最近、愛車が元気ないぞ……。そんな気がするなら「へたり」に要注意。クルマってのはメカの集合体なので、当然使っているうちにどんどん各部が劣化していくもの。
いやいや部位によっては使わなくても置いておくだけで、経年劣化で傷んできます。
新車時から時間がたって、走行距離もかさんでくると、「あれ、なんか以前ほどシャッキリしていないなぁ……」と感じる瞬間があるけれど、これがいわゆる「ヘタリ」です。
特に1台のクルマに長く乗り続ける人が多くなった昨今、ヘタリ問題も切実な問題となっているはず。長く愛車と付き合うための「ヘタリ対処法」を考えていきます。
文:ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部、Shutterstock
ベストカー2015年1月10日号より再録
■サインは新車時より燃費悪化、これ改善できます!
※改善費用目安→40万〜60万円(オーバーホールの場合)
「最近なんか燃費が悪くなってきたなぁ……」
これこそがエンジンのヘタリの兆候と見ていい。ほとんどの場合、ピストンリングの摩耗による圧縮低下。
エンジン本体だと、ピストンリング以外がへたることはあまりない。というか、ピストン本体が変形したり、コンロッドやクランクシャフトに異常が出るようでは、それは「ヘタリ」ではなく完全なトラブルだ。
ピストンリングはシリンダー内壁の薄い油膜で潤滑が保たれているが、それでも直接金属同士が接しているわけだから、摩耗する。ピストンリング側が摩耗することでシリンダー内壁に重大な障害を与えないという意味合いもある。
1週間に1回程度しか愛車のエンジンを始動しないという人は特に注意が必要。シリンダー内壁にできた油膜が時間とともに落ちてしまい、久しぶりのエンジン始動時に油膜の切れた内壁とリングが時間こすれ合う事態となり、摩耗の速度が圧倒的に早まる。
マフラーから出る排ガスが、エンジンが温まっても白く、オイルの臭いがするようだとかなり摩耗が進んで燃焼室にエンジンオイルが混入している証拠。圧縮が落ちてエンジンパワーもダウンしているため、燃費も悪化してくるというわけだ。
オイル管理をしっかりしていて毎日のように乗っているのであれば、15万㎞を超えてもヘタリ知らずというエンジンもあるが、週イチドライブでオイル交換も年に一度などという場合だと10万㎞を待たずにヘタリを体感することもある。
完全に直すためにはオーバーホールしてピストンリングを交換するしかない。4気筒エンジンでも脱着工賃まで含めてざっと40万~50万円コース。
6気筒エンジンになると部品点数も多くなりさらに20万~30万円プラスとなる。よほど思い入れのあるエンジンでもない限り、現実的には、経年劣化と諦めて乗り続けることになろう。
予防策としては、オイルの管理をキチンとすること。これでヘタリは大幅に防止可能である。

■オートマチックもへたります
※改善費用目安→2万〜3万円(ATFの定期交換で予防も可能)
発進時にNレンジからDレンジへ入れた際のショック(「ガクンッ」という車体の揺れ)が大きくなってきたら、これはATのヘタリである。走行中の自動シフトアップのショックが大きくなるといった症状もある。
さらに症状が深刻になると、AT内部のクラッチが滑り、加速したいのにエンジン回転ばかりがブーンと上がり、車速が付いていかないということになる。これはもう「ヘタリ」の領域ではなくただちに修理工場へ行くべき。
ATのトルク伝達を担うATFと呼ばれるフルードが本体内に充填されているのだが、当然時間とともに劣化する。
すると変速ショックが大きくなるのだが、このATF、ガソリンスタンドや整備工場などに行くと交換を薦められることも多かったが、いっぽうで以前は「基本的に交換不要」とする自動車メーカーが多かった。
また、整備工場などでも10万㎞以上無交換状態が続くと、AT内部の油圧経路に溜まったスラッジ等が巻き上げられて、それがラインを詰まらせる危険を生むため、むしろ交換すべきではないという声もあり、交換を薦めないケースもある。
しかし最近では、例えばホンダは8万kmごとのATF交換を推奨するなど、ATF交換によるATヘタリの予防が主流派となりつつある。
ATF交換にかかる費用は2万~3万円。5万km走行をメドに交換するのがヘタリ予防には効果的というのが最近の考え方である。
また、コンパクトカーで多くなったCVTも専用オイルを5万kmサイクルで交換するのがヘタリを予防するにはいいだろう。
