一目でマツダ車と分かるデザインでラインナップを拡大し続けるマツダだが、なんと北米法人のトップが「ブランドのアイデンティティに問題がある」と発言したそうだ。その真意はどこにあるのか? 同士が指摘した問題点を考えてみたい。
文:古賀貴司(自動車王国) 写真:マツダ
【画像ギャラリー】ディーゼル廃止でも絶好調です!! 人気不動すぎる新型CX-5の衝撃内装がコレ(7枚)画像ギャラリー幅広い車種展開によりマツダらしさが薄く!?
マツダ北米法人(Mazda North American Operations)のCEO、トム・ドネリー氏が重大な問題提起をした。
テキサス州で開催されたマツダの年次ディーラーミーティングでAutomotive Newsが取材したところ、ドネリー氏は同社が直面する最大の長期的課題はブランドのアイデンティティだとこぼした。
街の人にマツダが何を表すブランドか聞けば「10通りの答えが返ってくる」と述べ、この曖昧さこそが自分を“夜も眠れない”悩みだと語った。
世界に名だたる自動車ブランドの現役トップが、これほど赤裸々に自社の弱点を公言するのは異例のことかもしれない。
ドネリー氏が振り返るに、かつてマツダは熱心なファン以外には「マツダ3(アクセラ)のブランド」として知られていた。その後、CX-5が看板モデルとなった。
そして今や、CX-50、CX-70、CX-90といった多様な車種が一定の販売台数を稼ぎ出している。
価格帯においても車体サイズにおいても多様化が進め幅広いユーザーにアプローチするも、ブランドの輪郭を逆に曖昧にしてしまった。
ラインナップを充実させることで販売を伸ばしてきた戦略が、ブランドの“顔”を薄めてしまう、という皮肉な結果を招いていると分析しているのだ。
大事なのはいかにリピーターを増やせるか
マツダはボディ・オン・フレームの大型SUVやピックアップトラックには参入せず、ライバルよりもちょっと高めな価格帯で商品を展開している。
しかしラグジュアリーブランドとも見なされておらず、結果として中途半端なポジションに収まっている。
トヨタやホンダなどに対抗する“プレミアムな代替”なのか、走りに特化したドライバーズブランドなのか、あるいは“信頼性を兼ね備えた日本版アルファ・ロメオ”なのか、2026年現在その答えは明らかではない。
ブランドの意志が定まらないまま、販売の現場は戦い続けてきたと言ってよい。
ドネリー氏は、顧客との感情的なつながりを深め、リピート購入を促すことで、現在の米国年間販売約40万台を50万台へと引き上げることを目標に掲げている。
直近2025年の米国年間販売は41万346台(前年比3.3%減)。
ドネリー氏は「より多くのオーナーが次の購入でも迷わずマツダを選ぶような"粘着力(スティッキーネス)”ある顧客基盤をつくることが、真の成長だ」とも語った。
つまり、一度売ったら終わりではなく、ブランドへの愛着でファンを繋ぎ止めることが、今のマツダに欠けていると認識している。
マツダは今後どんなメッセージを発信していくのか
もちろん、何も手を打っていないわけではない。
現在、北米マツダはディーラー店舗の改装・刷新を進めており、小売体験をブランドイメージ強化の重要な柱と位置づけている。
クルマそのものの品質や走行性能は一定の評価を得ている。
問題は「買う前」と「買った後」、つまりブランドと顧客の間に育まれるべき感情的な文脈が薄いことだ。
その点、ショールームに足を踏み入れた瞬間から"マツダらしさ”を体感させる空間づくりは、ブランドアイデンティティ確立に向けた地道かつ本質的なアプローチと言えよう。
ただ、北米法人のCEOがこれほど公の場でブランドの曖昧さを認め、危機感を訴えるのは、現場の努力だけでは解決できない問題があるからではないだろうか。
ブランドのアイデンティティとは、結局のところ、本社が何を作り、何を伝え、何を大切にするかという根幹の哲学から生まれる。
日本のマツダ関係者はインタビューにおいてたびたび「高いデザイン性」、「走行性能を強みに」、「なくてはならないブランド」というフレーズを用いている。
言葉と現実の間にある溝を埋めるのは、広島の本社が戦略の核心を明確に定め、世界に向けて一貫したメッセージを発信し続けることに尽きる。
ドネリー氏の「夜も眠れない」という発言は、北米市場からの悲鳴であり、日本のマツダ本社への痛切なSOSであるような気がしてならない。
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