ベストカーの国沢光宏氏の連載『クルマの達人になる』。連載回数480回を数える人気の連載だ。
今回は気になる自動ブレーキのカメラ性能について迫ります。イスラエルの企業が開発したカメラが最近かなりの高性能の評価を得ているようです。
文:国沢光宏/写真:日産
ベストカー2017年7月10日号『クルマの達人になる』より再録
■自動ブレーキ評価の高い2台に共通するモノとは?
2017年5月29日に、自動車性能試験機関「JNCAP」が日産セレナの試験結果を発表したけど、今までの日産車とケタ違いのすばらしい性能だった!
同じくJNCAPで突如ナンバーワンの自動ブレーキ性能評価となり業界に激しいインパクトを与えたマツダアクセラと比べ、負けないばかりか勝っているほど。
この2モデルに共通するのが、イスラエルの企業『モービルアイ社』(インテル傘下)の新世代カメラを使っていることである。
下のYoutubeの動画をご覧いただきたい。歩行者に対する自動ブレーキ試験動画で、セレナです。
45km/hで走行中、車両の横から出てきた歩行者を短い時間で検知し、自動でブレーキをかけ安全に停止した。アクセラもまったく同じ速度で停止。
この2車種に匹敵する速度で停止できたモデルは日本車だとなし。世界規模で見てもボルボの新世代モデルくらいだろう。
なぜかといえば新世代のボルボもモービルアイを使っているからだ。このカメラを採用した車種は世界規模で高い評価を得ているけど、最も優れた性能を引き出しているのがボルボ。
XC90から採用を始め、V90、S90、そして最新のXC60にも採用。
夜間の歩行者まで検知できるというからすばらしい。次いで高い性能なのはマツダで、アクセラとCX-5などにモービルアイの新世代カメラを使う。
興味深いことにボルボもマツダもレーダーと組み合わせて使っているが、今回加わったセレナの場合、カメラだけなのだった。
ちなみに技術といえばドイツ車というイメージを持つだろうけど、ベンツなどモービルアイを使っていない。
おそらく夜間の歩行者は視認できないらしく、公的試験では歩行者のダミーに激突。加えて画像処理能力や、視野角に課題を抱えているのだろう。
クルマの陰から出てくる歩行者に対する停止可能速度で大きく引き離され、歩行者に対する自動ブレーキ性能評価でモービルアイのカメラを使うモデルに大差を付けられた。
日本勢では日立製高性能ステレオカメラを使うスバルのアイサイト3が頑張る。
画角という点でモービルアイの新世代カメラに届いておらず、車両の陰から出てくる歩行者に対する停止速度で若干届いていないものの、ロバスト性(外的要因に対する強さ)、総合的な性能で互角。
誰にでも起きうるうっかりミスや急な疾病などによる自動車事故を起こしたくないという人は、新世代モービルアイ社のカメラ付きか、アイサイト3付きを選ぶことを推奨しておく。
達人の皆さんに認識していただきたいのは「ここにきて自動ブレーキの性能差が一段と大きくなってきたのにユーザーへの情報が極めて少ない」ということ。
マイチェンしたVWゴルフは自動ブレーキ性能を向上させたとリリースしているものの、停止上限速度は30km/hで変わらず。
もっと言えば実力もJNCAPで試すまでわからない。今まで性善説で評価していたVWながら詳しく突っ込むと証拠が出てこないのだった。メディアも腰が引けてる。
こちらはアクセラの被害軽減ブレーキ。日産セレナと同じモービルアイ社のカメラを採用しているが、セレナはカメラ単独で使っているのが新しい
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