JAFが推奨する「多段階一時停止」
JAF(日本自動車連盟)では現在、50歳以上のドライバーを対象に、安全運転に欠かせない運転の基本操作を再確認する実技型講習会「シニアドライバーズスクール」を全国で開催している。その講習会で教えている多段階一時停止の内容は以下の通り。
1/一時停止線直前での一時停止
2/対面する前方の道路を走行する車両(歩行者)が自車の存在を目視・確認できる位置に進んで一時停止
3/歩行者・交差車両が直接目視確認できる位置で停止
JAFの東京支部に「多段階一時停止」について訊いてみた。
実際の参加者の所有車による実技を含めた講習では、日常点検の方法、正しい乗車姿勢、車両の死角など運転の基本となる知識を確認するほか、実際の道路で撮影されたビデオを見ながら車両/人/自転車の動きを客観的に観察することで、自身の運転を振り返ってもらう時間を設けているとしている。
前方の道路の混み具合にもよるが、運転している車両によって前端の位置は変わるから、「多段階一時停止」において、前端部分をどれだけ前方に“覗かせるか”は、想像以上に微妙な感覚が要求される。
このためJAFの実習では「講習会では実際に自分の運転操作の映像を見せて、停車位置の車両感覚を確認してもらっています」とのことだ。
見逃せない危険な要素
それでは、現実として「多段階一時停止」は本当に安全運転な行為なのか。対面する道路幅などにもよるが、接触事故を誘発する危惧はないだろうか。
最近では車線の左端をすっ飛ばしてくる二輪車を多く見かけるし、車両前端に引っかけてしまうことも充分考えられる。
なにより「多段階一時停止」は見通しの悪い状況において必要なのだから、先に触れたように、鼻先を出す操作にはある程度経験に基づいた注意と微妙な感覚が必要とされ、字面ほど簡単な行為ではないはずだ。
これも意外に見逃せないのだが、前方車両のドライバーが「多段階一時停止」を行おうとしていることに後続車両のドライバーが気づかず、後続車両のドライバーがそのまま進行すると“思い込んでいれば”、追突してしまう可能性も出てくる(漫然運転と前方不注意として罰せられるのは致し方ないが)。
たとえ気づいたとしても、前方車両がいらついた後方車両のドライバーからクラクションを鳴らされることも皆無ではないようだから、安全運転のための負の連鎖が起こってしまうのは避けたいように思える。
それでも「多段階一時停止」はドライバーが走り慣れていない道路でどちらが優先道路かはっきりしない場合などでは安全確保には有効といえるのだから、行為そのものを否定すべきではないだろう。
なによりも心の余裕を!
正直に言うと「多段階一時停止」をすべての交差点で励行するべきとは言い切れない。先に触れたように、後続車両から追突されるなど、かえって危険を生み出さないのかという危惧もある。
だからこそ、見通しの悪い交差点などで「多段階一時停止」する車両があることを周囲の車両のドライバーが安全運転の一環として頭に置いておけるように、運送車両などがステッカーを確認しやすい位置に貼っておくことには意味がある。
最近はあおり運転など安全運転についての日本人のマナーレベルが下がってきているように思えるし、コロナ禍による自粛によって誰もがストレスに苛まれているこの時期、安全のための「数秒」を待てる心の余裕を、常日頃からもてるようにしたいものだ。
コメント
コメントの使い方単純に停止線では安全を確認しきれないから多段階停止するだけです。
バイクの飛び出しや後ろからの追突を懸案事項として挙げておられますが、それらを気にして多段階停止しなかったことで、出会いがしらの事故を起こしても後続車両は何も責任を取ってくれません。
ベストカー編集部は取材方法以前に記事の出来を謝罪するべきです。