こんなクルマあったなぁ…トヨタがときどき出す「変なクルマ」列伝

 新型コロナウイルスが猛威をふるい、自動車業界も翻弄されている。が、トヨタは土俵際で踏ん張り、底力を見せた。

 トヨタの強みは、全国を網羅する充実した販売店ネットワークと豊富な開発資源だ。加えて、昭和の時代からマーケティング重視の戦略をとり、ユーザーの欲しがるクルマを開発しているからヒット作を連発するのである。が、守りだけの自動車メーカーではない。

 新しい価値観を持つクルマを意欲的に開発し、送り出している。ハイブリッド車のプリウスやクロスオーバーSUVのRAV4は、その代表だ。

2019年日本市場にカムバックしたRAV4

 斬新なアイデアを注入したクルマや大胆なデザインのクルマを果敢にも量産に移すことも少なくない。将来のクルマ社会を見据えての新しい提案やチャレンジなのだろう。

 他のメーカーの首脳陣なら尻込みするデザインや奇想天外と思える企画を通し、商品化してしまう。これがトヨタのすごいところだ。

 当然、出したクルマすべてが成功するわけではない。強力な販売力を誇るトヨタを持ってしても、売れなかったクルマもあった。

 時代が早すぎて狙いが買い手に伝わらなかったり、頑張りすぎて失敗作のレッテルを貼られたクルマもある。その「変なクルマ」を追ってみよう。

文:片岡英明、写真:トヨタ

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オーパ

オーパ(2000年~2005年)

 トヨタは1999年秋の第33回東京モーターショーに、積極的に市販予定のプロトタイプを出展した。それがオーパであり、bBオープンデッキだ。

 オーパはクロスオーバーカーの先駆けとなった意欲作である。上質なセダンにワゴンやミニバンの便利な機能を融合させた。ベースとなっているのは、V50系のビスタアルデオだ。

 だからホイールベースは2700㎜の足長だが、全長はカローラスパシオやカローラ並みにコンパクトにしている。

 最大の特徴は、高効率パッケージングによる広くて快適なキャビンだ。とくに後席は広く、多彩な機能を売りにした。設計コンセプトは「高級サルーンの走りを備えた次世代のミディアムセダン」である。

 だが、キャビンと荷室は広いものの、平凡な2ボックスに見えた。また、センターメーターは高級を感じさせなかったし、後席にセンターアームレストがないなど、演出も足りなかった。

 2Lの直噴エンジン(D-4)を含め、エンジンは気持ちよく回り、トヨタ初のスーパーCVTの洗練度も高い。足もよかったからジャーナリストからは高く評価された。だが、ちょっとした気遣いが足りなかったために販売は伸び悩み、2005年に消えていく。

ヴェロッサ

 トヨタは1990年代の半ばに新しい価値観を持つラグジュアリーセダンの開発に着手し、コンパクトでも高級感のあるセダンが21世紀の主流になると考えた。ベースとしたのはFR方式のマークIIだ。

ヴェロッサ(2001年~2004年)

 そのメカニズムを用いてプログレとブレビスを送り出している。スポーティさを好む人たちにはアルテッツァを用意した。が、もう少し上質な大人のスポーツセダンを望む人もいる。

 そういったこだわり派に向けて送り出したのがヴェロッサだ。トヨタはチェイサーの後継と位置付けている。

 「人の情感に訴える」ことをテーマにしているからデザインにもこだわった。フロントマスクにはランチアなどイタリア車の香りが漂う。インテリアもスポーティな味付けだ。

 エンジンはマークIIと同じ2Lと2.5Lの直列6気筒DOHCエンジンを搭載し、リーダーは2.5Lのターボである。

 限定仕様のスペチアーレVR25は、ヤマハチューンの心臓だ。ターボはパワフルだったし、ダイレクト感のあるハンドリングも魅力だった。

 意気込みはすごかったが、販売は低迷している。多くの月は3桁台の販売にとどまった。購入したのはアクの強いデザインに惚れ込んだ人だけで走りにこだわる人は少数だ。だから普通の感覚の人はマークIIやブレビスを選んだ。

9代目マークII(2000年~2004年)

 ちょっとしたボダンの掛け違いが、明暗を分けたのである。販売終了後はドリフトマシンとして珍重されたのだが‥‥。

WiLLサイファ

 「WiLL」はトヨタを筆頭に、花王やアサヒビール、現・パナソニックの松下電器産業、近畿日本ツーリストなどが参加して行われた異業種による合同プロジェクトである。

 ターゲットとするのは、新しい感覚の商品に興味を持っているニュージェネレーション層だ。トヨタはWiLLシリーズに「Vi」と「VS」を送り込み、2002年10月には第3弾の「サイファ」を投入した。

WiLLサイファ(2002年~2005年)

 ベースとなっているのは初代ヴィッツのプラットフォームで、デザインコンセプトは「ディスプレイ一体型ヘルメット」である。

 エンジンはFF車が1.3ℓの直列4気筒ハイメカツインカム、4WDは1.5ℓのハイメカツインカムだ。トランスミッションは4速ATを組み合わせた。個性的な内外装のデザインとともに注目を集めたのは、トヨタ初となる車載情報通信サービスのG-BOOK対応モデルとしたことである。

 カーナビを標準装備し、今につながるカーコネクティッドを先取りした。また、カーリースプランも用意している。これも驚きだ。利用するユーザーは多かったが、採算割れは誤算だった。

 狙いはよかったが、価格はヴィッツよりかなり高かったから販売は低空飛行を続けている。

2代目ヴィッツ(2005年~2010年)

 2代目のヴィッツが登場し、WiLLプロジェクトにも陰りが見えてきた。そこでWiLLサイファは2005年春に販売を打ち切っている。近未来のシステムを先取りしたことは評価したいが、ちょっと先走りしすぎたようだ。

iQ

iQ(2008年~2016年)

 東京モーターショーを見れば分かるように最近はマイクロサイズのスモールカーが注目を集めている。2008年11月、大メーカーのトヨタは大胆にもこのジャンルに新型車を投入した。それがiQだ。

 キャッチフレーズは「超小型ボディに卓越した性能を凝縮し、高い質感を備えたマイクロプレミアムカー」である。全長は3mを切るコンパクトさだが、全幅は1680mmと広く、背も1500mmと高くして快適な居住空間を実現した。なんと、このサイズで4人の乗車が可能だ。当然、取り回し性も優れている。

iQは見た目コンパクトながら4人乗車することが出来る

 エンジンは1Lの直列3気筒DOHCでスタートし、10カ月後に1.3Lの直列4気筒を追加設定した。1Lエンジンでも街中を中心とした走りでは満足度が高い。1.3Lモデルは一段と軽快な走りを見せ、振動も上手に抑えられている。

 発売前にジャーナリストなどに乗せてみると、好評を勝ち取った。が、フタを開けてみると販売は低調で、頼みの綱だったヨーロッパでも不人気車の烙印を押されている。

 日本には優れたパッケージングで、燃費のよい軽自動車があるから、価格が高く、維持費も高くなるiQには見向きもしなかったのだ。

 ヨーロッパでも設計コンセプトは高く評価されたが、多くの人は手を出さなかった。ちょっと登場が早すぎたか!? 

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