新型コロナウイルスが猛威をふるい、自動車業界も翻弄されている。が、トヨタは土俵際で踏ん張り、底力を見せた。
トヨタの強みは、全国を網羅する充実した販売店ネットワークと豊富な開発資源だ。加えて、昭和の時代からマーケティング重視の戦略をとり、ユーザーの欲しがるクルマを開発しているからヒット作を連発するのである。が、守りだけの自動車メーカーではない。
新しい価値観を持つクルマを意欲的に開発し、送り出している。ハイブリッド車のプリウスやクロスオーバーSUVのRAV4は、その代表だ。
斬新なアイデアを注入したクルマや大胆なデザインのクルマを果敢にも量産に移すことも少なくない。将来のクルマ社会を見据えての新しい提案やチャレンジなのだろう。
他のメーカーの首脳陣なら尻込みするデザインや奇想天外と思える企画を通し、商品化してしまう。これがトヨタのすごいところだ。
当然、出したクルマすべてが成功するわけではない。強力な販売力を誇るトヨタを持ってしても、売れなかったクルマもあった。
時代が早すぎて狙いが買い手に伝わらなかったり、頑張りすぎて失敗作のレッテルを貼られたクルマもある。その「変なクルマ」を追ってみよう。
文:片岡英明、写真:トヨタ
オーパ
トヨタは1999年秋の第33回東京モーターショーに、積極的に市販予定のプロトタイプを出展した。それがオーパであり、bBオープンデッキだ。
オーパはクロスオーバーカーの先駆けとなった意欲作である。上質なセダンにワゴンやミニバンの便利な機能を融合させた。ベースとなっているのは、V50系のビスタアルデオだ。
だからホイールベースは2700㎜の足長だが、全長はカローラスパシオやカローラ並みにコンパクトにしている。
最大の特徴は、高効率パッケージングによる広くて快適なキャビンだ。とくに後席は広く、多彩な機能を売りにした。設計コンセプトは「高級サルーンの走りを備えた次世代のミディアムセダン」である。
だが、キャビンと荷室は広いものの、平凡な2ボックスに見えた。また、センターメーターは高級を感じさせなかったし、後席にセンターアームレストがないなど、演出も足りなかった。
2Lの直噴エンジン(D-4)を含め、エンジンは気持ちよく回り、トヨタ初のスーパーCVTの洗練度も高い。足もよかったからジャーナリストからは高く評価された。だが、ちょっとした気遣いが足りなかったために販売は伸び悩み、2005年に消えていく。
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