無駄な挙動を一切起こさない330iの車両運動性能には驚かされました。
「ハンドリングが良い=キビキビよく動く」は大きな間違い、と身に刻むことになった一台です。
ちなみに、乗り心地はゴツゴツとハードで、後席の乗り心地などは褒められたものではありませんでした。
■BMW 330i E46 主要諸元
- 全長×全幅×全高:4470mm×1740mm×1415mm
- ホイールベース:2725mm
- 車両重量:1520kg
- 価格:約600万円~
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