2026年3月。ホンダが四輪電動化戦略を見直し、ゼロシリーズなど3台のBEVの発売&開発中止を発表。それと前後するようにイランがホルムズ海峡を封鎖。原油の輸入が滞るとしたらEVが有利になるのでは……ホンダの決断は早急だった!?
※本稿は2026年4月のものです
文:池田直渡/写真:ホンダ、アキュラ ほか
初出:『ベストカー』2026年5月10日号
ホルムズ海峡封鎖はEVにとって有利に働くのか?
ホンダがゼロシリーズとアフィーラの計画中止に至ったニュースは各方面に衝撃をもたらした。もっとも、EVシフトの計画変更を余儀なくされ、莫大な投資の損金処理に至ったのは、何もホンダだけの話ではない。
というなかで、今度はイランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖が発生。これを受けて、国内のガソリンスタンドで、1日の間にリッターあたり30円近く値上がりしたなどのニュースが流れ、海峡封鎖が長期化すればガソリン価格が高値推移する可能性も出始めた。
そうして筆者のところに「だったらEV推進への追い風になるのでは」というテーマでの原稿依頼がきたのである。
結論から言えば「NO!」。話を単純化しすぎである。
EV追い風の前提条件として、紛争が長期間解決されず、その結果原油の調達が長期間阻害され、我が国はほかの調達先を確保できず、さらに備蓄を全部使い果たす前提ということになる。
もうひとつ、発電のための石炭やLNG(液化天然ガス)がほとんど値上がりせず、電気料金には影響を与えない。原油と電気の両方がそういう状態になって、初めて利用者がEVシフトに動くことになる。
紛争の長期化はなんとも言えない。軍事の話なので当事国の戦略次第。ただしこの状況が長期的に続けば、現状当事国ではない多くの国がイランの敵に回る可能性が高い。イランはそれを回避するために一部航行の安全を保証するなどの手を打つと思われる。
間違いなく電気も道連れになる
日本の発電エネルギー構成はLNG32%、石炭29%、再エネ23%、原子力9%、石油7%。つまりLNGと石炭が止まるとガソリンだけでなく発電もヤバい。
石炭に関してはわが国の輸入先はホルムズ海峡には関係ない。LNGはどうかと言えば、オーストラリア、マレーシア、ロシア、アメリカ、インドネシアの順で、こちらもホルムズ海峡と関係ない。
資源エネルギー庁によれば「ホルムズ依存度は6.3%」なので「セーフ!」……と言えない。
ホルムズ海峡奥のカタールが世界第2位のLNG産出国であり、現在カタールからの調達依存度が高い中国、韓国、EUなどが調達不足になれば、日本の輸入先にシフトすることは確実だからだ。
しかも中国、韓国、EUは世界的に見て金持ちの国、日本との競り合いについてこられる経済力がある。となるとLNG価格は上昇し、電気料金もまた上がる。値上がりは原油価格ほどではないかもしれないが、無風ではない。
さらに言えば、石油とLNGでは備蓄量の差がある。わが国の石油備蓄は国家・民間合計で250日以上と長期間確保されているが、LNGは2〜3週間程度の民間在庫しかない。ホルムズ海峡封鎖による価格変動への抵抗力はむしろLNGに依存している電力のほうが脆弱なのだ。
最初の命題どおり「ガソリン価格の値上がりが備蓄では対応できないくらい長期的に続く」と仮定を置くならば、まあ、まず間違いなく電気代も道連れということになるだろう。ことはエネルギー危機なので、どちらにとっても不利というだけの話である。
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