長く乗る人必見、車の「へたり」処方箋 価格&対策&予防策集

■オートマチックもへたります

※改善費用目安→2万〜3万円(ATFの定期交換で予防も可能)

 発進時にNレンジからDレンジへ入れた際のショック(「ガクンッ」という車体の揺れ)が大きくなってきたら、これはATのヘタリである。走行中の自動シフトアップのショックが大きくなるといった症状もある。

 さらに症状が深刻になると、AT内部のクラッチが滑り、加速したいのにエンジン回転ばかりがブーンと上がり、車速が付いていかないということになる。これはもう「ヘタリ」の領域ではなくただちに修理工場へ行くべき。

 ATのトルク伝達を担うATFと呼ばれるフルードが本体内に充填されているのだが、当然時間とともに劣化する。

 すると変速ショックが大きくなるのだが、このATF、ガソリンスタンドや整備工場などに行くと交換を薦められることも多かったが、いっぽうで以前は「基本的に交換不要」とする自動車メーカーが多かった。

 また、整備工場などでも10万㎞以上無交換状態が続くと、AT内部の油圧経路に溜まったスラッジ等が巻き上げられて、それがラインを詰まらせる危険を生むため、むしろ交換すべきではないという声もあり、交換を薦めないケースもある。

 しかし最近では、例えばホンダは8万kmごとのATF交換を推奨するなど、ATF交換によるATヘタリの予防が主流派となりつつある。

 ATF交換にかかる費用は2万~3万円。5万km走行をメドに交換するのがヘタリ予防には効果的というのが最近の考え方である。

 また、コンパクトカーで多くなったCVTも専用オイルを5万kmサイクルで交換するのがヘタリを予防するにはいいだろう。

ATのギア変速やトルク伝達には専用のフルードが使用される。これが汚れると伝達効率が低下するなどの一因となる
ATのギア変速やトルク伝達には専用のフルードが使用される。これが汚れると伝達効率が低下するなどの一因となる

■乗り心地の悪化もサスペンションのへたりが原因

※改善費用目安→10万〜15万円

 ダンパー……、ショックアブソーバーともいうが、サスペンションの動きを抑え、挙動を安定させるキモとなるパーツ。

 一般的には筒の中にオイルが入っていて、ピストンの上下動を、細い穴の空いた経路(ピストンバルブ)をオイルが通過する際の抵抗で減衰させてやるというもの。

 このピストンバルブが劣化して減衰力が低下した状態が、いわゆる「ダンパーが抜けた」状態。

 一般的には純正ダンパーの場合、5万㎞程度でヌケの症状が目立ってくるケースが多い。

 しかし、毎日乗っているクルマだと徐々にヌケは進行しているのであんがい気がつきにくいもの。高速道路での車線変更時にスッと挙動が収まらなかったり、乗り心地が妙にフワフワと落ち着かないなどがヌケをドライバーが感じる症状だ。

 対処法はただひとつ。ダンパー交換あるのみ。純正ダンパーは構造上分解整備ができないので交換することになるが、工賃込みでおおよそ10万~15万円と見ておけばいいだろう。

 ダンパー交換時にサスペンションブッシュも交換すれば、ハンドリングや乗り心地はビシッとリフレッシュする。ちなみにスプリングは10万㎞程度でヘタることはない。

金属バネの動きを抑え込むのがダンパーの役目。5万㎞程度で減衰力低下の症状が出ることもあるダンパーは消耗品と割り切って交換するのがいい
金属バネの動きを抑え込むのがダンパーの役目。5万㎞程度で減衰力低下の症状が出ることもあるダンパーは消耗品と割り切って交換するのがいい

■5年乗ったらゴムホース類は全とっかえ

※改善費用目安→2万〜5万円

 エンジンのヘタリやサスペンションのヘタリと違い、走らせていてもわかりにくいのだが、自動車の各部に使用されているゴムパーツや樹脂パーツもヘタる。

 特にエンジンルーム内にあるラジエターホースは高温にさらされることから、劣化の進みも早く、5年、5万kmも使えばひび割れなどの症状が出てくる。

 ラジエターホースがひび割れると圧力が抜けて冷却水の沸点が100℃に近くなる。つまり、冷却能力を発揮することができずオーバーヒートの要因となる。さらに症状が進めば圧力に耐えられず破裂する。

 これはすなわち、冷却水が漏れてしまうということで、ただちにエンジンを止めなければ一瞬でオーバーヒートしてエンジンが焼き付く危険となる。

 突如ラジエターホースが破裂してエンジンルームから湯気がモワモワ湧き上がり、路肩でJAFの救援を待つはめになった編集部ウメキは、直前の点検時に馴染みの整備士からラジエターがヤバイと指摘されつつも、交換費用をケチった自分を大いに悔いたものだ。

 交換費用は1万円程度だったが、ホースが破裂したことでラジエターにも損傷が及び、結局10万円弱の出費となった。

 エンジンまわりにはこのほかにもパワステ関連のホースがあるし、ブレーキホースもゴム製。こうしたゴムパーツは定期的な点検と交換が必須である。

エンジンルーム内にはラジエターホースなどのゴムホースが多数ある。劣化が目立てば交換したいところだが、最近はエンジンカバーに覆われていて、よく見えないんですよね……
エンジンルーム内にはラジエターホースなどのゴムホースが多数ある。劣化が目立てば交換したいところだが、最近はエンジンカバーに覆われていて、よく見えないんですよね……

■ボディがヘタったらどうすればいいの??

※改善費用目安→やめたほうが……

 スチールやアルミ材でガッチリと組み上げられているボディ骨格。

 部材自体は金属なので5万~10万㎞程度走ったくらいで簡単にヘタることはないけれど、特にスポーツカーなどでサーキット走行など激しい走りをしたり、硬めのサスペンションに交換するなどをした場合、路面からの入力が大きくなり、例えばサスペンション取り付け部の溶接部分にクラックが入ったり、場合によってはモノコックのスポット溶接部が一部剥がれてくるといったことが生じる。

 また、ボディ補強のために後付けのブレースバーなどを装着した場合、補強によって強化された部分のしわ寄せが、例えばルーフ部のスポット溶接接合部に悪影響を及ぼすといったこともある。

 ボディのヘタリは塗装を剥がして溶接をするなど、大がかりな補修となり、費用も最低でも50万円以上かかるなど莫大。

 ハードなサスペンションを装着するような場合、ボディに詳しい専門ショップのアドバイスを受けることでボディのヘタリに事前の対策をしておくべきだ。


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