ヴェロッサ
トヨタは1990年代の半ばに新しい価値観を持つラグジュアリーセダンの開発に着手し、コンパクトでも高級感のあるセダンが21世紀の主流になると考えた。ベースとしたのはFR方式のマークIIだ。
そのメカニズムを用いてプログレとブレビスを送り出している。スポーティさを好む人たちにはアルテッツァを用意した。が、もう少し上質な大人のスポーツセダンを望む人もいる。
そういったこだわり派に向けて送り出したのがヴェロッサだ。トヨタはチェイサーの後継と位置付けている。
「人の情感に訴える」ことをテーマにしているからデザインにもこだわった。フロントマスクにはランチアなどイタリア車の香りが漂う。インテリアもスポーティな味付けだ。
エンジンはマークIIと同じ2Lと2.5Lの直列6気筒DOHCエンジンを搭載し、リーダーは2.5Lのターボである。
限定仕様のスペチアーレVR25は、ヤマハチューンの心臓だ。ターボはパワフルだったし、ダイレクト感のあるハンドリングも魅力だった。
意気込みはすごかったが、販売は低迷している。多くの月は3桁台の販売にとどまった。購入したのはアクの強いデザインに惚れ込んだ人だけで走りにこだわる人は少数だ。だから普通の感覚の人はマークIIやブレビスを選んだ。
ちょっとしたボダンの掛け違いが、明暗を分けたのである。販売終了後はドリフトマシンとして珍重されたのだが‥‥。
WiLLサイファ
「WiLL」はトヨタを筆頭に、花王やアサヒビール、現・パナソニックの松下電器産業、近畿日本ツーリストなどが参加して行われた異業種による合同プロジェクトである。
ターゲットとするのは、新しい感覚の商品に興味を持っているニュージェネレーション層だ。トヨタはWiLLシリーズに「Vi」と「VS」を送り込み、2002年10月には第3弾の「サイファ」を投入した。
ベースとなっているのは初代ヴィッツのプラットフォームで、デザインコンセプトは「ディスプレイ一体型ヘルメット」である。
エンジンはFF車が1.3ℓの直列4気筒ハイメカツインカム、4WDは1.5ℓのハイメカツインカムだ。トランスミッションは4速ATを組み合わせた。個性的な内外装のデザインとともに注目を集めたのは、トヨタ初となる車載情報通信サービスのG-BOOK対応モデルとしたことである。
カーナビを標準装備し、今につながるカーコネクティッドを先取りした。また、カーリースプランも用意している。これも驚きだ。利用するユーザーは多かったが、採算割れは誤算だった。
狙いはよかったが、価格はヴィッツよりかなり高かったから販売は低空飛行を続けている。
2代目のヴィッツが登場し、WiLLプロジェクトにも陰りが見えてきた。そこでWiLLサイファは2005年春に販売を打ち切っている。近未来のシステムを先取りしたことは評価したいが、ちょっと先走りしすぎたようだ。
iQ
東京モーターショーを見れば分かるように最近はマイクロサイズのスモールカーが注目を集めている。2008年11月、大メーカーのトヨタは大胆にもこのジャンルに新型車を投入した。それがiQだ。
キャッチフレーズは「超小型ボディに卓越した性能を凝縮し、高い質感を備えたマイクロプレミアムカー」である。全長は3mを切るコンパクトさだが、全幅は1680mmと広く、背も1500mmと高くして快適な居住空間を実現した。なんと、このサイズで4人の乗車が可能だ。当然、取り回し性も優れている。
エンジンは1Lの直列3気筒DOHCでスタートし、10カ月後に1.3Lの直列4気筒を追加設定した。1Lエンジンでも街中を中心とした走りでは満足度が高い。1.3Lモデルは一段と軽快な走りを見せ、振動も上手に抑えられている。
発売前にジャーナリストなどに乗せてみると、好評を勝ち取った。が、フタを開けてみると販売は低調で、頼みの綱だったヨーロッパでも不人気車の烙印を押されている。
日本には優れたパッケージングで、燃費のよい軽自動車があるから、価格が高く、維持費も高くなるiQには見向きもしなかったのだ。
ヨーロッパでも設計コンセプトは高く評価されたが、多くの人は手を出さなかった。ちょっと登場が早すぎたか!?
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