「多段階一時停止」とは?
常日頃から街中でクルマを走らせる機会があるドライバーにとって、「多段階一時停止」が必要とされる状況に遭うことは決して珍しくはないはずだ。
標識や停止線のある場所での一時停止は道路交通法で定められているので当然だが(標識や停止線がない場合には交差点の直前で停止)、実際の路上では一時停止線の位置からでは、対面する道路を行き交う車両や歩行者の動きを簡単には目視できないケースが出てくる。
このために一時停止を繰り返すことで、自車の存在を前方の道路を通る車両や歩行者に伝えるのが「多段階一時停止」の目的となるのだが、中身を整理してみると…
1/一時停止線での一時停止
2/自車の鼻先が道路の端の位置するまで進んで一時停止
3/対面する前方の道路を走行する車両(歩行者)が自車の存在を目視・確認できる位置に進んで一時停止
となっている。実際には最低でも3段階を経て停止することになる。周知の通り、道路交通法では停止線の手前で停止することが義務づけられているが、現実には自車側の道路が対面通行の場合、停止線は進入してくる車両のために交差点から数メートル手前に設置されている場合がほとんどだ。
そこで、前方の交差点に最徐行でゆっくりと近づいて対面道路に接するように停め、さらに自車の前端(鼻先)を道路に出して停めて「見せる停止」として安全を確認するという「3段階」の一時停止を実施する段取りとなるわけだ。
このように、出合頭の車両や歩行者との接触事故、衝突事故を防ぐための運転方法として、「多段階一時停止」に不自然さはそれほど感じられないが、後述するように実際の現場では慎重すぎるように思える場合もあるだろう。
「多段階一時停止」のステッカーが貼られていた日本郵便の見解
今回は都内の郵便局の配送車両の後部に貼られていたステッカーをきっかけに「多段階一時停止」を採り上げることになったわけだが、まずは本件について、本企画担当編集者が東京都内で見かけた車両が所属している、東京都内の大崎郵便局に問い合わせてみた。
すると、「日々安全運転の遵守を確認するために、郵便局から配送車両が出発する際などを含め、日常業務の中で多段階一時停止を全国の郵便局で実施しています」との答えが返ってきた。
ステッカーを貼っているのは「各郵便局によってスローガンとして強調している場合もあります」とされ、後続車両に「多段階一時停止」を実施することを意識してもらうための策といえる。
さらに「出合い頭の事故を避けるための“防衛運転”としての意味があるのです」とのことだった。
それでも、急いでいる時には多少の煩わしさを感じると思うのでは? と意地悪に質問を投げかけてみたが「わずか数秒の行為ですから習慣化できます」とのことだった。
厳しい安全管理を実施する佐川急便
では、ドライバーが業務の中で常に安全運転が要求され、一般からの目も厳しい運送業界の企業であり、「多段階一時停止」の実施を社内規定として義務づけている佐川急便に取材すると、同社の世田谷営業所、安全推進課から取り組みについて回答を得られた。
佐川急便では「社内ルールに基づき、全国的に安全運転指導を展開しています」とのこと。
「最近ではドライブレコーダーやインカーカメラを設置して“不安全行動”をチェックしています」とされ、ドライバー教育の一環として添乗指導による教育を実施している。
同社では配送ドライバー(スタッフ)に安全運転を求めるなかで、出合い頭の事故をいかに防ぐかは重要な課題であり、そのための方策のひとつが「多段階一時停止」ということになる。
運送を生業とする企業としては郵便局とともに当然の安全管理の施策であり、安全運転意識を徹底することに対する厳しさは想像どおりだった。
それでも事故が避けようもなく起こってしまうという現実を認識していることも確かで、だからこそ多忙な業務をこなすなかで「多段階一時停止」を義務とすることは当然といえる。
コメント
コメントの使い方単純に停止線では安全を確認しきれないから多段階停止するだけです。
バイクの飛び出しや後ろからの追突を懸案事項として挙げておられますが、それらを気にして多段階停止しなかったことで、出会いがしらの事故を起こしても後続車両は何も責任を取ってくれません。
ベストカー編集部は取材方法以前に記事の出来を謝罪するべきです。