EVの普及拡大と再生可能エネルギーの活用が進む中、電力を効率的かつ安定的に使う仕組みづくりが求められている。使用済みEVバッテリーを再活用した蓄電システムと新たな電力ネットワーク構想は、地域から未来のエネルギー社会を切り拓く挑戦だ。
※本稿は2025年12月のものです
取材・文:塚本壽/協力:CONNEXX SYSTEMS株式会社、京都府
初出:『ベストカー』2026年1月10日号
小型電池の開発で社会を変え多くの人を救った経験から、「バッテリーは社会を変える」と実感
EVトラックの使用済みバッテリーを再利用して、EV用充電器と一体型の蓄電池を開発し、2025年2月から京都府向日市役所で実証実験を開始したCONNEXX SYSTEMS株式会社(京都府相楽郡精華町)。
EV用バッテリーは、現在はリサイクルの「系」が確立しておらず、現段階では大半がコストをかけて産廃処理されており、リユースを推進する同社の取り組みは、自動車業界から注目を集めている。
インタビューでは環境や省エネなどの話が聞けると思っていたが、塚本社長の思いは我々の想像をはるかに超え、EVバッテリーを再利用して新たな電力インフラを整備する、未来のまちづくりだった。
ウォークマンや携帯電話の電池開発で活躍
1979年、京都大学工学部卒業後、日本電池株式会社(現・GSユアサ)に入社した塚本社長は、ニカド(ニッケル・カドミウム)電池の開発に従事し、世界で初めて角形のニカド電池の開発・製造を行った。
これはモトローラの携帯電話やソニーのウォークマンに採用され、カセットケースサイズのウォークマンの実現に貢献したという。
「三洋や松下に四角の電池の製造を断られたソニーの開発者が、帰りの新幹線の車窓から日本電池の看板を見つけ、京都駅で降りて飛び込みで来られ、守衛さんの内線電話を取ったのが、私だったんです」
塚本社長の活躍はこれにとどまらず、携帯電話用の薄型リチウムイオン電池の開発・製造も手がけ、松下と三菱の携帯電話に採用されて、世界で70%のシェアを占めたそうだ。
今では考えられないことだが、深夜2時に仕事を終え、帰宅して仮眠をとったらすぐに出社。そんな生活が続いたが、まったく苦はなく、やる気に満ち溢れていたとか。
「でもね、5年もすると面白くなくなった。前回より0.5ミリ薄くしてほしい、5%容量を増やしてほしいというような要望ばかりで、それは大変なチャレンジなんだけど、楽しくないんですよ。
そんな塚本社長に届いた一件の依頼が、研究者としての人生を大きく変えることになった。
米国で会社を設立。インプラント用電池を開発
アメリカの医療用デバイスメーカーから、当時最先端の体内埋め込み型神経刺激デバイス用バッテリーの開発・製造の打診があった。
塚本社長は開発できると上申したが、事業性の観点からGOサインが出なかった。
難治性の慢性疼痛には特効薬がなく、痛みのせいで自殺者も出ていた。デバイスが完成すれば年間数千人が痛みから解放されると知り、ぜひ作りたいと思ったという。
メーカーがすべての資金を出してくれるというので、日本電池を退職し渡米。米国ロサンゼルスでQuallion LLCを設立し、経営者兼研究者として活動した。
研究と開発に明け暮れ、神経刺激デバイス用電池のほか、医療・衛星・軍事などさまざまな特殊用途のリチウムイオン電池の開発に成功。国際電池・材料学会技術賞をはじめ様々な賞に輝き、多くの卓越した業績を残した。
アメリカで充実した日々を過ごしていたある日、自宅でテレビから東日本大震災の映像を見て帰国を決意。
それまで帰国時に企業の不景気や元気のなさを感じていたこともあり、自分にできることは何かを考え、帰国して雇用や産業を創出したいと思った。









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