「小さな高級車」というジャンルは輸入車には1970年代のイギリス車のバンデンプラプリンセスや1980年代のベンツ190Eといった代表的な成功例がある。
しかし日本車もこのジャンルに果敢に挑戦しているにも関わらず、残念ながら成功したモデルというのは浮かばない。
ここでは近年日本車にあった「小さな高級車」を振り返りながら、成功しなかった理由や今後を考察していく。
文:永田恵一、写真:トヨタ、マツダ、ホンダ、
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トヨタプログレ
1998年登場のプログレは当時のトヨタでは新しかった2代目アリストなどにも使われたFR車用プラットホームなどを使い、ボディサイズは5ナンバー枠に収めるというオーソドックスな「小さな高級車」として開発されたモデルだ。
プログレは「小さな高級車」を実現するべく塗装やインテリアの木目パネルに代表される各部のクオリティはセルシオ級とし、走りや快適性も「小さな高級車」を名乗るのに相応しい高次元なものを備えていた。
しかしプログレは万人向けとは言いにくいスタイルだったのに加え、300万円台前半からという価格も内容を考えればリーズナブルだったのだが、当時の日本人には同じ価格でより分かりやすいマークII三兄弟が買えたこともあったのか販売は振るわず。
2001年には3代目セルシオを思わせるスタイルを持つ兄弟車のブレビスも加わったものの、最後まで浮上することはなく、2007年に2台とも絶版となった。
トヨタiQ
iQはベンツの1ブランドとなるスマートのフォーツーのようなシティコミューター的な要素に加え、マイクロプレミアムカーというコンセプトも持つ全長は軽自動車より小さい超小型車として2008年に登場した。
iQは特殊な駆動系やステアリング系の採用に代表される機能部品の小型化を徹底的に行い、3m以下の全長ながら4人乗りを実現。安全性に関しても追突に対応すべくリヤウインドウカーテンシールドエアバッグを搭載するなど、技術的にはかなり進んだクルマだった。
価格も初期モデルで140万円から160万円と内容を考えれば決して高くなかったものの、「同じ価格で4人が普通に乗れるコンパクトカーや維持費の安い軽自動車がいくらでも買える」というのも大きく、iQも特に目立たたないまま2016年に姿を消した。
iQは160万円のレザーパッケージの存在は頭にあったとしても、「小さな高級車」というコンセプトはクルマに相当詳しいつもりの筆者でも当時の資料を見て思い出したくらいなだった。
それだけに「小さな高級車」という認識でiQを見ていた一般ユーザーに非常に少なかったと思われる。
このことを考えるとiQは1リッターの3気筒NAで登場したが、登場から1年後に加わった1.3リッター4気筒も最初から設定する、のちにiQベースでアストンマーチンに供給されたシグネットのように静粛性に代表されるより高級な機能を持った仕様でもあれば、iQに対する認識も変わったのかもしれない。
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